【”立ち退き”訴訟】名古屋市から訴えられた洋菓子店「50年経った建物でもゴミではない」

2023年9月29日 22:21
名古屋市営地下鉄東山線の終点「藤が丘駅」の高架下をめぐる民事裁判の最終弁論が行われました。高架下にある店舗の立ち退きを求める、名古屋市の主張が認められるかが焦点です。

名古屋地裁に入る被告の澤村光雄さんら

名古屋市営地下鉄、藤が丘駅の高架下でケーキ店「ユニバーサル洋菓子店」を営む澤村光雄さん、81歳。

 50年以上、”町のケーキ屋さん”として味を守り続けてきましたが、2年前名古屋市から土地の明け渡しを求める訴えを起こされました。

 訴状によりますと、名古屋市は1970年から、高架下を管理する「東名サービス」に使用権を許可してきましたが、高架の耐震補強工事をする必要があるとして、使用期限を2019年9月までとしてきました。
 

藤が丘駅の高架下で営業する洋菓子店(名古屋市名東区)

 しかし「東名サービス」やテナントの店舗などが期限を超えてその場所を使い続けているとして、名古屋市は無条件での立ち退きを求めています。

 藤が丘駅の高架下については、独特の契約形態があります。市が土地の使用許可を「東名サービス」に出し、東名サービスは市に使用料を払った上で、入居する店舗などと賃貸契約を結んできました。店舗は直接、市と契約を結んでいるわけではありません。

「50年たった古い建物でも、現在使って商売ができているうちは、くずではない。ゴミではない。それを壊して出ていていけ、一銭も払わんぞというのはあまりにもお門違い。」(立ち退きを迫られている澤村光雄さん)
 

耐震工事中の藤が丘駅高架下(2022年4月撮影)

 29日、名古屋地方裁判所で開かれた最終弁論で名古屋市側は「高架下は行政財産である」として、被告は使用し続けられないと主張しました。

 一方、高架下に店を構える澤村さんら被告側は「名古屋市は、東名サービスを介して事業を行っていたことを認識していることは明らかである。市が指定した期間内に、被告側の負担で一切の建造物の撤去と明け渡しを求められることは、受け入れられない」と主張しました。

 澤村さん自身も法廷で「立ち退きの話があってから暗いトンネルに入り、従業員を抱えて営業ができなくなった」などと訴えました。
 

最終弁論を終えた被告らと三池哲二弁護士(左)

 最終弁論を終えた澤村さんらは…。

「耐震補強工事が必要なことは分かっている。元の場所でまたやりたいという思いがある。あの場所で一番適合した商売をやってきたから、50年続けてこられた。最初から構築するのは大変なこと。一番大事なのは、今あるお客さんたちです。」(澤村光雄さん)

「最初から”使用許可”なんだと、”使用許可なので取り消されたら無条件で出ていかなければならない”と聞かされていたら、澤村さんはあそこで営業していない、他の土地を借りていた。ずっと土地を使えると思って、自分ができなくなったら息子にも譲れると思って一世一代の大きな借り入れをしてあそこで営業を始めた。”それをするお前たちが悪い”というのは、名古屋市はあまりにも市民をバカにしている。」(三池哲二弁護士)

 判決は、12月15日の予定です。
 

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