主人公は職場の女性ふたりと曖昧な関係を続けている男で、ヒロインはすぐにばれる嘘をついて周囲に多大な迷惑をかける女。一見すると「愚かな男女の転落サスペンス」、欠点だらけの登場人物が織りなすドロドロの恋愛劇ですが、その裏にある真のテーマは、男社会で都合よく消費されていく女性たちの姿です。
原作は2000年に発表されビッグコミックスペリオール誌(小学館)で連載された同名コミックで、監督の深田晃司さんが20歳の頃に出会い、20年近くも実写化を熱望していました。オリジナル脚本にこだわる深田監督が唯一、実写化を希望していた原作が『本気のしるし』であり、青年誌の「典型的な女性観」に対して、ある種批判的な視点を持つ原作を、ドラマならではの改変で表現しています。

20年来の映像化の夢を叶え、初めてコミック原作の映像化に挑んだドラマ『本気のしるし』。2019年10月からメ~テレ他で放送され、その反響に後押しされて2020年10月に未公開シーンを入れた“ディレクターズカット版”の劇場公開が決定。
さらに第73回カンヌ国際映画祭のOfficial Selection 2020(オフィシャルセレクション2020)作品に選出されました。コミック原作もの、加えて地方局のドラマ作品を再編集した映画であるという点で今回の選出は異例であり、公式発表された映画祭の短評でも、深田晃司監督のテレビドラマの枠から逸脱する演出力や、役者の実力の高さが特に評価されました。

カンヌ国際映画祭短評訳

深田氏が初めて頭角を現した「ある視点部門」(『淵に立つ』)以降の、監督の最高傑作のひとつであることは間違いなく、今年の作品の中で最も感動的な作品のひとつ。異常なほどのままならぬ愛や、必死にしがみついて離さない運命、はかない感情に満ちあふれたこの4時間の大作に、観る者を魅了する役者たち(日本が抱える驚くべき才能には底がないようだ)と、物語に心を動かされた映画監督が命を吹き込んでいる。カンヌは今、偉大な「Kリスト」世代(是枝氏、黒沢[清]氏、河瀨氏)の歩みに続く、濱口氏から深田氏などの新進気鋭の日本人監督の台頭を目撃している。例年よりも短い今年のオフィシャルセレクションのリストの中で、最も長い作品のひとつ。

Undoubtedly one of Fukada's best to date, after the director's first appearance at Un Certain Regard (Harmonium), and one of this year's most moving works. Four hours steeped in obsessive, thwarted love, destiny that clings on for dear life, an epic emotional fragility, all brought to life by mesmerising actors (Japan's pool of incredible talent seems endless) – and a filmmaker deeply inspired by the stories he tells. Cannes is witnessing the emergence of an up-and-coming generation of Japanese filmmakers, from Hamaguchi to Fukada, all of whom follow in the footsteps of the great 'K-list' contemporaries: Kore-eda, Kurosawa (Kiyoshi) and Kawase. One of the Official Selection's longest feature films, in a list that is shorter than usual this year.

― Festival de Cannes Further insight into the 2020 Official Selection

中小商社に勤める会社員・辻一路。社内の評判はよく、恋人関係のような女性もいるが、他人に好かれるのも他人を好きになるのも苦手で、本気の恋をしたことがない。ある日、彼はコンビニで不思議な雰囲気の女性・葉山浮世と知り合う。しかし、彼女と関わったばかりに次々とトラブルに巻き込まれていく。魅力的だが隙と弱さがあり、それゆえ周りをトラブルに巻き込んでいく浮世と、それに気づきながら、なぜか彼女を放っておけない辻。辻は裏社会の人間と関わり、仕事や人間関係を失いながらも、何とか彼女を手に入れようと、さらなる破滅の道へと歩み出す……。