竹田 基起

PROFILE

三度の飯と
「本」が好き

高校球児の夏

「完敗です。悔いはないです。」

甲子園への切符をかけた高校球児の熱き戦いが、幕を閉じた。
高校生活3年間を野球に捧げ、キャプテンとしてチームを引っ張ってきた球児がいた。
享栄・岩本和磨捕手。
身長165cmと、キャッチャーとしては決して大きくはない体。
そんな岩本は、愛知でもナンバー1との呼び声高かった好投手・八木亮祐をリードし続けた。

享栄の佐藤監督は「八木が一番投げやすいキャッチャーが岩本なんです。
八木が何をしたいのか、目で会話ができるんです」と岩本を評する。
キャプテンとして、そしてチームの要・キャッチャーとしてチームを率いてきた岩本。

享栄は、西愛知大会の準々決勝・中京大中京戦 4-0で破れた。
その試合後、岩本が語った言葉が、「完敗です。悔いはないです。」だった。
話を聞きに行った私が拍子抜けしてしまうぐらいあっさりとそう答えた。
「自分たちにできることは全部やりました。相手が上でした。」
そうも話した岩本の顔はどこか晴れ晴れとしているようにも見えた。

優勝候補同士の対決となった準々決勝で、享栄に勝利を収めた中京大中京も続く準決勝では愛知啓成に敗れた。
さらに愛知啓成も決勝戦では東邦に敗北を喫した。

最後まで、どのチームが勝つのかわからないのが高校野球。
改めてそれを実感した夏になった。
激戦を制し、見事、西愛知代表として甲子園の土を踏むことになった東邦。
負けていったチームのためにも、必ずや、素晴らしい戦いを甲子園でも見せてくれると信じている。
「悔いはない」そう語った岩本のように、やり切ったと感じている球児もいるだろう。
もっとやれた、そう思っている球児も絶対にいるはず。
しかし、様々な想いを心に持って、球児たちは未来への一歩を踏み出すのである。