"トラックが無人で走る"自動運転、実現へ本格始動 物流業界に迫る「2024年問題」克服めざす

2023年5月31日 10:40
 トラックドライバーの労働時間が規制され、輸送力の低下が懸念される物流業界の「2024年問題」が迫る中、無人で走る自動運転の実用化に向け、開発が進められています

ドライバー不足で運べなくなる荷物の割合(野村総合研究所の試算)

 働くクルマが勢ぞろいしたイベントでひときわ人気を集めていた、大型トラック。

 コロナ下で宅配が拡大し、需要が増え続ける物流業界ですが、今、大きな岐路に立たされています。

 「ドライバー不足で、ライフラインが止まってしまうと将来懸念されるので、ドライバー募集も少し宣伝させていただきました」(運送会社の担当者)

 「2024年問題に向けて、ドライバーにいかに負担をかけずに作業できるかという、作業環境の改善を考えてやっていきたいと考えています」(運送会社の担当者)

 物流業界が直面する「2024年問題」。

 背景にあるのは、労働環境の改善です。

 「例えば東京では1カ所の区域で20軒を回ることもある。荷物が1個でも取りに行かないといけないんです。大変ですよね。集荷は予約制になっているが、やっぱり集中すると時間が遅くなって、引っ張られて、結局、待機時間が長くなる」(食品類を運送するトラックドライバー)

 常態化しているトラックドライバーの時間外労働。

 2024年4月から上限が設けられて、改善が期待される反面、運べる荷物の量が減り、物流に大きな影響が出ると指摘されています。
 
「法改正で『いい面』と『悪い面』両方あることが大きな課題」
 「もともとドライバーの健康を意識した法改正なので、事業者としてドライバーの健康第一でしっかり取り組むのが大前提です。そのうえで納入時間など荷主様と調整するなかで、いかに時間を守った運行ができるか、いろいろなことを考えていく」(カリツー 安藤茂則 常務)

 1000人以上のドライバーを抱える「カリツー」。

 常務の安藤さんからは、こんな指摘もありました。

 「ドライバーの労働時間が短くなるので賃金に影響してくる。体に優しい時間設定という法改正なので、いい面と悪い面が両方あるので大きな課題と捉えている。時間外が減るのでドライバーさんの収入が減ると、人気のない職種になってしまうのかなと」(安藤常務)

 時間外労働の規制により、ドライバーも足りなくなると懸念されていて2025年になると、運べなくなる荷物の割合が愛知は25%、岐阜と三重では30%にのぼる、という試算もあります。

 カリツーでは、中継拠点の活用や、トラックの大型化などで輸送力の確保に努めるとした上で、新たな技術の導入に期待を寄せています。

 「結局ドライバーの労働時間が短くなるので、このままいくとドライバー不足はなかなか解消できず人不足になるので、解消するためには、ドライバーが少なくても運行でき、物が運べる自動化は非常に期待をしている技術です。自動運転はかなりハードルが高いが実用化されればぜひとも導入していきたいと思っています」(安藤 常務)
 

2024年度、新東名高速の一部区間に自動運転の専用レーンを作る計画

期待されるのが自動運転 新東名高速に自動運転専用レーン計画
 国は2024年度、新東名高速の一部区間に自動運転の専用レーンを作る計画です。

 専用レーンでは夜間に自動運転のトラックが走行し、一定の条件のもと、無人で走る自動運転「レベル4」の実施についても想定しています。

 こうした中、実際に高速道路では、実証実験が行われています。

 「『レベル4』なので、限定領域では将来的に運転手がいない状態。無人で走っていくことを想定して、実験を繰り返している。まだ高速道路は始めたばかりです」(T2 下村正樹 CEO)

 輸送の自動運転化を目指し、大手商社とAI関連企業が共同で設立した企業「T2」。

 実験ではドライバーが乗りますが、運転操作は自動で行われます。

 トラックの車体には15台のカメラと4つのセンサーが取り付けられ、車間距離などが測定できるようになっています。
 

高速道路上での自動運転の実証実験

2026年度に東京ー大阪間でトラックの自動運転開始を目指す
 「高速道路上での自動運転が始まっています。見る限りスムーズに進んでいるように思います」(記者)

 ドライバーがハンドルから手を放した状態で、スピードは加速していきます。

 自動運転のまま、速度は時速80kmに。

 「車間距離があけば80kmで走るように加速する。縮まれば安全な距離を確保するために減速していく。それはほぼできている」(T2の下村CEO)

 トラックは左側の走行車線を進み、車間距離が確保できる時は時速80kmで走行、前を走る車が近づくと、自動で減速します。

 右側の追い越し車線から別の車が、前に割り込もうとすると…みるみる速度を緩め安全を確保するようになっています。

 「T2」では、実験を通じて更なる改良を加え、2026年度には、東京と大阪の間でトラックの自動運転を始めたいとしています。

 「例えば障害物があったときの車線変更や、料金所をスムーズに通過することなどが次の課題で、安全を最優先でやっているので、技術的に残っている課題を1つ1つ安全を確保しながらクリアしていく姿勢でやっております」(下村CEO)

 (5月25日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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