【世界水泳】バタフライ相馬あい「水泳をする権利ない」どん底から這い上がったアメリカ武者修行

2023年7月21日 06:55
22年ぶりの日本開催となる世界水泳。池江璃花子選手と共にバタフライ代表の座を掴んだのが中京大学OGの相馬あい選手です。最底辺という期間を乗り越え、掴んだ代表の座。愛知で才能を開花させたスプリンターに6月、メ~テレが独占インタビューしました。

相馬あい選手(ミキハウス)

 「やばいよー!」と嬉しそうな声を上げる相馬あい選手(25)の周りにはたくさんの犬。

 おやつをあげたり、だっこをしたり、2023年6月、犬が大好きな相馬選手と一緒に愛知県岡崎市にある「IPCわんわん動物園」へ行ったときの一コマです。

 大学時代から寮の部屋に青森の実家で飼っている犬の写真を貼るほどの愛犬家で、身長168cmの相馬選手とほぼ変わらない大型犬もへっちゃら、「かわいいー」と撫でていました。

 主に母校・中京大学で練習を積む相馬選手にとって、動物との触れ合いは癒しの時間そのもの。

 初代表から5年の時を経て、再び世界への切符を掴んだ25歳に今の想いを聞きました。
 

中京大学の寮(2018年撮影)

愛知で才能を開花させたスプリンター・バタフライ 相馬あい
 2023年4月、東京アクアティクスセンターで行われた日本選手権で世界水泳の代表入りで決め、50mと100mのバタフライに出場します。

 相馬選手が初めて代表入りをしたのは、中京大学在学中の2018年。

 この年にマークした100mの自己ベスト(58秒03)をようやく超えて、代表の座を掴みました。

Q、5年ぶりに代表に戻って
「代表に入りたいという気持ちが前もあったんですけど、代表入りした今はすごく落ち着いています」

Q、5年前の代表入りとは違いますか
「5年前は日本代表としてやらなければならないというすごいプレッシャーを感じてしまって、あまりいい結果を出せなかったんですけど、今は、日本代表としてもちゃんと責任がありますし、自分のやるべきことをしっかりできているので成長したなと思います」
 

代表復帰まで5年の年月

5年ぶりの代表入り、競技人生の中で経験した「最底辺」
 中京大学卒業後はミキハウスに所属し、競技を続けていたものの、ここ数年は競技人生の中で「最底辺だった」という相馬選手。

 そんな相馬選手を復活へと導いたのは、「競泳大国アメリカへ武者修行に行く」という覚悟でした。

Q、この5年間の中で競技をやめそうになった期間について改めて教えてください
「2022年は50mで世界選手権を狙っていたんですけど、それも届かずで、東京オリンピックも行けず、会社にもサポートしてもらっている中で結果も出せないというのはすごく申し訳ない気持ちでいっぱいですし、自分には水泳をする権利がないんじゃないかなって思っていたので、本当につらかったです」

Q、不調の原因について
「本当に練習も楽しくなくて、レースも結果を出さなきゃいけない、タイムを出さなきゃいけない、そういう気持ちが多すぎて、うまくいかなかったのかなって思っています」
 

中京大学での練習(2023年6月撮影)

「中途半端な気持ちじゃ勝てない」復活へと導いた『アメリカ武者修行』
Q、最底辺の中でアメリカへの武者修行を決めた、その時の覚悟について教えてください
「アメリカに行って自分がダメならもう水泳は終わりにしようって思っていたので、2022年に3ヵ月ぐらい行っていたんですけど、アメリカってすごく強い国なので、一生懸命やっても勝てなくて、まだまだ自分はやることがたくさんあるなって思って、手ごたえを感じました」

Q、最底辺だったからこそ掴めたことはありますか奮い
「最低だったからこそ何事もチャレンジできましたし、なにより負けて悔しいっていうその気持ちが自分をもう一回奮い立たせてくれたかなと思います」

 アメリカでは大学チームの練習に参加、レースにも出場しました。

 実は、2023年も1ヵ月ほどアメリカへ武者修行に行っていたんです。

「中途半端な気持ちでも勝てなければ、本当に本気で今回行ったんですけど、やっぱり勝てなかったです(笑)またチャレンジって形で今はすごく楽しんでいます」
 

相馬あい選手(25)

Q、アメリカと日本で練習の違いはありましたか
「アメリカは練習がきつかったですけど、その中でもチームメイトが励ましてくれたりだとか、絶対にチームメイトも諦めないので、刺激を受けて頑張ることが出来ました。ウエイトの回数も多いので、体的には本当につらかったです」

