「記憶を取り戻したい。悔しさしかない」子宮頸がんワクチン接種集団訴訟 名古屋地裁で原告が思いを語る

2024年2月28日 14:01
子宮頸がんワクチンを接種した女性たちが接種後「体への影響」が出たとして、国や製薬会社に損害賠償を求める裁判が全国で続いています。26日、名古屋地裁では初めて法廷で原告本人が思いを語りました。

名古屋地裁に入る原告ら

 26日、名古屋地裁では、東海3県などに住む女性14人が、子宮頸がんワクチンを接種した後、体の痛みや記憶障害などの症状が出たとして、国とワクチンを製造する製薬会社2社に対し、損害賠償を求める裁判が開かれました。

 証言台にたった26歳の女性は――
 「今も記憶を取り戻したいと思っています。悔しさしかないです」

 女性にとって深刻な問題となる子宮頸がん。

 国立がん研究センターによると、2021年、病気が進行し、亡くなった人は約2900人に上っています。

 子宮頸がんを予防できるとされているのが「子宮頸がんワクチン」です。
 

三重県在住の原告 落合晴香さん

3回目のワクチン接種の約1カ月後に体の異常を感じ始める
 三重県に住む、落合晴香さん(26)。

 15歳の時に、子宮頸がんワクチンを3回接種しました。

 接種直後は、筋肉痛と感じる痛みが長引き、3回目の接種の約1カ月後に体の異常を感じ始めたといいます。

 「一番最初は足が痛くなってきて、むくみがひどかった。ちょっと変色しかけてるぐらいだったらしくて、そこで何かやっぱりちょっとおかしいというのが分かって」(三重県在住の原告 落合晴香さん)

 17歳の時に受診した病院で、子宮頸がんワクチンの副反応と診断されたということです。 
 

三重県在住の原告 落合晴香さん

意識を失った後、19年間の記憶をなくす
 そして19歳の時、予期せぬ事態に見舞われたといいます。

 「学校で倒れて起きた時には記憶がなくて、19年間のことを全部忘れてしまってて、自分のこともだし、友達のことも忘れていたし」(落合晴香さん)

 当時通っていた高等専門学校で意識を失った後、19年間の記憶を失くしたといいます。

 受診した病院では、この記憶障害も子宮頸がんワクチンの副反応の1つであると診断されたということです。
 

落合晴香さんの母・由美さん

「涙しか出なかったです。何も考えられなかったです」
 一番近くで見ていた落合さんのお母さんは――

 「名前とか住所とか生年月日とか確認しても『わからない』というんですよね。はあ…頭の中真っ白ですよ。もう本当に今思い出してもつらい。記憶をなくした時は涙しか出なかったです。何も考えられなかったです」(落合晴香さんの母・由美さん)

 なくした記憶。諦めきれないものが。

 「家族でディズニーが好きだったんやんな?結構行っとったんやんな?ちっちゃい頃の写真とか見てても、すごく楽しそうな写真がいっぱいあって、それを本当に家族みんなで『こんなことあったよね?』と私の口から言えるようになりたいなと本当にずっと思っています。やっぱりその辺は諦めきれない」(落合晴香さん)
 

各地裁ごとの子宮頸がんワクチン訴訟の人数

4カ所で訴訟が行われ、合わせて117人が健康被害を訴える
 子宮頸がんワクチンは、日本では2013年4月に、定期接種が始まりました。

 2カ月後、接種した人から体の痛みや運動障害などの症状が報告され、厚労省は「ワクチンとの因果関係を否定できない」などとして「積極的勧奨」を差し控えました。

 おととし4月、専門家の評価などにより、厚労省は「ワクチンの安全性について特段の懸念が認められない」などとして「積極的勧奨」を再開。

 現在、小学6年から高校1年相当の女子を対象に、公費による定期接種が行われています。

 子宮頸がんワクチン集団訴訟の原告の1人として、活動している落合さん。

 8年前の2016年、全国で一斉提訴され、名古屋地裁のほか東京や大阪などの4カ所で訴訟が行われ、合わせて117人が健康被害を訴えています。
 

廷内スケッチ

初めて原告の本人尋問、落合さんは法廷へ
 26日、名古屋地裁では初めて原告の本人尋問が行われ、落合さんは法廷に立ち、現状を話しました。

 「症状はどのように子育てに影響していますか?」(弁護団)
 「この体・この腕じゃなければもっと遊んで、だっこしてあげられるのになと思います」(落合晴香さん)
 
 「最後に伝えたいことは?」と聞かれた落合さんは――

 「治療法ができたころには、おばあさんになっているかもしれません。この苦しい人生ももう変えることができません」(落合晴香さん)
 

国、製薬会社は争う姿勢

国、製薬会社は争う姿勢を示す
 一方、国や製薬会社は、これまでの裁判で一貫して、請求の棄却を求め、争う姿勢を示しています。

 製薬会社側は、「ワクチンの安全性と有効性は、世界保健機関(WHO)なども認め、接種を強く推奨し、100を超える国と地域(2019年時点)で定期接種が行われている」ことや、「原告らの症状は、人間関係のこじれや過度な頑張りなどストレスにより生じた心身の反応である」などと主張しています。 

 これに対し、原告側の弁護団は――

 「我々の目的としてはもちろん被害の救済・金銭面での救済もすごく大事なんですけれども、それにとどまらず彼女たちの被害に社会全体できちんと目を向けて頂いて、そこから国を挙げて、きちんと病態の解明や治療法の開発というところに向けて、動いてもらいたいという願いでこの訴訟をやっています」(HPVワクチン薬害訴訟 名古屋弁護団 柄沢好宣 弁護士)
 

三重県在住の原告 落合晴香さん

尋問を終えた落合さんは、裁判を振り返って――
 尋問を終えた落合さんは、裁判を振り返って、尋問中に涙を流した理由を語りました。

 「記憶をなくしてしまったことが一番悔しいですし、悔しさが強いからこそ被告をやっぱり許せないです。今でもやはり裁判して一番求めていることは、自分にとって治療法ですし、それが出来るまでやっぱり補償もしっかりしてほしいと思っています。ただ、やはりそれが間に合わないかもしれないというのが現実なんだって改めて思った時に、やはりちょっと絶望感が出てきて涙が出てしまった」(落合晴香さん)

 判決は、2027年4月に予定されています。

 (2月27日 15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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