『夢追人』監督と球児、最後の夏 ミラクル至学館「一緒に甲子園で校歌歌いたい」下剋上のメソッド

2023年7月6日 17:34
チームスローガンは『打倒四強』。かつて「ミラクル」連発で甲子園を経験した愛知の至学館には、チーム一丸となって甲子園に連れていきたい人がいます。

至学館 麻王義之 監督

 「4強を倒さないと甲子園に行けない」「今年こそは4強を倒して甲子園に行く」、そう決意を話すのは秋・春ともに愛知で準優勝を収めた至学館。

 秋には中京大中京を、春には愛工大名電を破るなど、私学4強に匹敵する強豪校です。

 「4強は自分たちに比べて能力の高い野球ができる選手が集まっているとは思うんですけど、みんなが同じ方向を向いて、やれることをやれば自分たちは勝負できると思っています」(至学館3年 伊藤幹太 主将)

 この夏、至学館にはチーム一丸となって甲子園に連れていきたい人がいます。
 

至学館3年 伊藤幹太 主将

「恩人というか巨匠」監督、最後の夏に
 「最後の夏これでいいのかよ!」と檄を飛ばす麻王義之監督。

 2006年の創部以来、18年指揮を執り続けてきました。

 もうすぐ60歳、定年を迎えるため、実はこの夏を最後に勇退します。

 「子どもたちと毎日一緒にいること、選手の成長を見守ることが僕の一番の生きがいだったので、やりがいのある仕事だなと思ってずっとやってきました」(至学館 麻王義之 監督)
 

勇退を決めた麻王監督

創部わずか6年で甲子園に「ミラクル至学館」の始まり
 2005年に同好会からスタートした野球部。

 当時は専用グラウンドがなく、ゴミ捨て場の前や駐車場などが主な練習場所でした。

 それでも創部わずか6年目の2011年。

 2度のサヨナラに、3度の逆転勝ちとまさに「ミラクル至学館」。

 野球グラウンドがない高校が、奇跡的な勝ち上がりを見せると、優勝候補大本命・愛工大名電との決勝で勝利を掴み、初めての甲子園へ。

 麻生監督も「子どもたちの粘りと素晴らしさに感動しています」と感極まった瞬間でした。
 

麻王式打倒4強のメソッド

麻王式!打倒4強へ4つのメソッド
 恵まれない環境でも下克上を果たした裏には、今も続く麻王監督のメソッドがありました。

 まずは『弱者の兵法』。

 「奇想天外な野球ができるのがうちのチームの特徴かもしれませんけど、何をやるかわかりませんからね。僕が一番いかんのですけど(笑)」(至学館 麻王義之 監督)

 私学4強に比べ、走攻守3拍子揃うエリートが入部するのは、まれなこと。

 だからこそ、一つの長所をとことん伸ばし、スペシャリストを育成。

 機動力や小技を駆使し、相手の意表を突く采配は、「麻王マジック」とも呼ばれています。
 

バスの中で選手と笑顔でコミュニケーション

 続いては『会話を密にする』。

 監督が何より大切にしているのが選手とのコミュニケーション。

 移動中のバスの中では絶えない笑顔。

 複雑な戦術を理解する上で、意思疎通は欠かせません。

 「試合中は厳しくなってしまうので、それ以外の楽しい時間っていうのはこういう時間かなって。大学とか就職とかみんなで話し合いながらやってきた思い出がありますね」(至学館 麻王義之 監督)
 

監督の言葉をメモ

 さらに『選手に考えさせる』

 「ヒントは与えてくださるんですけど、答えまで言わずにあとは自分たちで考えなさいという指導方針をされています」(至学館3年 伊藤幹太 主将)

 監督が発する一語一句が貴重な参考書。

 試合中、隣にはメモを取るメンバーが常にいます。

 さらに、試合後には選手だけで必ずミーティング。

 「先の塁を狙っていく姿勢は必要」など、監督のアドバイスだけでなく、選手が感じたことを共有することで、自主性も磨かれていきます。

 「自分のアイデアが生まれてくるので、面白いし、やっていて楽しいなって思います」(至学館3年 伊藤幹太 主将)
 

対戦相手へのお礼の手紙

 最後は「感謝を伝える」。

 練習試合のあと、出場メンバーが必ず行うのが、対戦相手にお礼の手紙を出すこと。

 グループごとに話し合い、感謝の気持ちや学んだことなどを手紙に記していきます。

 「文字を書くことは頭に残ります」(至学館3年 山本航 選手)
 「文を書くことはコミュニケーション能力にもつながると思いおます」(至学館3年 磯村新 選手)

 「手紙を書くことや真剣に会話をして気持ちを伝えるとか、人としてのつながりや感謝をしっかり持って成長してほしいなと」(至学館 麻王義之 監督)
 

甲子園を目指す『夢追人』

校歌『夢追人』の歌詞に寄せて「♪夢を追い続けたそしてここまで来た、でもどうしてかな熱い涙が止まらない」
 こうした日常の積み重ねで、2017年の春にも甲子園に出場。

 そして翌年には、念願の野球部専用グラウンドができました。
 
 今から12年前、甲子園初出場を決めたとき話題となったのが、POP調の校歌「夢追人」。

 まだ甲子園で勝利がなく、聖地では歌えていません。

 「大きな声で歌ってみたいけど、フレーズが高いので声が出ないと思います(笑)そういう夢もあります」(至学館 麻王義之 監督)

 「一緒に歌って最後良い経験ができたらなと思います」(至学館3年 山本航 選手)
 「監督最後の代でというので至学館の歴史を1つピリオドを打つので、OBの気持ちも背負って甲子園で初勝利をあげることが目標です。監督と一緒に2年半やってきたことを最後まで出し切る、そこに一番重点を置いて悔いのないようにやれればいいなと思っています」(至学館3年 伊藤幹太 主将)

 恩師と最高の夏を、夢追人たちの挑戦が始まります。

(7月6日15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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