佐藤 裕二

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ニュースの時間

名古屋のタクシー全面禁煙へ

1月、寝ぼけ眼で朝刊を読んでいた私の目に飛び込んで来たその見出しは「名古屋のタクシー全面禁煙に」。

煙草を耳に挟んだ報道デスクが大声で指示を飛ばし、ディレクターが灰皿に吸殻の山を作っていたメ~テレもすっかり様変わり。4年ほど前から完全分煙化され、愛煙家は4畳ほどの喫煙室で小さくなっている。
禁煙が世の流れであることは言うまでもない。

そんな中での「タクシー全面禁煙へ」というこのニュース。大分県大分市や別府市では全面禁煙を実施しているが、政令指定都市では全国初の試み。中部運輸局も「大英断だ」と賞賛する。

名古屋市昭和区にある名古屋タクシー協会を訪ねた。現在、名古屋市内とその近郊を走る、協会に加盟するタクシーは個人も合わせて約8200台。5月から全面禁煙にする方針で、タクシー会社102社の大半が合意したという。ドライバーももちろん禁煙だ。

全面禁煙化を目指す最大の理由は、利用者からの苦情や要望。医師会からの要望もあった。2003年5月には公共施設での受動喫煙の防止措置を定めた健康増進法が施行された。去年8月から議論を重ねてきたという協会の永山明光専務理事は「売り上げへの影響は考えない。それよりも健康を」と意気込む。

タクシードライバーの健康管理も大きな理由の一つだ。実はタクシー業界も高齢化が進んでいる。名古屋地区のドライバーの平均年齢は56才を超え、個人タクシーだけに限れば60才を超えているという。大事な戦力の健康を、協会として守っていく構えだ。

愛煙家からは「全面禁煙にしなくても!せめて3割は喫煙車にするとか・・・」という悲痛な声も聞かれるが、永山専務理事は「喫煙車を混在させるとかえって混乱を招く」と説明する。車内でのトラブルも予想されるが、対応策を詰めていくという。

去年7月、名古屋市は路上禁煙違反者からの過料の徴収を始め、時を同じくして煙草の増税。これらをきっかけ禁煙に挑戦した人も多い。

こんなデータがある。去年、喫煙者の4人に1人が禁煙に挑戦。しかし、52%が既に失敗。
これは、外資系医療品会社ノベルティスファーマが調査したもので、さらに禁煙の方法として「気合とガマン」を挙げた人の6割近くが、既に禁煙を断念しているとそうだ。心意気だけでは禁煙の継続が難しいことが推察できるとしている。
去年4月からは、禁煙外来やニコチンパッチに保険が適用されるようになった。
煙草のパッケージを見ると「喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなる」「たばこを吸う妊婦は、吸わない妊婦に比べ早産の危険性が約3倍高くなる」といった恐ろしい数字が並ぶ。

男性陣が、名優ハンフリー・ボガートに憧れ煙草を燻らせていたのも今は昔。
もう一度先程の数字。52パーセントが既に断念。すなわち48パーセントの人は禁煙継続中。半分の人は頑張っているのだ。