テーマは忍者、保護ネコカフェが目指す取り残さない社会 働き手は障害者「チャリティーでは続かない」

2023年5月9日 17:39
 忍者がテーマのネコカフェが岐阜に誕生。ただ触れ合えるだけではなく、保護ネコたちが次の飼い主との出会いを待ち、働くスタッフにとっては支援の場でもあるんです。

忍者ねこカフェ「猫影」の保護ネコ

 肉球が描かれた提灯に、立派な門構え。

 岐阜市内の住宅街に建つ一風変わったお屋敷の正体はネコカフェです。

 素早いネコの動きから、テーマにしたのは「忍者」。

 2023年2月にオープンした「猫影」、8匹のネコが訪れた人を迎えます。

 利用客も「癒しの時間」を過ごしていました。
 

「猫影」で働く20代女性

テーマは『忍者』障がいのある人も「ネコに関われる仕事だったら…」
 運営しているのは、岐阜市で障害者の就職を支援する団体です。

 「主に精神障害や発達障害がある方が働いています。働くということが中々難しくても『ネコに関われる仕事だったら頑張れるんじゃないかな』『やってみたい』と思ってもらえるんじゃないかなと思ったのが最初のきっかけ」(サステイナブル・サポート 代表理事 後藤千絵さん)

 スタッフは障害のある20代から50代の8人。

 ネコの世話やカフェの準備などを担当します。

 20代の女性は週3日、ここで働いています。

 「社会人になってからいろいろ経験をして、人が怖いなと思ってしまうことがあって、元々動物が好きだったのでここで働いてみたいなと思いました」(20代の女性)
 

岐阜市保健所の昨年度データ

65匹が殺処分…保護ネコの現実
 このカフェにいるネコたちは、すべて保護ネコです。

 岐阜市保健所によると、2022年度に岐阜市で収容されたネコは325匹。

 このうち、65匹が殺処分になりました。

 「私たちが命を預かって責任をもって繋いでいくっていう、それってどうやったらできるのって具体的な部分が分からなかったんですね。そこで本当に素晴らしいパートナーに巡り合いました」(サステイナブル・サポート 代表理事 後藤千絵さん)
 

人と動物の共生センター 理事長 奥田順之さん

障害者就労支援×動物保護、パートナーと問題に向き合う
 分からないこともパートナーがいれば解決できる。

 障害者就労支援団体と手を取り合ったのは、同じ岐阜市内でペットのしつけや「多頭飼育」の問題などに取り組むNPO法人です。

 「カフェによって、より多くの方に保護ネコのことを知っていただくチャンスになるんじゃないかなと思いました」(人と動物の共生センター 理事長 奥田順之さん)
 

提供:人と動物の共生センター

 飼い主が高齢で亡くなってしまい、取り残されたネコなどを保護。

 市内の古民家で世話をしていく中で課題を感じていました。

 「世話をするには人手も当然必要。施設の維持もありますし、お金は当然かかると。特に人手ですね、しっかりとネコをケアをしてあげないといけないので」(人と動物の共生センター 理事長 奥田順之さん)
 

専門知識を出し合い保護ネコカフェ誕生

人手が必要な保護動物×働く場を求める障害者支援=保護ネコカフェ誕生
 『ネコに居場所を、障害のある人に働く場を』

 誰1人、そして1匹も取り残さない社会の実現へ。

 2つの団体が専門知識を出し合い、古民家を改装して保護ネコカフェが誕生しました。

 今も、ネコの体調管理や環境づくりなどで連携しています。

 「人と暮らしていく生き物ですからね。人と触れ合わないとネコが譲渡に結びつかないので」(人と動物の共生センター 理事長 奥田順之さん)

 「ここに入ってきたときはすごく怯えていたネコたちが元気よく走り回っている姿を見ると、世話を頑張ってよかったなと思います」(20代の女性)
 

オリジナルメニュー試作中(4月下旬撮影)

オリジナルメニューも猫にちなんで試作中
 ある日、カフェで行われていたのは、オリジナルメニューの試作です。

 「猫をかたどったゼリーを入れたゼリードリンクです。これからどんどん気温も上がっていくと思うので、さわやかでさっぱりしたものをお客様にお出ししたいなと思っています」(サステイナブル・サポート 代表理事 後藤千絵さん)

 5月中にもお披露目できそうとのこと。

 メニュー名は、スタッフから募集するということで20代の女性のメニュー案は『しゅわしゅわカラフル忍者ドリンク』だそうです。
 

接客の練習も始めた20代女性

「楽しいので疲れを忘れて仕事をする」カフェで見つけたやりがいと夢
 20代の女性は、人との関わりを増やそうと、接客の練習をスタート。

 話すことも怖なくなってきたと言います。

 経費を除いたカフェの売り上げは全て、スタッフの給料になります。

 「楽しいので、疲れを忘れて仕事をしてしまいます。保護動物たちのお世話をここで学んでいって、今後ペットシッターとかそういったお仕事につなげていけたらいいなと思っています」(20代の女性)
 

「猫影」から譲渡されたネコ(提供:猫影)

譲渡目標は年間50匹「家でどんな様子なのかを想像しやすい」
 そして、嬉しい出来事もありました。

 4月、カフェで、初の譲渡が成立。

 これまでに2匹のネコが新しい家族に巡り合いました。

 譲渡の目標は年間50匹で、いつでも相談を受け付けています。

 「カフェだと実際に自分が里親になってネコを飼ったとき、家でどんな様子なのかを想像しやすいんじゃないかなと。保護ネコの殺処分問題の背景も考えて、ちゃんと目標を高く持って自分たちの使命を全うしていきたいです」(サステイナブル・サポート 代表理事 後藤千絵さん)
 

人もネコもずっと幸せに

チャリティーでは続かない、持続性への挑戦
 人もネコもずっと幸せでいられるように、「猫影」の挑戦は続きます。

 「『障害者施設だから』『保護ネコだから』ということで、チャリティーの気持ちで来ていただくというのは続かないなと思ったんですね。カフェ自体に魅力を持たせていくことが持続していくためには何より大事なんじゃないかなと思っています」(サステイナブル・サポート 代表理事 後藤千絵さん)
 

もしネコを保護したら…

 「猫影」で受け入れているのは、保護団体などで病気の検査や避妊・去勢手術を行ったネコのみです。

 もしネコを保護した場合は、飼いネコの可能性もあるので警察や保健所に連絡する、地域の保護団体に相談するなどしてほしいということです。

(5月9日 15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)
 

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