メイクレッスンを受ける女性たち。視覚に障害があり、これまでメイクの経験はほとんどありませんでした。メイクレッスンのうれしい発見とは？

　名古屋市のとある会場を訪れたのは、白杖持ち、盲導犬と一緒の女性たち。

　会場にいる女性たちは、視覚に障害があります。

　「ほとんどノーメイクで人生を過ごしてきて、眉毛だけでも描きたいなって思って参加しました」（参加者）
　「メイクはほぼしていません。顔を洗うだけです」（参加者）

　化粧品大手の資生堂によるメイクアップ講座が開かれました。

　参加者たちのお悩みは…

　「昔、ファンデーションつけて、口紅つけるの忘れて、鏡の中にゾンビがいた。顔が土気色して。誰かが教えてくれればいいなと思っていた」（参加者）
　「しわやたるみは自分で触ってわかるが、しみやそばかすはわからない、隠しようがない。なんとかしてほしいと思って」

　資生堂では、視覚に障害があっても、自分で化粧できる独自の「ガイドメイク」という方法を2019年に開発。

　この日は「若々しくいたい」という参加者の声にこたえ“顔にハリを取り戻す”、特別メニューを作りました。

　サポートするのは、ノウハウを学んだ「ソーシャルエリアパートナー」。

　経験を積んだ美容部員から選ばれ、年に5日程度の研修を行います。

　現在全国に40人ほどいる資生堂の専門職です。

　この日、参加した真奈美さんと順子さん。

　2人とも、以前は目が見えましたが、病気の進行とともに、視力が低下。

　今では、真奈美さんは全盲、順子さんは光が見える程度だといいます。

　ひとりで化粧ができるようになるためにすべての工程を自分自身でおこない、ソーシャルエリアパートナーはサポート役に徹します。

　わかりやすく伝えるポイントは…

　「視覚に障害がある人が言葉で聞いてわかりやすく理解できるよう、事細かく持ち方、指の方向、手の動かし方をシナリオに起こしています」（資生堂 ソーシャルエリアパートナー 草野博子さん）

　ほかにも、場所は「ここ」などと指し示すのではなく、手や指を触って伝えます。

　美容液を塗り終わるころには、緊張がほぐれてきました。

　「すでに肌がもちっとして、もしかしたら、きれいになるかもって」（順子さん）

　伝える工夫は続きます。　

　化粧の説明でよく使われる「パール粒1個分」という言葉。

　耳で聞いても分かりづらいので、スケールを用意しました。

　ファンデーションは柔らかいパフを使うことで、手で持ちやすく、さらにムラになりにくいといいます。

　「皆さん、やはり眉は難しい。眉は『お顔の額縁』と言われる部分です」（草野さん）

　参加者が難しいと声をそろえる眉毛。

　まずは、眉頭・眉山・眉尻の位置を確認します。

　指を眉毛に当てて、ガイドしながら眉毛を足していきます。濃くなりすぎないよう、パウダーで少しずつ描き足すのがポイントです。

　最難関の眉毛をクリアし、チークや口紅を塗ってメイクは完成。

　みなさん生き生きと、晴れやかな表情になりました。

　順子さん、病気が進行する前は、おしゃれに興味があったといいます。

　「徐々に見えなくなって、もういいやって投げやりな気持ちになっていた。恥ずかしいけど、ちょっと顔を上げていられる。手を持って行ってというのを一個ずつ教わったので実践しようって思います」（順子さん）

　真奈美さんは、25歳で病気が見つかりました。

　「自分の視覚の記憶が25歳までの記憶しかない。顔も変わっているのに、それについていけなくて、服も若い時の好みで買ってしまいそうになる。周りの人に聞いて気をつけている」（真奈美さん）

　苦手意識があった化粧ですが…

　「ガイドのやり方を聞いて、意外と簡単にできるものなんだなと、アイシャドーの色をそろえて、積極的に外に出ていきたいという気持ちになりました」（真奈美さん）

　SDGsの掲げる目標「すべての人に健康と福祉を」。

　参加者たちの表情にソーシャルエリアパートナーの草野さんも確かな手ごたえを感じたようです。

　「すべての人にお化粧の力で元気になって、お化粧で健康で笑顔になってもうらうことに取り組んでいます。素敵な笑顔がたくさん見られてうれしかったです」（草野さん）

　(6月6日 15：40～放送 メ～テレ『アップ！』より)