アスリートドキュメント

スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。

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中日ドラゴンズ・井端弘和選手

2009/04/04放送

~ショートへの熱き想い~

4月3日、プロ野球が開幕した。ドラゴンズは横浜ベイスターズとの開幕戦に4本のソロホームランと初の開幕投手という大役を果たした浅尾の好投で快勝。2009年の初陣を白星で飾った。
そんなチームにおいて、今年も開幕スタメンとして名を連ねた男。井端弘和、33歳。
グラウンドに立った男は「ある決意」を持ってゲームに臨んでいた。
「今年一年はショートにこだわってやってみようと思う」

去年11月に5年連続となるゴールデングラブ賞を受賞した席で井端はこんな事を話していた。
「来年からはセカンドで5年連続ゴールデングラブ賞をとれるよう頑張ります」
事実上のコンバート宣言。アライバと呼ばれ、球界きっての名ショート・井端がセカンドへ。
そして荒木がショートへ。12球団一と呼び声高い二遊間のコンバートに世間の注目は一気に集まった。
新たなる挑戦に対し、指揮官・落合は今年の沖縄キャンプで連日「オレ流ノック」を行う。
井端も期待に応えるべく、順調な調整が進められているかに思われていた。
しかし右目の不調を訴えてまさかのキャンプ途中離脱。

井端にとって野球人生の岐路ともいえるコンバートへ、取り組み始めた矢先での出来事だった。
1軍に再合流したのはそれから19日後。チームはキャンプを終え、オープン戦に突入していた。
井端は1軍に帯同しながらチーム練習のフルメニューに参加。セカンドでの守備練習を中心に急ピッチで身体を作りあげていった。その後17日に実戦復帰するなど、復活への第一歩を歩み始める。
徐々に感覚を取り戻していく井端。ところがそれとは裏腹に、セカンドの守備では苦悩しながらプレーを続けていたという。
「吹っ切れてセカンドをやっていなかった、気持ちの面で納得していない面もあったなと思う」
慣れ親しんだショートへの想いとチームの方針。井端はその狭間で葛藤していた。

そんな井端に転機が訪れる。オープン戦最後の2試合、荒木の左足負傷による休養をきっかけに井端は再びショートへと戻ってきた。その時の気持ちを「素直に嬉しかった」と語った。
迎えた4月3日の開幕ゲーム。試合直前、想いのたくさん詰まったショートのポジションに一直線で向かった井端の表情はやる気に満ち溢れていた。
そのやる気を刺激するかのように、井端に飛んだゴロは5つ、フライが1つ。
全て無難にさばき「ショート井端」の開幕戦が幕を閉じた。
井端弘和、33歳。シーズンは始まったばかり。男の戦いはこれからも続く・・・。


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