Q、アメリカに行って磨かれたことはどんな部分ですか
「一番はやっぱりメンタルがすごく強くなったなって感じます。諦めない気持ちもそうですけど、試合に行くまでの気持ちの作り方とかすごく学ぶことが出来ました」

Q、テクニカルな部分ではどうですか
「今はすごく持久力がだんだんと良くなってきていて、アメリカも日本と比べたら丁寧に泳ぐなっていうのがあって、泳ぎの面でもだいぶ良くなってきていると思います」

 2022年12月には、オーストラリアで開催された世界短水路で100mの自己ベストを4年ぶりに更新。

 武者修行の成果は着実にタイムへと結びついてきました。
 

IPCわんわん動物園(愛知県岡崎市)

「自分にとって人生をかけて戦っている種目」スプリントで世界に挑み続ける
 相馬選手が全力を注いでいるのは、バタフライの中でも50mと100mのスプリントです。

Q、バタフライってどんなものですか
「自分にとって人生をかけて戦っている種目なので、バタフライは日本はあんまり100mと50mは強くないので、自分がそこで戦えるってことを頑張っていきたいなと思います」

Q、スプリント種目で戦う理由について
「スプリント種目はすごく短い時間で終わってしまうんですけど、そこにかける、たとえば50mだと25秒くらい、その25秒のために毎日こうやって練習していて、フルパワーで泳ぎ切るっていうのはすごく難しいことですけど、それに魅力を感じています」

Q、世界水泳に向けて強化している部分を教えてください
「持久力もそうですけど、スピードの面でも世界と戦っていかなければならないので、まずは最初50mはついていけると思うんですけど、そこからが課題だなと思っています。世界は後半の中でも50m~75mまでがすごく速いので、そこで離されないように頑張っていきたいなと思っています」

Q、池江璃花子選手はどんな存在ですか
「池江選手は世界で1番って言っていいほどテクニックが本当に上手なので、いつも泳ぎは研究させて頂いています。憧れでもありますし、今はライバルとして…いつも負けているんですけど(笑)ライバルは勝ったり負けたりなので、まずは切磋琢磨できる仲間として一緒に頑張っていけたらなと思っています」
 

相馬あい選手

世界水泳は「100mバタフライで決勝進出」
Q、世界水泳での目標を教えてください
「まずは100mバタフライで決勝進出っていうことを目標にやっています。決勝進出といってもベストを出さないと残れない(100mの自己ベストは57秒42)と思っているので、まずは準決勝で自己ベスト更新を頑張りたいと思います」

Q、タイムの目標はありますか
「57秒00あたりで100mバタフライは決勝ラインだと思っているので、まずはそこを目指して頑張っていきたいです。自分を超えて相手は関係ないと思っているので、自分に集中して頑張っていきたいです」

Q、メダルへの思いは?
「メダリストってかっこいいなって憧れますし、まずはその人たちと戦えるようにしたいと思います」
 

相馬あい選手

テーマは名前にかけて「気あい!」
Q、世界のスプリンターがそろう中でどうアピールしたいですか
「スプリンターは女子でも180cmぐらいあるので、私は小さい方なんですけど、小さくてもこうやってスピードが出せる・パワーが出せる、日本人なんで速いんだろうって思ってもらえるように頑張っていきたいです」

Q、世界水泳の先に見据えているものはなんですか
「自分のラストになるのかな、2024年のパリ五輪が集大成だと思っているので、自分の将来の夢が五輪の選手になるっていうことを幼稚園のときに書いたと思うので、それを叶えられるように頑張っていきたいと思います」

 笑顔で練習も試合も楽しむ相馬あい選手、名前の「あい」にかけて、今回の大きなテーマは「気合い」だといいます。

「自分の名前が『あい』って言いますけど『気あい』とかけて気合が一番大切って思っています。気合で負けたらやっぱり世界の選手と勝てないと思っていますし、本当にアメリカに行って気合で負けているなって感じたので、まずは気持ちから負けないように頑張っていきたいです」

 相馬選手は、23日の100mと28日の50mバタフライに出場します。
 

相馬あい選手

 相馬あい選手:青森県出身、ミキハウス所属、中京大学OG、2018年パンパシ水泳東京・アジア大会日本代表

(7月23日~「世界水泳福岡2023 競泳」メ~テレで放送)
 

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