能登半島地震の被災地で命を守った耐震補強工事 住民の高齢化で浸透にはハードルも

2024年3月7日 17:33
東日本大震災からまもなく13年です。1月に起きた能登半島地震の被災地を取材すると、住宅の「耐震補強工事」の重要性を改めて実感しました。

耐震補強をしていない住宅は大きな被害を受けた

「1月1日の地震を境に、本当に人生が変わってしまいました」(石川・珠洲市に住む 向山恵子さん)

 1月の能登半島地震では、石川県珠洲市で最大震度6強を観測。津波の被害もあり、合わせて103人が亡くなりました。

 地震から2カ月が経った3月2日、珠洲市内の被災現場を視察に訪れた三重県紀宝町の職員や愛知工業大学の教授らを案内する人がいました。

 説明するのは、珠洲市の市議会議員・向山忠秀さん。

「このあたりは見ていただくと、ほとんどが全壊です。家が建っていても大規模半壊。私の箱(家屋)は耐震のおかげで大丈夫だった。箱もつぶれてしまうのが耐震補強していない家です」(石川・珠洲市に住む 向山忠秀さん)
 

珠洲市の近年の大地震

珠洲市内では3割が全壊
 市内では全体の約3割の家屋が全壊しましたが、向山さんの自宅の建物は倒壊しませんでした。

 理由は“耐震補強”です。

「耐震補強した時期は?」(記者)
「令和元(2019)年、丸5年。これで4回大きな地震を経験しました。耐震してから」(向山忠秀さん)

 珠洲市では、2021年9月に最大震度5弱、2022年6月に6弱、2023年5月には6強と大きな地震が相次ぎました。
 

棚が留め具ごと壁から外れて倒れる被害の住宅も(撮影:紀宝町職員)

「今ごろは下敷きに…」
 向山さんは、大地震が起きる前の2019年に自宅の耐震補強に踏み切りました。

 珠洲市では1981年以前に建てられた建物に対して「旧耐震基準」を満たす工事を行った場合、最大200万円を補助する制度を設けています。

「(制度を活用すれば)100万円は覚悟しても安全を確保できる。私も議員をしていなかったらおそらく(耐震補強)していない。(今回の地震で)下敷きになって今ごろはこの世にいないかもわからない」(向山忠秀さん)

 向山さんの自宅周辺を見て回ると、新しい家や耐震補強がされている家は建ったままですが、補強されていない古い家屋は倒壊していました。

 耐震補強をしていないこの住宅は、1階部分が潰れています。

 傾いた建物の中は、壁に固定していた棚なども留め金ごと壁から外れて倒れていました。
 

向山さんの家では固定していた家具も無事だっという

家具の固定が重要
 一方、向山さんの自宅では耐震補強の効果があったといいます。

 家屋とともに、固定していた家具も無事でした。

「去年5月5日の震災(震度6強)の時にひっくり返って下まで落っこちた。何かしようと今度地震が来た時にと思って(トースターの)4つの足を全部くくっておいた」(向山忠秀さん)

 家の耐震化に加えて、家具を固定することの重要性を示しています。2階の本棚も──

「飛び出し防止に(本を)小口にひもで縛って、 (本が)落ちてもひもごと拾えば労力を省ける。ひと山ずつ片付けるから拾うのが楽でした」(向山忠秀さん)
 

向山さんの自宅は耐震補強をしていて無事だった

補助金の申し込みは7件
 元日の地震発生時は、夫婦で自宅にいました。

「私がテーブルの下に潜って、 (揺れが)長くて長くて、私は死ぬと思った。本当に今までに経験した事のない長い地震でした。周りにもたくさんの方が亡くなっています。倒壊した家の下敷きになって、足が見えてるけど出せないって」(妻 恵子さん)

 今回の地震で命を守った、住宅の耐震補強。

 珠洲市では2018年から200万円の補助金制度が設けられましたが、申し込んだ人は向山さんを含めて7件のみ。
 

珠洲市内全体の耐震化率は51%

「耐震は絶対必要だと思った」
 市内全体の耐震化率も51%で、なかなか浸透しません。

 背景の一つが、珠洲市の2人に1人が65歳以上という高齢化率です。

 それでも、恵子さんは耐震補強の必要性を感じるといいます。

「大工さんが補強工事をするのを見ていたんです。筋交いをして、断熱材も入れて、だけど補強が足りないと言われて、設計士から言われて、それで全部またやり直していたのを見た。隣は本当に立派な大きな家だったんですけど崩れてたんです。耐震の無い家ってこんなにひどいなと。やっぱり耐震は絶対必要だと思いました」(妻 恵子さん)
 

珠洲市内を視察した紀宝町職員の榎本さん(右)

「コストはかかるが得られるものも…」
 三重県紀宝町で防災担当の榎本匡伸さんは、去年5月の地震に続いて珠洲市を視察しました。

 紀宝町は珠洲市と同様に海に面していて、高齢者の割合も高く、南海トラフ地震では地震から最短6分で津波が襲うとされています。

「紀宝町でも同じような条件で古い家がたくさんあるので、やっぱり(耐震化は)コストがかかるけども、それ以上に得られるものがある。命はもちろん守られるし、あとは自分の財産。高くても耐震診断・補強工事までやって守るというのは非常に重要だと思いました。紀宝町の住民にもしっかりと伝えたい」(三重・紀宝町防災対策室 榎本匡伸さん)

(3月7日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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