パート勤務で直面、働き損?手取りが減る「年収の壁」突っ張り棒メーカーがこの“壁”に挑む

2024年3月14日 17:34
「年収の壁」という言葉、耳にしたことがある方も多いのでは。パート勤務などの収入が一定金額を超えると逆に、手取りが減ってしまうという現象のことで「働き控え」につながっていると指摘されています。この壁に挑む、会社を取材しました。
 新生活が始まる春は「部屋の模様替えをしたい」という人も多いのでは――
 
 ホームセンターのDIYコーナーでは、女性に人気の簡単に取り付けることができるインテリアが展開されています。

 ホームセンターの一角に作られたディスプレイ。「突っ張り棒」がオシャレに進化して壁を彩っています。

 「主に20~40代の女性に人気があります。壁の有効スペースを使うというところで、おしゃれな飾り棚を作りたいという要望が多いので、見せる収納ということで今紹介している『LABRICO(ラブリコ)』は特に人気があります」(DCM21 豊橋南店 平本哲也さん)

 この「ラブリコ」を手がけた会社は――

 「つっパワー」(なかやまきんに君)

 2月8日=「つっぱり棒の日」に、なかやまきんに君と商品をPRした平安伸銅工業。

 8年前に発売されたデザイン性の高い「ラブリコ」が支持を集め、突っ張り棒で国内トップクラスのシェアを誇っています。
 

「年収の壁」イメージ

パート従業員に“戸惑い”の声
 商品を全国に発送している、岐阜県養老町の物流センタ―。

 支えているのは30代、40代を中心とした女性のパート従業員ですが、今、“戸惑いの声”が上がっています。

 「夫の扶養から外れて働くことになるので、社会保険を自分で払わないといけない。その分、手取りが増えないと保険料の支払いが自分にかかるので…」(パートタイム従業員 近藤さゆりさん)

 会社員や公務員の配偶者に扶養されている「第3号被保険者」はパート勤務などの年間収入が一定金額を超えると、扶養から外れて社会保険料の支払いが発生し、結果的に、手取りの収入が減ってしまう状態になります。

 これが「年収の壁」と呼ばれ、「働き控え」につながる可能性が指摘されています。

 現在、社会保険料の負担が発生するのは従業員が101人以上の比較的大きな企業ですが、今年10月からは、51人以上の会社にも拡大されます。
 

平安伸銅工業 竹内香予子社長

“働き控え”をしていた従業員から「長く働きたい」との希望が――
 従業員76人の「平安伸銅工業」も対象となるため、年収の壁を越えるためには、一定の収入アップが必要となります。

 「『もし仕事量を増やせられないなら手取りが減ってしまう』とか、『希望する年収を確保できないなら副業をしたい』という話だとか、『転職を検討しないといけなくなるかもしれないけど、何とかならないか』という相談はここ最近受けていた。現場の声で」(平安伸銅工業 竹内香予子社長)

 これまで収入が配偶者の扶養範囲に収まるよう“働き控え”をしていた従業員から「今より長く働きたい」という希望が出始めたといいます。

 しかし――

 「1人当たりの仕事量を増やしてしまうと、従業員の人数を減らすのかとか、皆さんがやっている仕事のボリュームでは、希望している仕事量の確保が難しくなり、ミスマッチみたいなことが起こり始めていた」 (竹内社長)
 

岐阜県内の物流センタ―で働くパート従業員

政府の支援は「期間限定」
 このように「年収の壁」が働き方に大きな影響を与えていることから政府は、去年10月から対策を始めました。

 厚生年金や健康保険の保険料負担が発生する「106万円の壁」では、従業員の手取り収入が減らないよう対策を取った企業に対し、国が3年間1人あたり最大50万円の助成金を出します。

 国民年金や国民健康保険の保険料負担が発生する「130万円の壁」では、一時的な収入アップであれば、連続して2年までは扶養にとどまることができるようにします。

 こうした国の対策に、平安伸銅工業の竹内社長は――

 「助成金は1つの手段なので、それがありきではなくて、助成金はいつかなくなってしまう時限措置だと思うので、本質的には私たちの会社でしっかり仕事を増やして、希望する仕事ができる環境を整えるというのが、企業としてやらなければならないことだと思っています」(竹内社長)
 

物流センターの倉庫を改装した動画撮影スタジオ

業務量を全体的に増やす方向へ――
 会社の業務量を全体的に増やす方向に舵を切ったのです。

 新たな試みは、岐阜の物流センターで始まりました。

 「ここはTikTokの撮影をしている場所です」(近藤さん)

 商品の組み立て方や使い方を紹介する動画を通じて製品の魅力をPRできますが、大阪の本社には、作業スペースに限りがありました。

 そこで去年9月、岐阜の物流センターの倉庫を改装し動画を撮影する「スタジオ」を作りました。

 実は、これまでもユニークな動画を公開してきた平安伸銅工業。

 収納に悩む「怪人」にさらわれた竹内社長が「ラブリコ」を使って解決していくという動画は、YouTubeで公開されています。
 

検品作業で得た知識を生かしTikTok動画を作成(平安伸銅工業 TikTokより)

検品作業で得た知識・アイデアをいかした動画を作成
 新たに狙いを定めたのは、若者に人気のTikTok。日頃の検品作業で得た知識やアイデアをいかした内容です。

 「取り付けやすさとか、普段検品していて『こんな所に置けるな』というアイデアとか、携わっていないと分からないこともたくさんあるので、検品していてそれをいかせて動画も撮れていると思います。たくさん仕事があって仕事も家庭も充実できるのがいいと思います」(近藤さん)

 動画はSNSに投稿するだけでなく、販売店での商品PRや営業担当者の販促活動にも使われる予定です。

 動画制作の仕事を増やすことで、商品の売り上げ増に繋げていく仕組みを作っていきたいといいます。

 「増やした仕事が場当たり的なことではなくて、これが平安伸銅のビジネスを回していくうえで必要な要素として、収益を生んでいく仕事としてしっかり定着させていこうと思っています」(竹内社長)

 (3月14日 15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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