処理水放出から1か月…日本国内では「水産物」や「観光業」に“脱中国”の動き

2023年09月24日 01:39
「あちらの売り場、たくさんの人が集まっています。にぎわっています。」 大手スーパー・イオンの350店舗で開催中なのは、北海道産のホタテやイクラ、カニなど水産物の特売セール。中でもホタテは、最大2割引きとお得です。 買い物に来た人は… 「中国で売れなくなったからだと思うので、あまり値段は気にせず買おうかなと」 「水産物が、ホタテが、大変だというので、少しでも役に立てば」 中国の禁輸で影響を受ける生産者の支援が目的で、イオンの取り組みとしては、これまでで最大規模だといいます。 イオンリテール 水産商品部 小金澤聡さん 「処理水の問題で中国に対するホタテの輸出が止まっている状態で、(イオンとしては)販売して応援する。今回のセールでも十分な数量を準備しているんですけど、非常に好調にいまのところ売れています」 しかし、水産物への影響は広がり続けています。 こちらは、日本有数のホタテの産地、稚内。 港のすぐ近くにあるホタテの加工場では、大勢の従業員が一斉に作業を進めていました。 貝殻から貝柱を手際よく外していきます。 こちらの会社では、加工したホタテのおよそ5割を、中国へ輸出していましたが、処理水の放出直後から出荷が止まり、行き場を失ったホタテの在庫が、大量に余っているといいます。 北海道から中国に向けた水産物の輸出額は全面禁輸となった8月、前年よりおよそ7割も減少しました。市場関係者は今の状況を憂慮しています。 小西鮮魚店 小西一人 社長 Q処理水放出から1カ月、影響は? 「中国に輸出していた冷凍加工品が一気に値段が崩落して例えばカニだったり、ホタテが一番ですね、タラバガニとか3~4割落ちたものもあります」 店では、国内に販路を見出そうとしています。 小西鮮魚店 小西一人 社長 「(これまで)中国への輸出ですごい値段が上がっちゃったんですよ、水産物の値段が。(今は)適正価格になっていってはいるので今まで高いから買わなかったお客さんもそのくらいに下がったら手が出るし新しく需要ができる」 実はもう一つ、処理水放出の影響をうけた現場があります。こちらは外国人観光客にも人気な、高知県のかつおのたたき。 高知かつお船 門田麻子 常務 「先月処理水の放出、次の日から電話がかかってくるようになって中国語で。どうして放出したんだと。中国客の団体の予約があったが全てキャンセルとなった」。 新型コロナの制限が緩和されたこの夏、港には、3年10カ月ぶりに中国客船が寄港しました。 さらに、中国から日本への団体旅行も解禁され、期待が高まる中の出来事でした。 高知かつお船 門田麻子 常務 「120名の予約が(処理水放出直後の)25日にキャンセルになっている。日本の魚は食べないのでキャンセルさせて下さいと」 店では今も、中国人観光客が帰ってきた時に備え、中国語の練習をしています。先行きが見通せない日々が続いています。 高知かつお船 門田麻子 常務 「今は特に台湾とかシンガポール。そういった地域の方のツアーが多い。一般のお客様にもSNS等を通じて、こういったことができるということアピールをしていきたい」 北海道の人気観光地、函館。朝市は、外国人観光客にも人気のスポットですが… 元祖いか釣堀 小野寺 透さん 「中国、本土の人が少ないなと。中国の人が来るとカニいっぱい食べているんですよ。その分の人数がいないからね」 コロナ前、日本に来る外国人観光客のおよそ3割は中国本土からの観光客でした。函館市では、中国への依存を減らそうとしています。 函館市 国際観光課 杉澤雅昭 課長 「実際中国から観光客の方はほとんどいらっしゃってない。何か今回のように問題がありますと、極端にお客さんが減少してしまう。カバーするためにも中国以外の地域へのプロモーションにも力を入れている。 これまでタイの旅行会社、他にもインドネシアとかベトナムの旅行会社にも視察旅行をしてもらっています」 さらに来月、タイに行きPR活動をする予定です。 函館市 国際観光課 杉澤雅昭 課長 「タイで個人のお客さんに対してのPRをする。是非たくさんいらっしゃっていただきたいと思っております」 ◇◇◇ 高島彩キャスター) 処理水放出から1か月、地元の福島にはどんな影響が出ているのか、政府の対策と共に見てみましょう。 板倉朋希アナウンサー) まず、政府の支援ですが、全国の水産業全体に対して総額1007億円が用意されていて、安全性の情報発信や販路拡大など風評被害対策に300億円、新たな漁場開拓など漁業の継続支援に500億円、さらに中国などの輸入規制などに対する緊急支援に207億円がつけられています。 高島彩キャスター) 福島の皆さんはどう感じてらっしゃるんでしょうか。 板倉朋希アナウンサー) いわき市の鮮魚直売店の原田さんは、「変わらずお客さんは来ている。政府の対策費が多いか少ないか分からないが、国として“何かやっている”とアピールしたいだけのような気もする」。また、鮮魚と加工品販売をしている上野台さんは、「応援する声も多くネット注文は増えているが、上野のアメ横などで加工品を売る中国人からの注文は無くなった」。また海の家や民宿を経営してる鈴木さんは、「幸い、風評被害はないが、国や県は観光業への関心が薄いように感じる。今後影響が出た時、きちんと対策をしてもらえるのか不安」ということです。 高島彩キャスター) 柳澤さんも福島のご出身ですが、いかがですか? ジャーナリスト 柳澤秀夫氏) 中国への輸出の影響というのは深刻になっていると思うんですけど、一方で国内で流通している魚介類の値段が大きく下がったという話は聞いてないんですよね。ただ処理水の海洋放出はこの先数年続きますから、政府としては地元の不安の声にしっかりとこたえるだけの対応をとってほしい思うし、やっぱり“聞く力”の本質がこれから問われるんだと思います。 高島彩キャスター) 岸田総理も「万全の対策をとる」とおっしゃっていたわけですから、様々な角度からの支援をしっかりと行ってほしいと思います。

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