障害を価値に変える「バリアバリュー」車いす社長が目指す外出したくなる街づくり、ポイントは人の意識

2023年9月19日 18:12
 多くの人でにぎわう地下街。名古屋といえば「地下街」という言葉が思い浮かぶほど生活の一部となっていますが“課題”もあるんです。「より行きたい地下街」にするために乗り出した車いすの社長の思いを取材しました。

「より行きたい地下街」へ

 平日の昼過ぎ、名古屋栄の地下街・サカエチカ。

 「普段の生活に欠かせない」「天候に左右されないので好き」など、ランチや買い物を楽しみに来た人の姿が多くみられます。

 名古屋にとって地下街は文化、地下街が発展していることで有名です。
 

垣内俊哉さん(34)

地下街の課題、「より行きたい」場所にするには?
 そんなサカエチカにやってきた車いすの男性は、障害者手帳アプリを運営する会社「ミライロ」を立ち上げた垣内俊哉さんです。

 アプリは、障害者手帳を電子化することで、手帳を見せる心理的な負担を減らし、気軽にサービスが受けられるようにしたもの。

 垣内さんは、こうしたアプリの運営に加え、企業や行政のバリアフリー化を支援。

 政府の会議にも出席し、多様性の実現に向けて発信しています。
 

垣内さんの視点で見た地下街

サカエチカで車いすの視点からバリアフリーの地図を
 9月7日は「バリアフリーマップ」の作成に向けて動き出した初日。

 車いす利用者の目線で不便な点がないか、地下街をチェックしていきます。

 「エレベーターがあるんですけど、僕の高さからだとあること全く分からないです。これだけ大勢の方が移動しているとこの先にあるのか認識できないというのは課題だと思います」(ミライロ 垣内俊哉 社長)

 垣内さんは、エレベーターがあることをこのように地図に書き足すだけでも、使いやすくなると話します。
 

加藤会長と垣内さん

地下街は「変わっていかなければならない」
 こうした垣内さんの言葉に耳を傾けるのは、サカエチカ名店会の加藤会長。

 地下街はこれから「変わっていかなければならない」と話します。

 「若者の地下街というイメージがあるんですけれども、高齢者の方や障害者の方にもっと来ていただきたい。誰しもに好かれて、誰しもが買い物できるという地下街を目指していきたいと思っています」(サカエチカ名店会 加藤通浩 会長)
 

幼少期の垣内さん

「一歩踏み出したら『こんなに行けるところがある』と思える街づくりを」
 垣内さんは、生まれつき骨が弱く折れやすい病気で、幼い頃から車いすに乗って過ごしていたと言います。

 「車いすに乗っている自分を、障害のある自分を否定し続け、何度も手術を受けてずっとリハビリを続けて、『それでも歩く事は叶わない』となった瞬間、やっぱり大きな挫折を感じていました。すべてに悲観していたように思います」(ミライロ 垣内俊哉 社長)

 そんな垣内さんがはじめて遠出をしたのは、14歳の時でした。

 「ドラゴンズの試合を友人3人と見に行くとなったときに、地元・中津川の駅から電車に乗るというのはすごく緊張しましたし、不安でした。でも、あのとき電車に乗って一歩踏み出したからこそ、私の人生は大きく開けた。一歩踏み出したら、『こんなに行けるところがあるんだ』『こんなに社会のみんなって温かいんだ』って思ってもらえる、そんな街づくりをこれからもっと広げていけたらなと」(ミライロ 垣内俊哉 社長)
 

講師を務める垣内さん

日本は世界一外出しやすい国、外出したくなるかどうかは別
 9月7日、名古屋市内のビルの一室。

 障害者や高齢者の目線で大切にすべきことを学ぶ研修「ユニバサールマナー検定」が行われていました。

 垣内さんが講師を務め、サカエチカで働くスタッフも参加しました。

 「外出したくなる街」を作っていくうえで、垣内さんが最も大切だと考えているのは、人の「意識」です。

 「トイレもエレベーターもエスカレーターもスロープも手すりも、色んなことを考えるとお金はどんどん掛かって仕方ない状況になってしまう。バリアフリーを進めることはもちろん重要。でも何よりも、人の企業の社会全体の意識を、ハートを変えていくことこそが、より多くの人が社会へ一歩出てみようというきっかけにつながるんじゃないかと考えています」(ミライロ 垣内俊哉 社長)
 

高齢者の視野を体験する上坂アナ

 「意識」を変えるために特殊な器具を使って「高齢者」の視野などを体験します。

 研修を受けた、サカエチカで働く人たちは「どうしてほしいか聞かずに勝手な思い込みでイスをどかしたりしていた。何か手伝えることはないかと聞いていこうと思う」「車いすを利用されているお客さまが入りやすいお店にしていきたい」と話しました。
 

障害を価値に変える「バリアバリュー」が大切

障害を価値に変える「バリアバリュー」の大切さ
 「誰もが暮らしやすい社会」へ。

 障害を取り除く「バリアフリー」ではなく、障害を価値に変える「バリアバリュー」が大切だと話します。

 「バリアバリューという考え方にいきついたのは、大学に進学して、はじめて仕事をするっていうタイミングでした」(ミライロ 垣内俊哉 社長)

 ウェブ制作の会社で垣内さんが任されたのは、営業の「外回り」。

 数か月ひたむきに取り組んだ結果、営業成績「ナンバーワン」になったそうです。

 「当時の社長に言われたんですよね。『歩けないことに胸を張れ』と。車いすに乗っていることでお客さんに覚えてもらえる。結果につながっている。それは営業にとって大きな強みだと。ずっと不幸だと思っていたことが実はそうじゃないんだと。新しい価値に変えられるんだと思った時に、障害を取り除こうじゃない、克服しようじゃない、障害を価値に変えていくんだということにいきつけました」(ミライロ 垣内俊哉 社長)

 さらに、「バリア」を苦手なことと考えると、誰にでもあるはずだと垣内さんは話します。

 「誰しも得手不得手はあって、たとえばトラウマもあるかもしれない。じっくりと向き合い続けることで、どんな人でもすぐにとはいかなくても、絶対に変われる、成長できる。そうしたことは、自信を持ってほしいなと思います」(ミライロ 垣内俊哉 社長)

(9月19日15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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