水位低下に住民嘆き「見に行ったら枯れていた…」 リニア工事進む岐阜・瑞浪市の井戸やため池

2024年5月15日 19:27
リニア中央新幹線の工事が進められている岐阜県瑞浪市で、複数の井戸やため池の水位が低下していることが分かりました。JR東海の対応は? そして、開業時期に影響は?
 山あいにある小さな集落、瑞浪市大湫町。田畑が広がるのどかな町が今、“水”を巡り大きく揺れています。

 ため池に目を移すと、極端に水位が低いのがわかります。さらに、全体的に地面がひび割れてしまっています。

 井戸にも異変が起きていました。

 「すじがあるでしょ。あそこまでたまっていた。下がっているというかゼロ」(大湫町住民)

 一体、なぜ、このような事態に──

 影響しているとみられているのが、リニア中央新幹線の工事です。
 

日吉トンネル(2019年)

2018年に始まった掘削工事
 瑞浪市を横断するリニア中央新幹線の「日吉トンネル」。

 このトンネルは、2018年から掘削工事が始まりました。

 JR東海によると、去年12月と今年2月、大湫町内でのトンネル工事中に湧水を確認。そして、2月下旬、町内に設置した観測用の井戸で水が減り始めたことを確認しました。

 「4月の中旬ごろから水位が下がってきた。洗濯機を使っていたら、カラカラとおかしな音がして、見に行ったら水が出ていなくて、止めて、枯れたのだと」(大湫町の住民)

 町内の複数の井戸やため池で、水位の低下が確認されました。

 「今のところ生活に困ることはないが、これから田植えが始まる。水がたまらないと田植えができない。この水がいつ枯れるかという心配はついてまわります」(大湫町の住民)
 

大湫町 纐纈富久 区長会長

「ライフライン上、最も大切」
 JR東海は3月、地域住民に水位の低下や観測について説明しました。その時の様子について──

 「住民からは『工事を止めろ。代替の水源を確保しろ』と。1番身近な水という、ライフライン上、最も大切なところなので、関心は大きかったと思います」(大湫町 纐纈富久 区長会長)
 
 JR東海が周辺の調査を行ったところ、32カ所の水源や井戸のうち、4割以上となる14カ所で水位の低下が確認されたということです。
 
 また、雨が降っているにも関わらず2月下旬以降、観測地点では水位が下がっていて、5月上旬には最大で約40m、水位が低下しました。

 さらに、水位の低下が確認された場所のうち、町内の約35軒が使用している清水水源は、2月と3月の時点で水が枯れたといいます。
 

大湫公民館

JR東海は住民対象に説明会
 JR東海は13日、改めて住民を対象に説明会を開催しました。約40人が参加したということです。

 説明会で新たに井戸を掘るなど、代わりとなる水源の確保や、井戸水が減った家庭が上水道を井戸に引き込むためのの工事費。また、水道料金などの補償について説明しました。

 この説明会に参加した住民は──

 「工事に対して厳しい意見が出ました。工事を1回止めて振り返れと何度も言ったんだけれど、工事は続けると。下手すると、ここら辺の畑も枯れて作物ができない可能性がある」(大湫町の住民)

 一方で、JR東海の応急対策により、生活に影響がないと話す住民も──

 「JR東海と、もし枯れたらどうするかと打ち合わせしていた。対策後は上水道の水を使っているので、まったく不便はないです」(大湫町の住民)

 JR東海は、「工事と水位低下の因果関係は断定はできないものの、トンネル掘削が影響している可能性がある」としています。
 

2034年以降とされるリニアの開業時期に影響なし

工事は続ける方針
 瑞浪市と大湫町の担当者は15日午後、会議を開き、今回の問題について現状を共有。今後は、県と連携して対策を進めたいとしています。
 
 「JR東海に求めるのは、原状復帰がまず第一。とにかく、ここで生活する方に不安のない環境を戻してもらいたい」(大湫町 纐纈富久 区長会長)

 岐阜県の古田肇知事は「住民生活に直結する問題で、強い懸念を抱いている」とコメント。JR東海に対し、工事の因果関係などの原因究明や対策を求めました。

 JR東海は「早急に上水道工事を進めるとともに、引き続きトンネル掘削との関係を調査して真摯に対応してまいります」としています。

 トンネル工事現場では今も地下水が湧き出ていますが、工事は続ける方針で、リニアの開業時期に影響はないとみられます。
 

これまでに入っているニュース

もっと見る

これまでのニュースを配信中