読み書き困難「学習障害」 名古屋の女子中学生が広める”勉強術”

2023年8月24日 19:15
俳優のトム・クルーズさんが公表したことでも知られる学習障害「発達性ディスレクシア」。名古屋の女子中学生がある機器を活用して勉強への苦手意識を克服しています。

絵を描く事が得意な中学2年生 三輪かのんさん

 絵を描くのが得意な三輪かのんさん。名古屋市千種区内に住む中学2年生です。

「これは黒と黄色を特徴にしてドラゴンの女の子って感じで異世界系をイメージして書いてます。」(三輪かのんさん)
 
 かのんさんは発達障害のひとつ学習障害で、読み書きに困難さを抱える「発達性ディスレクシア」と判断されています。知的発達には問題ないものの、読み書きに特に時間がかかります。小学6年生の時、支援センターの検査を受けて判明しましたが、そのまま地元の中学校に進み学んでいます。

「文字はみるだけで嫌だと思う。生まれたときからずっと学習障害なので、あまり文字には目がいかないようになっているというか、見ようとしない。」(三輪かのんさん)
 

iPadを使って学校の定期テストを受ける様子

学校の定期テストはiPadを使用 障害のある子に必要な配慮を
 読み書きに時間がかかるかのんさんは、学校側の配慮のもと、定期テストの際、iPadを使って試験を受けています。問題文はGoogleの読み上げソフトを使って聞き取り、解答はタイピングで入力していきます。試験時間は、他の生徒より15分多く使えるよう配慮されています。

 障害者差別解消法により、国や自治体は、障害のある子が教育を受ける上で壁に直面する場合、個人に応じた対応を工夫するよう義務付けられています。
 

「読み書き障害」の子どもの割合は40人学級に3人

発達性ディスレクシアに理解を 見過ごされる子どもたちの能力
 ディスレクシア協会名古屋の代表を務める吉田優英さんは、かのんさんを検査し発達性ディスレクシアと判断しました。

 吉田さんは、講演活動を通じディスレクシアという障害の理解を深めてもらったり、当事者や家族の相談にのったりして具体的なアドバイスをしています。吉田さんは、子どもの本来の能力が見過ごされていると指摘します。

「本来ならきちっとその子にあわせた学習方法、ICTなどの手だてがあればもっと実力を発揮できる子が、割と低空飛行で全然勉強できない子として扱われていたりする。漢字が書けなことで何も困らない。ましてや今、AIの時代で、もうちょっとたったら”え?まだ手で書いていうんですか?”という時代になると思う。」(ディスレクシア協会名古屋・吉田優英代表)

 筑波大学元教授の宇野彰さんによる調査では、日本の小学生の約7~8%、40人学級に3人の割合で読み書きに困難さを抱えるディスレクシアの子がいるといいます。(Uno et al.2009)

 ハリウッドでは、俳優のトム・クルーズさんがディスレクシアであると公表しています。
 

弱視の大学准教授が伝えるiPad活用術

「読み書き障害」と「視覚障害」共通する困難さ
 6月のある日、三輪かのんさんの姿は愛知県刈谷市の愛知教育大学にありました。
かのんさんと同じように、読み書きが困難な子どもたちと、ICT・情報通信技術を使った学習方法を共有するワークショップです。

 かのんさんと一緒にワークショップで講師を務めたのは愛知教育大学の相羽大輔准教授です。相羽准教授は、生まれつき弱視の障害があり仕事上や生活面でもICTを活用しています。

「iPadを使ってかざしてみます。そうするとちょっとゆがんでいるけど、こんな感じのデータになりました。PDFというデータを作りました。こういう機器を使って学校のプリントを読み上げたりできるようになります。」(愛知教育大学・相羽准教授)
 

ワークショップでプレゼンする様子

 読み書きが苦手なディスレクシアと、視覚障害がある人が直面する文字の読みずらさは共通の困難さがあり、学習方法を共有する動きが広がっています。

「プリントで宿題が出たときに長い文章を今まで自分で読んでいたんですけど
 読み上げできると思ったら便利でよい」(参加した男子中学生)

「こういうICT機器を使って、覚える時間を作って知識をあげていくことができるとしたら、今まで取り残されていた人達はすごく可能性を秘めているんじゃないかなと思う。」(参加した男子中学生の母親)

 相羽准教授は、ワークショップの中で、学校の授業やテストでICTを活用することは決して特別なことではなく必要な配慮だと参加者に伝えました。

「今日学んだことはいろんな工夫、人それぞれ学んだ工夫は違う。その工夫が役にたつと思うなら普段の学校現場で、小学校、中学校、先生たちに私はこれを使いたい、これがないとみんなと同じように、読めるようにならないから、書けるようにならないから、そういうことを堂々と言って良い。それを、この中で一番頑張ってくれていたのが 皆さんの前でプレゼンしてくれた、三輪かのんさんです。」(愛知教育大学・相羽准教授)
 
 

仲間にICT機器の活用方法を教える三輪かのんさん

 かのんさんは参加した仲間に、こうメッセージを送ります。

「学習障害があるから、読みとか書きが苦手で勉強ができなくて、勉強に苦手意識を持っちゃうのはすごくもったいないこと。ICT機器を使って勉強が楽しいと感じられるようになれば本当に良いと思う。」(三輪かのんさん)
 

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