spoken!

2012年12月17日(月)

「プロ」とは

「2年ぐらいは余分に自分の思っていた年数より現役を長く出来たかなと。
2年前から自分の思うプレーとちょっとずつ差が出てきていると感じていました」
意外だった。番組出演の際に現役を退いた英智コーチが第一声で語った言葉である。
さらに引退セレモニーで魅せたあの大遠投についても、本人の胸のうちは周りが思うものとはまるで違っていた。
「最後に皆さんに喜んでもらえるとしたらと自分なりに思って遠投をと考えただけで、良くあそこまで投げたなあって言って頂けるんですけど、
僕からしたらもうこのくらいしか投げられないという感覚だったので」
この言葉を聞いて、首をかしげたくなるくらい不思議な気分に筆者はなった。
だがそれと同時に、これが「スペシャリスト独特の感覚」というものなのかなとも思った。
英智という選手に一番相応しい言葉があるとすれば、それは「スペシャリスト」以外には見当たらない。
彼がゲームの中で起用される場面はいつも、大事な局面ばかりだった。
1点を阻止したいここぞの守備、得点圏に進めば何かが起きると思わせるここぞの走塁。
ベンチで空気感を味わい、出番に備えて準備、想定をする。
経験を重ねていくうち、日々研ぎ澄まされていくスペシャリストの感覚…
そんな男だからこそ、自分が持てるパフォーマンスが出せているのかどうか、
ここ数年は葛藤の日々が続いたのだと思う。
英智が歩んだ14年間のプロ野球人生。まさに「プロ」としての真髄を、
記者として微力ながら知ることができて本当に良かった。英さんに感謝。

2012年12月03日(月)

「秋の沖縄」

先月、7年ぶりに行われたドラゴンズの沖縄秋季キャンプ。
われわれ取材陣にとっても7年ぶりとなる秋の沖縄。
開幕を控えた春のキャンプとは雰囲気も違う。
気温は連日24度近くとなり、選手たちは大粒の汗を流しながら
懸命に練習に取り組んでいた。

今回、沖縄には選ばれた10人の若手選手が参加していたのだが
その中で特に目を引いたのが堂上剛裕選手だった。

剛裕選手はプロ9年目の今年、試合数、ヒット数、ホームラン数と
自己記録を更新。つまり過去最高のシーズンを過ごしたはず。
キャンプの練習でも明らかに他の選手とは質の違う打球を飛ばしていた。
正直、沖縄で若手に交じって練習しなければならない選手ではないと思った。
しかし本人は・・・
「沖縄でやれてよかったです。僕はそういうタイプです。」
沖縄で野球に打ち込めたことを喜んでいた。

およそ2週間行われた沖縄キャンプで手応えはつかんだそうだ。
しかし・・
「2週間くらいじゃ理想の形は習得できないので
それをオフにやっていこうと思っています。」

来シーズン、プロ10年目を迎え28歳となる剛裕選手。
「頑張りたいですね、ここは・・・」

節目の年に懸ける強い思い。
7年ぶりに訪れた秋の沖縄で、その気温にも負けない
熱いものを感じることができて、とてもうれしかった。