「子どもたちの未来をなんだと思ってる?」説明会は紛糾 学生「夢も学費も…」愛知の専門学校閉校問題

2024年5月20日 21:18
愛知県小牧市の美容専門学校が、5月末での閉校を表明した上、学費の大半が返還されない状態となっています。美容師になるという夢に向かって自分で学費を支払っていたという女性が、つらい胸のうちを語りました。
 GWが明けた5月9日。急きょ、開催された保護者説明会で、発表されたのは――

「急なお話となってしまい、大変申し訳ございませんが本校の閉校、並びに今後の手続きについて、ご説明させていただくお時間を頂戴したいと思います」(説明会の音声)

 集まった学生や保護者に配布された資料には――

「入学者数の減少や経費支出の影響によって資金繰りが悪化し6月以降の運営のめどが立たなくなりました」(保護者説明会で配布された資料より)

 5月末での閉校を表明したのは、愛知県小牧市にある「愛知中央美容専門学校」。

 学校を運営する組合に出資してきた企業2社が経営破綻し、資金繰りが悪化したため、存続が困難になったといいます。

「信じられなかった『え…うそでしょ』みたいになって。驚くことしかできなかった」(愛知中央美容専門学校 Aさん 2年生)

「年間のスケジュールを毎回もらっていたが、もらえなくて『何かあったのかな』と思っていました」(愛知中央美容専門学校 Bさん 2年生)
 

保護者説明会で配布された資料

入学金や授業料の返金を巡って説明会は紛糾
 学校側の説明によると、出資企業の破綻が明らかになったのは去年8月と9月。

 その後、別のスポンサーを探していたため学生や保護者への説明が遅れたといいますが――

「なんだと思っているの?子どもたちの未来を、去年8月の時点で倒産だったらもう今年受け入れたらだめじゃん。どうしても納得できなくて、高校を卒業して、行く道を、4月の時点で『廃校します』としてあれば最初から違う美容学校に行った」(保護者 説明会の音声より)

 さらに入学金や授業料の返金を巡って、説明会は紛糾。

保護者:返金っていくらなんですか?
学校側:おおよそ5万円ほど
保護者:なんで(全額)返せないんですか?使ったからでしょ?
 

Bさん 2年生

夢をあきらめて就職の道を考える子も
 こちらは専門学校のパンフレット。国家資格合格率100パーセント、小人数制の授業などをうたい、5月時点で26人が通い、通信制には60人が在籍しています。

「お母さんが美容師なので小さい時から背中を見てきて『美容師になりたい』という思いがずっとあってやっと入れた専門学校だった」(Aさん 2年生)

 美容師の母親にずっと憧れがあったと話すのは2年生のAさん。

 専門学校の年間授業料30万円を、今年は自分で支払ったといいます。

「バイト代で全部(支払った)。学校生活、小学校から全部合わせたうえで最後の学費だったので、自分で払おうかなって決めたらこうなっちゃってショックでした。(配布資料の)プリントを見たときに「転校」とか「閉校」という文字が見えて、そこからは何にも頭に入らなくて泣くことしかできなかったです」(Aさん 2年生)

 同じく、美容師を目指しているBさん。5万円という返金額だけでなくそもそも、閉校を伝えるのが遅すぎると困惑を隠せません。

「話が急すぎたってのがあって、心の準備もできてないし1カ月足らずで次の行くところ決めろって、投げ出されている感じがあってそれはすごく嫌だし」(Bさん 2年生)

夢をあきらめる子は?
「美容学校(への転校)をやめて、就職の道を考える子もいました」(Bさん 2年生)
 

愛知県 私学振興室 藤井徹 室長

年度途中の閉校は愛知県の記録上で前例なし
 専門学校を管轄する愛知県の私学振興室も、閉校は「寝耳に水」だったといいます。

「学校説明会があったということを保護者の方から連絡があって知りまして、当然こんな大事なことですから我々、私学振興室にも報告はしてほしかった」(愛知県 私学振興室 藤井徹 室長)

 年度途中の閉校は、県の記録上で前例がなく補助を行う制度もないそうです。

「学校運営中の年度途中の閉校は、今まで事例がないので初めてのことです。こんな事例は想定もしていないことですから、想定もしていないような形なので補助制度として確立されているものは、今はないです」(藤井徹 室長)

 1年生は入学金と授業料合わせて約100万円、2年生は年間の授業料、30万円から50万円を既に支払っています。

 学校側は6月以降、学生が別の学校に通う場合は、調整を行うとしていますが新たに入学金や授業料が発生する可能性があります。
 

愛知県大村知事の会見(20日)

愛知県や連合会でも学生の救済に向けた動き
 こうした中、大村知事は20日。

「これは大変由々しき事態だと思いますので、まずはその生徒さんの救済についてですね、私どもしっかりやれることはやっていきたい」(愛知県 大村秀章 知事)

 大村知事は、県としても救済に向けた対応を検討していくとしています。

 専門学校などが加盟する連合会は、会見を開き、学生の救済に向け受け入れ先を急ピッチで探していることを明らかにしました。

「本来は学校が責任を持って対応すべきところなんですけれども、とにかく…困った生徒の顔が頭に浮かんでですね。1人でも多く生徒さんたちが助かればいいかなと思う」(愛知県専修学校 各種学校連合会 長谷川義明 事務局長)

 20日の時点で、愛知や岐阜の専門学校など14校が学生の受け入れを表明しているということです。

 7つの学校は所得に応じた国の支援制度を活用し、授業料の減額を実施するほか、独自の補助を行う学校もあるということです。

 転校先が決まっている学生は、まだ一部にとどまっていて連合会は、今後も受け入れ先を募集していくとしています。
 

Aさん 2年生

「不安しかないです」
 閉校まであと2週間。学生たちは、複雑な思いで学校に通っています。

今も授業は続いている?
「先生たちも(転校先への)電話対応とかで、すごく忙しくて国家試験の過去問を解いたり午後は実習したりとかですね」(Aさん 2年生)

先生が教壇に立って教えてくれることは?
「ないですね」(Bさん 2年生)

「5万円しかかえってこないというのも、未だに納得できないし今まで頑張ってきた仲間と本当は一緒に卒業したかったし、国家試験まで一緒に頑張っていきたかった。今の時期って本当は就職先を探して面接も始まってっていう時期に学校を探さなきゃならないので、他の子たちとタイミングがずれてしまって就職先とかにも影響が出てくるなっていう不安しかないです」(Aさん 2年生)
 

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