竹田 基起

PROFILE

三度の飯と
「本」が好き

☆★今回の一冊 特別編★☆

「隠し事」羽田圭介

当時、史上最年少の17歳で文藝賞を受賞してデビュー後、芥川賞の候補になること二回。
今後、受賞したとしても「断ってやるのが礼儀」になるかもしれない羽田圭介さんの最新作です。
実は羽田さん、私が学生時代に所属していたサークルの一つ下の後輩なのです。
ということもあり、今回は「羽田さん」ではなく、いつもの呼び方である「羽田ちゃん」で書いていきます。

基本的に文庫しか読まない私ですが、羽田ちゃんの作品だけはハードカバーで持っています。
後輩だし応援したいという気持ちももちろんありますが、あの羽田ちゃんが今度はどんな作品を書いてきたのかが気になってしょうがないのです。

とにかく彼は、個性的な人でした。いや、誤解を恐れず書けば、変わった人でした。
元々、個性的な人間が多くいるサークルではありましたが、その中でも彼は群を抜いていたといっても過言ではありません。
例えば、年賀状を上半身裸でギターを持った写真で送ってくる(特にナルシストというわけではなく、裸になればウケると思っている節がありました)。
その他には、ウイスキーの小瓶を持ち歩いている(アルコール依存症でも、酒が強いわけでもなく、持ち歩いて飲んでいればウケると思っている節がありました)。

そんな羽田ちゃんですが、周りのことはよく見ていました。
常に小説になりそうなことを探しているようでした。
彼が書いた「ワタクシハ」という作品は、サークル活動をしている中で見つけたことを題材の一つにしている、と私は勝手に思っています。

今回ご紹介するのは、最新作の「隠し事」。
この作品は、一言で言うと、恋人の携帯電話をめぐる葛藤を描いています。
携帯電話という身近なものを中心に展開されるため、読み進めていくうちに、なんだか自分のことのような錯覚に陥ります。
携帯って、ないと困るけれど、ある意味怖いものでもありますよね。
読み終わって、その「怖さ」を再認識させられました。

今まで羽田ちゃんの作品を読んだことがある人は、羽田ワールドにもう一度入ってください。
そして読んだことがない人は、ぜひ一度入ってみてください。抜けられなくなっても責任はとれませんが…(笑)

ちなみに、この作品の帯推薦文はサークルの一つ上の先輩であるTBSアナウンサーの水野真裕美さんが書いています。
サークルの先輩と後輩のコラボ。個人的には、そういうところも嬉しかったりしました。