伝統工芸「輪島塗」を守る若手職人 地元・愛知から能登の被災地を支える奮闘

2024年3月25日 17:40
能登半島地震で被災した愛知県出身の職人が、輪島塗を守ろうと奮闘しています。
「輪島塗の好きなところは堅牢な下地ですごく丈夫な塗りものに仕上がるところと、漆の半つやの表面の感じが好きですね」(輪島塗職人 今瀬風韻さん)

 元日に起きた能登半島地震。火災などで大きな被害を受けた石川県輪島市の伝統工芸といえば「輪島塗」です。

 美しい朱色に塗られたお椀や皿には、蒔絵という技法で花が描かれています。

 輪島塗は、室町時代から続くと言われ、今もなお高い人気を誇っています。

 その輪島塗に魅せられて、職人になったのが、愛知県稲沢市出身の今瀬風韻さんです。

Q.元日の地震のときはどちらに?
「愛知県の実家にいました。最初は連絡が取れないこととニュースで火事の映像とかビルが倒壊している映像を見て、これは周りの職人とか友達は無事でいるのかどうかが一番不安でした」(今瀬さん)
 

輪島塗職人 今瀬風韻さん

愛知から輪島塗を支える若手職人
 今瀬さんが働く輪島市の工房「輪島キリモト」。

 従業員にケガはなかったものの、工房の機械が倒れるなど大きな被害を受けました。いまも、製造を再開することはできていません。

「今後、どうしていくかも話したが、前向きに考えている人も多くいたので、今後も変わらず、みんなで作っていけるかなって気はする」(今瀬さん)

 今瀬さんは、愛知県にいながら輪島塗を支えようと一人奮闘しています。

 稲沢市の実家に急遽、簡易の工房を構え、現地でできない仕事を請け負っています。

「ランチョンマットという商品で、木地に漆をしみこませる作業をしている。輪島と環境が違うので、ちょっととやりにくさは感じている。今できることをやるしかないので、与えられた環境でやろうかなという感じ」(今瀬さん)

 いまは簡単な作業しかできませんが、作ったものを輪島市の会社に送り、お客さんの手元に届けています。
 

日本料理店でチャリティー展示販売会(名古屋市西区)

被災した職人のためチャリティー活動も
 さらに、現地で被災した職人のために2月から始めたことがあります。

「普段お世話になっている作家さんや工房の商品を並べて、売上金額を全額作家さんに渡すというチャリティーの販売をしている」(今瀬さん)

 母親が経営している名古屋市西区の日本料理店で、輪島塗を集めたギャラリーを開いています。

「『沈金』という輪島塗の伝統的な技法で絵を描いている。すごく繊細で丁寧で、私が見てもすごくきれい」(今瀬さん)

 地震の影響を受けた作品もあります。

「地震で落ちて、小さなキズがついてしまったり、補修したものを少しお値下げして販売している。消して安いお値段ではないが、それでもくださいと買っていかれる方が多くて感謝している」(今瀬さん)
 

徐々に地震前の状態に

地震で変わった、職人としての意識
 震災から2か月がたち、輪島市の工房にも光が見えてきました。倒れた機械などが、徐々に地震前の状態に戻りつつあります。

「工房の一角に仮設の工房が建って、そこを今後工房として使ったり、被災された職人に使ってもらう。紙の柱でできた工房らしい。2日間で施工ができる仮設の工房。1歩ずつ前進しているのでよかったなと思う」(今瀬さん)

 能登半島地震で、職人としての意識も変わったといいます。

「いままで当たり前だったことが当たり前じゃなくなっていくので、上の世代の職人さんの技を早く学ばないと、という思いもある。全国から支援をもらっているので、その人たちに早く商品を届けたいという気持ち。幅広いニーズにこたえられる職人になりたい」(今瀬さん)

     ◇

 チャリティー展示販売会は3月末まで、名古屋市西区の日本料理店「懐韻(なつね)」で開かれています。月曜~水曜は休みのため、開催は28日から31日までです。

(3月25日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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