アサリ激減の理由は「海がきれいになりすぎたから」窒素やリンの放流量緩和する実証実験進める 愛知県

2023年5月4日 17:22
アサリの漁獲量が全国1位の愛知県。潮干狩りも多くの人で賑わいを見せています。しかし、その漁獲量は年々減少しています。その理由は意外なものでした。

アサリの漁獲量は年々減少

愛知でアサリが激減 ベテラン漁師「去年の半分以下」
 愛知県蒲郡市では、GW中の5月4日も潮干狩りを楽しむ多くの家族連れ客らが訪れていました。

 潮干狩りと言えばアサリ。漁獲量は、愛知県が全国1位なんです。

 しかし潮干狩り客からは「毎年来ているけど年々少なくなっているような気がする」との声も。漁師歴43年のベテランに聞いても…

「今年は過去にないほど少ないですね。去年の半分以下ですね。つらいというか、死活問題ですけどね」(蒲郡漁業協同組合 酒井正一さん)

 アサリの漁獲量は実は年々減少しているといいます。愛知県では、2011年の漁獲量は、1万6703トンでしたが、2021年には、2364トンまで減少。

 そのため、潮干狩りを休業したり、開業日数を減らしたりする場所もあります。
 

愛知県のアサリ類の漁獲量 出典:海面漁業生産統計調査(農林水産省)

激減の理由は「海がきれいになりすぎ餌の植物プランクトンが減り過ぎた」
 愛知県水産試験場によると、アサリが激減した理由は、「海がきれいになりすぎた」ことだといいます。

 これまで、国や県などは、海をきれいにするため、海に流す排水の「窒素」や「リン」の量を規制してきました。

 しかし、その影響でアサリなどの餌となる植物プランクトンが減り過ぎてしまったことで、アサリの数も減ってしまっていると話します。

「三河湾に栄養素が非常に流れ込んできていたんですけども、それが近年非常に減少してきているということがわかっています。なので、餌が減ってきて、アサリが痩せてきて、アサリの活力が減ってきて、それが資源減少に影響を与えているのではないかと考えています」(愛知県水産試験場 主任研究員 日比野学さん)
 

矢作川浄化センターで実証実験を始める

下水処理場からの窒素とリンの放流量を上限まで緩和
 そこで愛知県は減ってしまったアサリを増やすためある実証実験を進めています。

 下水処理場の「矢作川浄化センター」では、実験的に「窒素」と「リン」の量を規制値の上限まで緩和し、エサとなる植物プランクトンが増えるよう放流しています。

「昔は本当に下水って言えば、浄化してきれいにして出すのが使命っていうのがありましたけど、最近は“豊かな海”っていう議論がされてますんで、そういったものに貢献できるような、ちょっとでも漁業者に、いい影響があるといいなと思っています」(愛知県下水道課長 藤村尚治さん)
 

漁場に小さな砂利を敷く 提供:愛知県水産試験場

砂利を敷き詰めることでアサリの生存率が12倍に「きれいなだけでなく豊かな海とは」
 一方、愛知県水産試験場では餌とは違うアプローチでもアサリを増やす研究を行っています。

 それは「アサリが過ごしやすい環境をつくる」ということです。

 漁場に、小さな砂利を敷き詰めることで、アサリの生存率が、最大で12倍延びることがわかってきたと話します。

「石があるとですね、海底面が安定するので、アサリが痩せていても、風や波に対してすごく安定する。アサリが無駄なエネルギーを使わずに済む」(主任研究員 日比野学 さん)

 こうした問題について、日比野さんは、私たちが、どういう海の姿を将来に残すのか考えることが重要だと話します。

「子供たちが潮干狩りで貝を採るなど、海辺に親しめるような、内湾の環境。きれいなだけの海ではなく、豊かで多様な生態系を育む海など、そういったものをしっかり考えて、一般の方にも認知していただければ」(主任研究員 日比野学 さん)

 より豊かな海にするために、関係者たちの努力が続きます。

(5月4日15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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