児童養護施設のケアから離れた人=「ケアリーバー」 3人に1人が生活費など悩み 広がる支援の輪

2023年9月19日 16:52
「ケアリーバー」という言葉を、ご存知でしょうか。児童養護施設で生活できるのは原則、18歳までとなっていてそこから出た若者たちのことを指します。施設を出た後、進学や生活にかかる大きな負担。支えるための取り組みが広がりつつあります。

幼少期の内別府成参さん

 三重県津市の内別府成参さん(27)。今も、幼いころの、つらい記憶が残っています。

「4歳、5歳ぐらいのときに虐待を。両親から物で殴られたり、記憶にあるのは、つねるとか、思いっきり引っ張るとか、気づいたときには毎日泣いているなという感じだったのは覚えています。痛かったっというよりかは、怖かったのほうが強かった」(内別府成参さん)

 幼稚園の先生が「あざ」に気付き、虐待が発覚。その後、児童養護施設で暮らすことになりました。

 野球に打ち込んでいたという内別府さん。高校卒業後も、続けたいと考えていましたがーー

「本当は正直、大学に行きたかったです。強い大学で野球をやりたかった。やっぱりお金の問題で、やっていけないって感じで。諦めたというか、無理やろうなっていうのは自分の中であって、だからその話は児童養護施設の人にできなかったですね」(内別府成参さん)
 

内別府成参さん(27)

「生活は厳しかった」
 野球推薦を受け、授業料が無償となる専門学校へ進んだ内別府さん。企業などからの給付金で入学や寮での生活費を支払っていました。

 しかし、野球部の活動でアルバイトをする時間がなく、生活は厳しかったといいます。

Q.日常生活はぎりぎり過ごせた
「そうですね、ほぼぎりぎりですね。たまに『すき家』行ったり、スーパー銭湯行ったりぐらいです、本当に記憶にあるのが。他の人が普通に道具を買えていたり、普通に『ごはん行こう』でご飯行ってたりしたこととか、すごくうらやましかったですね」(内別府成参さん)
 

児童養護施設で生活している子ども(令和2年3月末 福祉行政報告例による)

ケアリーバーの3人に1人が生活費や学費のことで悩み
 厚生労働省によりますと、児童養護施設で生活している子どもは全国で約2万4500人。

頼れる保護者がいなくても、原則18歳で施設を出なければならずケアから離れた人=「ケアリーバー」となります。

 進学した場合は、一人暮らしや学費の負担が大きく厚労省の研究班が行った調査では、回答したケアリーバーの3人に1人が生活費や学費のことで悩んでいることが分かりました。
 

マルシェ開催を企画した 寺際伸一さん

ボランティア団体が「ケアリーバー」を支援
 こうした中、津市のボランティア団体が支援に向けた、マルシェを開催しました。

「施設に入る理由もいろいろあると思うけどひとりの子供として、一生懸命生きているのは誰一人かわらないので応援するだけですね。普通のマルシェだったら、出店料をいただいて、運営されているんですけど僕たちは出展料をタダにしています。その代わりに、売り上げの10%を僕たちに寄付として預けてくださいという流れにして、全額、児童養護施設に、今回は1件の施設に渡す」(スマイルカレンダープロジェクト 寺際伸一さん)

 コストを抑えるため、駐車場の案内なども含め、運営はすべてボランティアが行います。主催者の寺際さんは、出店者を募るためSNSで、飲食店などに100件以上のメッセージを送信。

 さらに、知人を通じて、直接、お店に依頼するなどして、開催した3日間で74店舗が出店しました。
 

11年前に白血病で亡くなった息子、竜一さん(当時15歳)

ボランティアの原動力は亡くなった息子の存在
「たくさんのお子様の方に笑顔になっていただける企画って聞いたので共感できるなと。私にも子どもがいるんですけど、たくさん子どもに笑顔になっていただけるのがうれしいなと思いました」(出品者)

「いろんな境遇の子どもたちがいるので、子どもたちにはこれから未来しかないので、同じように元気に育ってほしいなと」 (来場者)

 三重県内を中心にボランティアを行う、寺際さん。

 闘病中の子どもたちのために花火を打ち上げるなど、10年近く活動してきました。

 原動力となっているのは、11年前に白血病で亡くなった息子、竜一さん(当時15歳)の存在です。

「息子が亡くならなければボランティアの活動はしていなかったと思うんです。亡くなられてつらい思いをした親御さんもいるし、健康だけど、保護者がいないとか、虐待とかいろいろな問題で避難している子がいるということで、みんなが応援していくことだと思いますね」(寺際伸一さん)

 マルシェのプロジェクトなどで集まった30万円は2024年春に津市の施設から旅立つ子ども3人に届けるそうです。
 

内別府さんが経営する「Both Rich」(津市)

ケアリーバーのいま
 児童養護施設で育った、内別府さん。今はハンバーガー屋さん(Both Rich 津市)を経営しています。

 専門学校の卒業後、人気ハンバーガー店を巡って研究を重ね、独自のメニューを開発しました。

 今後の目標をたずねると、迷わず返ってきた答えがーー

「自分がお金という意味でも支援されて夢を追えたので、逆にちょっと困っている子がいたら夢を追える手助けなどができるようにもっともっと自分というのを知ってもらって、お店も大きくして、『頑張って』という気持ちで、お金を出せたら素敵だと思いますし。施設の子は悩んでいることも多いと思うので、相談できるようなそういう人になりたいと思う」(内別府成参さん)

(9月19日15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)
 

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