伝統文化の「体験」と「継承」をマッチング 担い手不足を補う新たな取り組み 岐阜

2024年4月24日 11:37
少子高齢化と伝統文化の継承は、各地で問題になっています。岐阜県飛騨市で、先週開催された「古川祭」。担い手不足を補おうと、新たな取り組みを始めました。
 毎年4月19日と20日に飛騨市古川町内で行われる、古川祭。

 190年以上の歴史があるとされる気多若宮神社の例祭で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

 呼び物の「起し太鼓」で、さらし姿の男たちが荒々しくぶつかり合うのが見どころの一つです。

 しかし今、“担い手不足”に直面しています。

 「少子高齢化。若者が高校を卒業したら地元を離れる、これが一番多い。先人から受け継いできた伝統を、守っていかなければいけない。僕らの年代で絶えさせたと言われたくない」(起し太鼓主事 青龍組 総司 藤澤裕次郎さん・66歳)

 伝統文化を存続させるため、今年初めての取り組みを行いました。

  それが「ヒダスケ!」というマッチングサービス。

 飛騨市内の様々な困りごとと、それを助ける市内外のボランティアとを結びつけるサービスで、2020年に誕生しました。
 

「ヒダスケ!」古川祭の参加者募集ページ

「ヒダスケ!」で参加者を募集
 今回「古川祭」の参加者を募集すると、市内外から2日間でのべ45人が集まりました。

 「写真とかでしか見たことないが、みんなの活気を感じるような祭りだったので、見るだけじゃなく体験してみると違うかなと思い、やってみたいと思いました」(大学院生 中津川柊太郎さん・23歳)

 そう語るのは参加者の1人、静岡県出身の大学院生・中津川柊太郎さん(23)。

 今は京都の大学で、森林にまつわる研究をしています。

 さらしと地下足袋に着替えた中津川さんは、本番で「起し太鼓」の「櫓担ぎ」を担うことになりました。
 

古川祭に参加した大学院生 中津川柊太郎さん(23)

 午後8時から深夜0時すぎまで行われる「起し太鼓」は、直径80センチの大太鼓が町内を回ります。

 途中、長い棒に小さな太鼓を括り付けた「付け太鼓」が櫓に突進。

 「付け太鼓」は、大太鼓に最も近づけるのが名誉とされているため、激しくぶつかり合います。

 中津川さんの後ろから何度も押し寄せる「付け太鼓」に、押しつぶされそうになりながらも櫓を守ります。
 
 そうして日付が変わる頃、櫓は広場に戻ってきました。

 「やりきった感で充実しています。僕自身楽しめたので、地元以外の人も楽しめる祭りと感じていて。機会があればまたこういった形で手伝えて、自分も楽しめればいいと思います」(中津川さん)
 

「ヒダスケ!」で屋台曳きに参加した若者たち

“新たなかたち”で開催
 「起し太鼓」から一夜明けた2日目は、「屋台曳き揃え」が行われます。

 からくり奉納や、子ども歌舞伎などが見どころで、屋台は町内を回った後、広場に10台がそろいます。

 今回、屋台の曳き手にも「ヒダスケ!」で参加した若者の姿が――

 「出身は岡山県です。富山大学に来て参加の話をもらったので。いつも祭りは外から見ているので、参加してみてすごく楽しかった」(岡山県出身の大学生)

 なかには、古川町とは全く縁もゆかりもない人もいます。

 ただ、伝統文化を「体験したい」という若者らの思いと「継承させたい」という地元の人たちの思いが重なり合い、今年の古川祭は“新たなかたち”での開催となりました。
 

起し太鼓主事 青龍組 総司 藤澤裕次郎さん(66)

繋いでいくことが使命
 「自分は地元じゃないけど、文化を知るというのは存続のために大事なことではないかと思いました」(愛知県出身の大学生)

 「若い人たちにも祭りを知ってもらって、日本を好きになってもらうためにもこういう活動は必要だと思います」(岡山県出身の大学生)

 地元の人たちも祭りの存続に向け、今後も知恵を絞っていきたいと意気込みます。

 「まずは人手不足。これを解決するために、古川祭を存続させるためには応援してもらわないと絶対できない。(古川祭は)人生の一部かな、これがないと生きていけないくらい大事。繋いでいくことが僕の使命です」(起し太鼓主事 青龍組 総司 藤澤さん)
 

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