予備校が突然閉校 返金されない授業料 弁護士「生徒たちへの義務を果たしていない」  

2024年7月11日 11:35
名古屋市東区にある予備校が6月突然閉校し、生徒らからは困惑の声があがっています。年間授業料を支払ったばかりの保護者もいて、対応策を弁護士に聞きました。
 「一番最初は、もうとにかく喪失感。何か失ってしまったような。いろんな意味で、お金も子どもの大切な場所というか…」(保護者)

 そう戸惑いの言葉を口にする、名古屋市の男性。

 高校1年生の息子が、約2年前から予備校に通っていました。

 「困る。いつも勉強していた場所がなくなるから。もうすぐ期末テストもある、期末テストが終わるまでは続いてほしかった」(高校1年生の息子)

 “現役医学部生の個別指導”をうたう「ビクセス予備校」は、先月、突然閉校しました。
 

保護者

閉校直前に約100万円を支払う
 「個別指導は先生の質によって、大きく差が出てしまう。ビクセス予備校は、かなり質の高い先生を用意している。豊富にいるところは、非常に魅力的だった」(保護者)

 信頼していた予備校の閉校は、まったく想像しておらず、6月24日から1年間の授業料、約100万円を支払ったばかりだったといいます。

 「言葉を変えると、計画倒産じゃないかと正直疑う。年払いしたものが、まるっとなくなってしまって。『はい、じゃあ次』っていけるような家庭でもない。考えなきゃいけないことがあるので、非常につらい」(保護者)

 閉校の連絡は事前には一切なく、保護者らへの報告は1通のメールだけでした。

 「ビクセス予備校は、2024年6月28日をもって閉館いたします。6月29日以降は塾に入ることができなくなります」(保護者に届いたメール)
 

閉校の前日に、7月分の追加講座費用を支払う

閉校の影響は受験生にも
 突然の閉校の影響は、受験生にも――

 「もっと早く知らせてほしかった」(ビクセス予備校に通っていた高校3年生)

 こちらの高校3年生の生徒は、「閉校の日」も授業を受けていたといいます。

 「普通に授業があったのに、急に閉館って言われたから。あれ?うーんとは思った」(高校3年生)

 まもなく受験を迎える、高校3年生の生徒。

 閉校の前日に、7月分の追加講座の費用4万4000円を支払ったばかりでした。

 「お金は返してほしい。もっと真摯に対応してほしい。受験への影響は、少なからずあるとは思う」(高校3年生)
 

運営している「日本教育フォーラム」は、既に破産手続きの準備を進める

既に破産手続きの準備を進める
 閉校から、1週間以上が経ったいまも、名前は残ったままです。

 建物を訪ねてみましたが――

 インターフォンなどはすでに撤去され、ノックしても反応はありませんでした。

 ビクセス予備校の代理人弁護士を取材すると、運営している「日本教育フォーラム」は、既に破産手続きの準備を進めていて、授業料の返金は難しいとしています。

 生徒や保護者から憤りの声が上がっていることを、どう受け止めているのか。

 10日の午後、「日本教育フォーラム」の社長の自宅を訪ねましたが、不在なのか、接触はできませんでした。
 

名城法律事務所 正木健司弁護士

「生徒たちへの義務を果たしていない」
 突然の閉校に、返金されない授業料――

 今回の予備校の対応に問題はないのか。

 消費者問題に詳しい弁護士は、「生徒たちへの義務を果たしていない」と指摘します。

 「もともと通っていた生徒たちは、当然予備校で授業を受ける権利があり、それが急にできなくなってしまった。予備校は義務を果たしていない点で問題がある。破産をするのは法的に認められた手続きで、それ自体が問題ではないが、生徒たちへ影響ができるだけ少ない形を配慮すべきだった」(名城法律事務所 正木健司弁護士)
 

ビクセス予備校

受講できなかった講座の「授業料」について
 また、受けられなかった講座の「授業料」については――

 Q.授業料が返金されていないが
 「通常はありえない。受けていない授業のお金は、返さないといけない義務がある。『破産するから』と向こう(塾側)としては言い訳したいが、返さないといけない。債務不履行になる」(正木弁護士)

 正木弁護士は、保護者らにまずは、法律の専門家に相談して欲しいとしています。

 その一方で――

 「破産すると言っている相手なので、資力がない可能性が高い。支払い不能の状態。だから、破産の申し立てをする。限られた資産をみなさんで配当することになり、全額配当は難しい。100万円払った方も、数%しか返ってこない可能性がある」(正木弁護士)
 

佐鳴予備校の特別救済処置

学習の場を失った生徒たちに、支援の動きも…
 生徒にとっては、ひとつの「正念場」ともいえる夏休み。

 学習の場を失った生徒たちに、支援の動きも出始めています。

 佐鳴予備校では、ビクセス予備校に通っていた生徒を対象に、入学金3万3000円や授業35時間分(7万7000円相当)の費用を免除する、特別救済措置を発表しました。

 「同じ教育業界に携わるものとして、おそらく生徒たちが不安だろうと思って。今回看過できない事態として動いた。今までやってきたカリキュラムなどを、ヒアリングしたうえで、ひとりひとりに沿ったカリキュラムを立て、学習戦略や成績も分析して、生徒たちが大手をふって、勉強に向かえるようにサポートしてあげたい」(佐鳴予備校講師 山下幸嗣さん)
 

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