放送内容

2012年03月24日(土)放送

中日ドラゴンズ 吉見一起 「ライン」

カテゴリー:野球

2月の沖縄キャンプ。
第1クール最終日、吉見一起がブルペンで躍動した。
真っ直ぐを中心に100球を超える投げ込み。
見守った権藤ピッチングコーチからは賞賛の言葉をもらった。
「自分に惚れるなよと言われました」
順調な滑り出し。しかし・・・。
キャンプ終盤の練習試合。
初めての実戦登板で2イニングを無失点で抑えたものの、
内容に納得がいかなかった。
「調子が悪いので投げて感覚をつかむしかない。
感覚が全然合わなかった」

ボールが狙ったところより甘く入ってしまう。

「体の使い方を変えようと思ってキャンプを迎えて
初めはハマッていたんですけど・・・。
それでちょっと分からなくなった、投げ方とか。
思い描いているボールがいかない」

3月4日。オープン戦初登板となったこの日。
吉見はバッターよりも自分と戦っていた。
打ち取った後、マウンドでしきりに自らの動きを確認する。
2イニングを無失点に抑えたものの、感覚は戻っていなかった。
「こういう軌道で行くんだというボールがあるんですよね、いつもは。
リリースポイントとキャッチャーミットを結んだ間に
ラインが見えるんですよ。
でも今は見えないので合わないんですよ。
確率的にも低いので、ずっとその葛藤ですね。」

吉見には自分が投げるボールの軌道が見えるという。
ボールが自分の手から離れ、キャッチャーミットに収まるまでの
1本のライン。そのラインを基準にボールを投げることで
精密機械と呼ばれるコントロールを実現してきた。しかし・・・。

「いつもなら今日、状態悪いなという時でもラインは見えるんですよ。
でもラインが全く見えないので・・・。」

生命線といえるコントロールに不安を抱えた吉見。
感覚を取り戻そうと修正に取り組んでいた。
ナゴヤ球場にある室内練習場のブルペン。
普段投げるマウンドより数メートル前に出て、
ピッチングする吉見の姿があった。
「例えば5メートルでストライクが入らないんだったら
10メートル離れたら絶対入らないじゃないですか。
18.44ならなおさら。
だから10メートルちょっとの距離でしっかり立って
キャッチャーに向かっていって投げる。
体の動きでしっかりラインを出す練習がアレだと思います。」
短い距離で確認しながら徐々に感覚をつかむ。
地道な練習を繰り返した。
最大の武器コントロールはこうして磨き上げられてきたのだ。

迎えたオープン戦2度目の登板。
5イニングを投げ、11安打を浴び2失点。
しかし吉見本人は手応えを口にした。

「いつもラインラインと言っているけど出つつあります」

2年ぶりの開幕投手がほぼ確実な状況の中、
手応えをつかみつつあるとはいいながらも
オープン戦の結果はもうひとつ。
それでも吉見にあわてた様子はない。何故なのか。
「開幕がすべてじゃないというのが一番の理由です。
そこに勝ったら優勝できるという保障があるんだったら
そこに100パーセント合わします。」
吉見は去年、手術の影響で出遅れたものの夏場以降、
驚異的な結果を残し逆転優勝の原動力となった。
その経験から、今年も優勝を目標に掲げるからこそ
『今はまだ100パーセントじゃなくていい』と考えている。

「もちろん開幕戦、勝ちにはこだわっていくけど・・・。
特に8月、9月というのは落とせないゲームがたくさんあるので
そこで勝てるように合わせていきたい。」

そしてオープン戦最後の登板となった楽天戦。
6イニングを投げて7安打を許したものの要所を締め失点はゼロ。
開幕前最後のマウンドできっちり結果を出した。

「自分の形が出来てきているので、その質を上げていきたい。」
「前回、前々回よりラインは見えています」

準備は整った。後は開幕を待つだけだ。