アスリートドキュメント

スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦しつづけるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。

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中日ドラゴンズ 井上一樹

2008/07/05放送

~頼れる存在~

全体練習が始まる前の人気のないナゴヤドームで黙々と打ち込みを行う選手がいた。

中日ドラゴンズ 井上一樹。井上は今年でプロ19年目を迎える。
しかし、今年も去年に続きまさかの2軍スタート。毎日が不安との戦いだった。

「今年のスタートも、また曇った感じでしたね。俺がこれから1軍で守ることはあるのかなと思ってしまう訳ですよ。でもそれはあるでしょ。と天使が囁く訳ですよ。え、でもないだろ。とデビルというか悪魔との葛藤ですよ。毎日・・・」

プロ19年目のベテランが直面した厳しい現実。
そんな中で井上は自らの手で道を切り開いた。2軍で抜群の成績を挙げ4月下旬、遂に1軍に昇格する。
当初は代打での出場ばかりだったが、5月25日のソフトバンク戦。

今シーズン初のスタメン出場を果たすと、同点で迎えた5回にピンチで最高のバックホーム。 完璧なレーザービームで勝ち越しを阻むと、6月9日の楽天戦では見事な決勝タイムリー。

開幕から2ヶ月、井上はようやく上がった今シーズン初めてのお立ち台で自らの思いを口にした。
「僕はここにいるよ。とアピールできたかなと思います。」
満員の地元ファンの前での強烈なアピール。スタメンもあれば、代打もある。 限られた出番の中で示した圧倒的な存在感。
「僕はケセラセラでしたっけ、成るようにしか成らない。という部分を持ち合わせているつもりですから。そこは大事な部分だと思います。」

井上はプロ19年間で培った迷いのないスッキリとした気持ちで結果を出し続けている。
7月4日現在、井上の打率は3割3分3厘。得点圏では3割5分3厘とチームでも1、2を争う成績を残している。しかし、それでもスタメンどころか、新戦力の小池も加わり傍から見れば激しいポジション争いの真っ只中。 だが・・・。

「マスコミとかがよくそう言いますけど、その質問が大嫌いでね。ライバルだ、競争だ。」
「この間から小池が僕の右隣を守っているじゃないですか。もうそこでチームメイトですよ。小池が必死にやる姿を見て頑張れって思うし・・・」

プロ野球選手として結果を残し存在をアピールするのは当然のこと。
しかし、周囲に煽られ自分を見失うことはない。与えられたポジションでチームに貢献できれば・・・。

「僕の中では『困った時には居るよね』という人間がチームには絶対必要だと思うから そこのポジションには自分は居なきゃいけないのかなと考えていますけどね」

レギュラーじゃなくても、チームのピンチで力に成れれば。
頼れる存在。井上一樹。プロ19年目の決意である。


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