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スポーツカメラマン

2007/05/12放送

今回のテーマはアスリートの瞬間を伝えるスポーツカメラマン。フォトグラフ誌や新聞を飾る数々の写真、アスリート歓喜の瞬間、表情、決定的瞬間などなど、あらゆるシーンを切り取っていく。そこには、いったいどんなドラマが隠されているのか?

我々が最もスポーツカメラマンの存在を意識するのは、スポーツ新聞ではないだろうか?出来事をよりわかりやすく伝えるために写真はとても重要なものであり、写真の大きさ、紙面のどこに写真を配置するかなど入念にチェックされる。

そしてスポーツ新聞とは一線を画しているのがスポーツ雑誌である。スポーツグラッフィック「ナンバー」は1980年の創刊以来、圧倒的なグラフィック力でスポーツ写真の魅力を世間に発信、スポーツ総合誌の中で郡を抜く発行部数を誇っている。

3月24日サッカー日本代表のテストマッチ、対ペルー戦。中村俊輔、高原直泰という海外組を召集した今年初めてとなる試合で、雑誌ナンバーに依頼された一人のカメラマンに密着取材した。サッカーをこよなく愛し、10年前スポーツライターからカメラマンに転進。現在はスペインを拠点にヨーロッパサッカーを取り続けている鈴井智彦カメラマンである。

鈴井カメラマンがサッカー1試合で撮る写真の数はおよそ150枚~300枚。その中でたった1枚でもいい写真が撮れれば充分だと言う。さらにカメラマンはピッチのどこでカメラを構えるのか、これが良い写真を撮れるかどうか大きな鍵を握るという。

日本代表の試合ともなると100台以上のカメラがいる。カメラマンにとってもまさに戦いの場なのだ。試合は2-0で日本が勝利、中村、高原、海外組の活躍で勝利した。

試合後、鈴井カメラマンは雑誌ナンバーの表紙を飾るべく写真数点を選び、すぐさまナンバー編集部へ表紙の候補となる写真数点選び送る。しかし、自分の納得のいく写真は撮れなかった。それは試合のポイントとなった中村のフリーキック。鈴井カメラマンのいた位置からは死角となっていい写真が撮れなかったのだ。いい写真が撮れるか撮れないかは運も大きく左右される。

さらに、名古屋には、こんなカメラマンがいる。Jリーグ発足当時から、名古屋グランパスを撮り続けるカメラマン渡辺光子さん。おばちゃんの愛称でグランパスの選手たちから親しまれ豊田スタジアムにはおばちゃんの撮った選手たちのとびっきりの笑顔な写真が飾られている。おばちゃんは選手に誰よりも近い存在、今おばあちゃんが使っているデジタルカメラは選手たちが感謝のしるしとしてプレゼントしたものなのだ。

試合中選手たちが見せる表情、決定的瞬間。一瞬でしか伝わらないその感情を、見ている私たちに伝えてくれる、そんな選手と我々との架け橋となっているのが、スポーツカメラマンの存在なのではないだろうか?その一瞬の姿のために努力するカメラマンは、スポーツ選手にとって無くてはならない存在、切磋琢磨することで、お互いを成長させていくのだ。