経営破綻続々…脱毛ビジネスの是非

2024年03月29日 08:50
脱毛サロンの歪なビジネスモデル“通い放題”で経営破綻続々
(C)ORICON NewS inc.

 薄着の季節を前に関心が高まる脱毛ケア。SNS広告には「通い放題」や「永久保証」といった安価や気軽さを売りにした脱毛サロンが目立ち、若年層の利用も多い。一方で経営破綻に陥る脱毛サロンも相次いでおり、施術が受けられなくなるばかりか、高額な契約金が返金されない、ローンを払い続けているといったトラブルも続出している。被害者の証言から浮かび上がる脱毛サロンの構造的な問題とは? トラブルに遭わないための脱毛の基礎知識を、被害者救済に取り組む共立美容外科大阪梅田院院長・實藤健作医師に聞いた。

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◆脱毛サロンの歪なビジネスモデル“通い放題”で経営破綻続々 医療クリニックで広がる被害者救済の動き

 昨年、大手脱毛サロンの「銀座カラー」と「シースリー」が相次いで経営破綻し、合わせて約14万人の会員が高額な契約金を支払ったまま施術ができなくなる被害に見舞われた。近年、倒産に追い込まれる脱毛サロンは少なくない。この事態を重く見た医療脱毛クリニックでは、被害者救済の動きが広がっている。

 全国主要都市に医院を展開する共立美容外科では、被害に遭った人を対象に通常価格から最大80%オフで医療脱毛を受けられる「脱毛トラブル応援プラン」を期間限定で提供。また、全ての人が安心して通えるように、コースだけでなく都度払いも選べる医療脱毛の新セットプラン12種類を3月11日より提供を開始した。

 脱毛トラブル応援プランの利用者の1人である東京都・40代女性のKさんは「通い放題プランで35万円支払ったが、(サービス停止による)返金は受けられなかった」と言う。

 近年は長期間の施術を前提として「通い放題」をうたう脱毛サロンが目立つ。共立美容外科の實藤健作医師は「エステ脱毛は医療脱毛と比べて脱毛効果が低く、時間が経てば必ず毛は生えてくる。“ムダ毛がない状態”をキープするためには繰り返し通わなければいけないため、“通い放題”というプランが編み出されたのではないか」と推測する。

 しかし「通い放題」の利用者が増えれば予約は取りづらくなり、不満が口コミで広がれば新規顧客も獲得できなくなる。それでも「通い放題」のため契約金以上は請求できず、“無料”で施術を続けなければならない──。前述のKさんも8年通い続けたが、「予約が取りづらかった」と言う。脱毛サロンの経営破綻が相次いでいるのは、そうした歪なビジネスモデルが背景にあるようだ。

 さらに近年は、「医療脱毛ができるクリニックも増え、価格もかつてに比べ安価で施術できるようになりました」と共立美容外科の實藤医師はいう。

◆医療機関でないと“永久脱毛”とはうたえない…消費者のミスリードを誘う脱毛サロンの“永久保証”

 脱毛サービスにまつわるトラブル相談の増加から、国民生活センターでは「エステと医療機関でできる脱毛の違いをよく理解しましょう」と注意喚起をしている。そもそも「医療脱毛」と「エステ脱毛」とはどう違うのだろうか。

「医療脱毛とは、毛包幹細胞などを破壊して毛が生えてない状態にすることです。この毛包幹細胞などを破壊するのは医療行為であり、医療法第17条により専門の医療者のいる医療機関でしか行うことができません。細胞を破壊するという多少なりとも医療リスクを伴う行為のため、万が一のリスクに対応できる医療者にのみ許可されています。

 一方、エステ脱毛では毛包幹細胞を破壊する行為は禁止されている。つまり時間が経てば毛は生えてきますので、“脱毛”とはいっても実態は“除毛・減毛”に近いのではないでしょうか」(共立美容外科・實藤医師)

 ところがどちらも“脱毛”という言葉でひと括りにされているため、「エステサロンでも医療機関でも同じ効果が得られる」と思い込む人も少なからずいる。それにより、「希望するサービスとのミスマッチが起きているのでないか」と共立美容外科の實藤医師は言う。

「医療脱毛は脱毛効果が高いのですが、施術に伴う痛みもあります。もちろん痛みを軽減する処置はしますが、痛みの耐性は人それぞれ。医療脱毛が痛いからとエステ脱毛にシフトされる方も一定数います。それぞれの違いやメリット・デメリットを知り、またカウンセリングでしっかり説明を受けた上で、ご自身の希望するサービスを選択されるのがベストです」

 脱毛サービスを知るきっかけとして増えているのが、ネット広告やSNS広告だ。ちなみに前述のようにエステ脱毛は「毛包幹細胞を破壊できない=時間が経てば生えてくる」ため、「永久脱毛」など「施術を受けたら生えてこない」ことを保証するような表現は景表法上で禁止されている。

「一方で、医療脱毛は“永久脱毛”という表現は可能です。ただし人間の体は再生する力があります。毛包幹細胞も再生される可能性があるため、医療脱毛を受けたから必ずしも“永久に生えてこない”というわけではありません」(共立美容外科・實藤医師)

 美容や医療に関わる広告規制が厳しくなっており、「永久脱毛をうたう脱毛サロンは減っているのでは」と共立美容外科の實藤医師はいう。一方で「“永久保証”といった、消費者のミスリードを誘うような広告は増えている印象」とのことだ。

◆施術途中で高額なコース勧誘…脱毛サロンの経営破綻により“通い放題=永久”も叶わず

 共立美容外科の“救済プラン”の利用者である前述のKさんは、「エステ脱毛で永久脱毛できないことは理解していましたが、通い放題=“永久”に通えるなら良いと考えていました」と脱毛サロンの経営破綻により、それも叶わなかったというわけだ。

 脱毛エステサロンの広告には「通い放題」のほかにも、「お試し施術」や「月額○円」といった安価や気軽さをアピールする文言が目立つ。しかし当然ながらそれだけでは経営は成り立たない。Kさんは「施術途中で高額なコースに勧誘されたことがある」と証言している。同様の事例は国民生活センターにも数多く寄せられており、「強引に契約を迫られてもきっぱりと断ること」とアドバイスしている。

 広告はメリットが強調されがちだが、トラブルに遭わないためには広告だけを鵜呑みにせず十分に情報収集をすることが大切だ。安価をうたったSNS広告が増えたことから、近年は特に10代のトラブルが急増している。共立美容外科では未成年の場合、親の同意がないと施術は受けられない。本来そうしたことも未成年の場合、クリニックやサロンを選ぶ上での指標となる。年頃のお子さんをお持ちの家庭は、薄着の季節の前に家族と話し合っておくのも良いかもしれない。

(文/児玉澄子)

共立美容外科 大阪・梅田院院長 實藤健作(さねふじ けんさく)先生

2003年、長崎大学医学部医学科を卒業。同年、九州大学医学部消化器総合外科に入局後、九州大学付属病院に勤務。
2004年、国立病院機構別府医療センターに勤務。
2005年、西有田共立病院に勤務。
2006年、九州大学大学院に入学。
2009年、医学博士号を取得(甲号)。同年、九州大学大学院を早期卒業し、新中間病院に勤務。
2010年、大分赤十字病院に勤務。
2014年、宗像医師会病院に勤務。
2017年、広島赤十字原爆病院に勤務。
2018年、大分赤十字病院に勤務し、第一外科副部長就任。
2021年、某大手美容クリニックに入職。
2022年、共立美容外科に入職し、翌年に大阪・梅田院の院長就任。

(提供:オリコン)