放送内容

2012年09月01日(土)放送

中日ドラゴンズ 山井大介 ~覚醒 リリーフの系譜~

カテゴリー:野球

8月3日。巨人との首位攻防戦。
1点リードの9回裏、マウンドに上がったのは山井だった。
巨人の主軸をきっちり3人で締め、3年ぶりのセーブをマークした。
山井は今シーズン、リリーフという新しい役割を任され、
チームに欠かせない戦力となっている。
「今は結構充実しているので、中継ぎのほうに集中できて
いい感じでやっていますけど・・・。」

プロ11年目、山井大介。
今、覚醒の時を迎えた。

今年の沖縄キャンプ。山井はこの時すでに、
今シーズン任される新しい役割にむけて調整は始まっていた。
「近藤投手コーチと相談して中継ぎでも使っていくと言われたので
じゃあ今年のキャンプは中継ぎでもいけるように
なるべく毎日ピッチングをしようということで始めて・・・。」
山井の今シーズン初登板は想定どおりリリーフでの
マウンドとなった。
きっちり抑えホールドを記録。最高のスタートを切った。
ここまで44試合に登板し、4勝3敗8セーブ。
11ホールドを挙げている。
去年のMVP、セットアッパー浅尾が不在の中、増す存在感。
山井のリリーフとしての適性を見抜いたのは
入団以来、その姿を見続けてきた近藤ピッチングコーチだった。

「大介の場合はね、調整させず状況に応じてパッと使ったほうが
あの子の力を発揮できるだろうとずっと思っていたので」

「性格的なこともある程度把握しているつもりではいますので
本人が今日はここがおかしいだとか考える余地を
余裕を与えないというか、
ここでいくぞといえば、腹をくくるしかありませんからね。」

これまでの山井は完璧なピッチングをみせながら
突然コントロールを乱し自滅する脆さを併せ持っていた。
近藤コーチはそんな山井から考え込む時間を奪い
開き直らせることで、その能力を最大限まで発揮できる状況を作った。
山井本人にとっても、新しい自分に気付くきっかけとなった。

「いろいろ考えすぎてしまうところが多いかもしれないので
イケと言われた時にハイってバーっと行った方が
自分のもっている力は出しやすいのかなと思います。」

山井の今シーズンのフォアボールの割合は、去年のほぼ半分。
緊迫感のあるリリーフになったことで逆に減り、
自滅をする確率は明らかに下がっている。
山井本人もリリーフに確かな手応えをつかんでいる。
「本当に8月に入ってからぐらいですかね。
何となく自分のペースで投げられている感じはしています。
自分の中継ぎスタイルというかそういうのは少しずつ
出来上がってきたんじゃないかと思いますけど。」

山井のリリーフでの活躍にも近藤コーチに驚きはない。
「本来のその力を、十分出してくれているという風には
感じていますね。アレが本来の力なので。」
高い潜在能力のを評価しているからこその言葉。

山井にとって忘れられない試合がある。
4月7日のヤクルト戦。
同点の9回、バッターはバレンティン。
9回、ツーアウトから浴びた決勝ホームラン。
リリーフ3試合目でのマウンドだった。
「メチャクチャ悔しかったですね。」
1球が試合を決めるリリーフの怖さ。
改めて感じた1球の重み。
だからこそ今シーズン、山井はマウンドで躍動する。
リリーフというポジションで責任を果たすために。
「気持ちはやっぱり入りますよね。絶対抑えるという
強い気持ちというのは出ているかもしれないですね。
ガッツポーズを出そうと思ってやっているわけではないけど
ヨシッという気持ちはあります。」

山井はプロ生活10年で一度もシーズンを完走したことはない。
肩、ヒジ。常に故障の影が付きまとった。
そんな中、今シーズンは一度もチームを離れていない。
山井にとって大きな変化。
「痛みがあって、その痛みがピッチングに影響するということが
ないので、その点が過去10年とは大きな違いだと思います。」
3年前、山井は大きな決断を下した。
1月上旬、一人、鳥取にあるトレーニングジム
「ワールドウイング」で自主トレを始めた。
山本昌、岩瀬といったチームの先輩で怪我に強い二人が
自主トレを行う場所で、故障の影を振り払おうとした。
あれから3年の歳月が流れた。
「去年の終わりぐらいからワールドウイング、
初動負荷のトレーニング、
筋肉の使い方というのが何となく理解でき始めて・・・」
3年かけて紡いできたものが、結果として表れ始めている。
44試合はチームトップタイの登板数。
山井にとっては自己最多を更新している。
「今出来ていることを2、3年続けることがこれからの課題だと思うので、
まずは今年あと30何試合ぐらいですけど1年間しっかりやる。
それからまた来年トレーニングして続けると言う事が
自分の中での目標になると思うので・・・」

リリーフという新たなポジションで、
その能力を覚醒させた山井。
11年目、飛躍のときを迎えている。

「29はドラゴンズの速球派のピッチャーというイメージはありますね。」

鈴木孝政。
1970年代、背番号29を背負い快速球と呼ばれた
スピードボールを武器にストッパーとして活躍した。
1990年代、彗星のように現れたのが与田剛。
150キロを超える剛速球。闘志あふれるピッチングでバッターをねじ伏せた。

「29という数字は凄い気に入っているんで・・・」

そして、山井大介。
ドラゴンズの背番号29に受け継がれるもの。

「今は結構、充実しているので中継ぎのほうに集中できて
いい感じでやっていますけど・・・。」

チームは今シーズンも優勝争いを繰り広げている。
佳境を迎えた熱い戦いに山井の存在は欠かせない。
「キャンプから言っていた、1年間1軍で通してプレーするという事と、
ここまでいいポジションで投げさせてもらっているので、これを続けたい。
巨人との差はまだまだ縮められると思うので、諦めずに頑張るつもりです。」

今週水曜日。
首位巨人を相手に山井が力を見せつけた。
今シーズン、リリーフでは10試合に登板し失点は0。
巨人に圧倒的な強さを誇る。
逆転優勝へ。
覚醒を遂げた背番号29が大きな力となるはずだ。