放送内容

2011年12月17日(土)放送

中日ドラゴンズ谷繁元信 ~激闘 日本シリーズの舞台裏~

カテゴリー:野球

12月13日、2011年度プロ野球最優秀バッテリー賞授賞式。その壇上に谷繁元信の姿があった。
最多勝に輝いた吉見とともに掴んだ名誉、谷繁自身、5年ぶり4度目の受賞だった。
「素直に嬉しいです。前からですね吉見といつか一緒に取ろうってずっと言っていたので今日取れて嬉しいです」
だが男にとって、手放しでは喜べないシーズンでもあった。
「やっぱ負けたっていうのは、どこか僕も含めて何か力が足りなかったから負けたんだろうし」
あと一歩が、届かなかった。中日ドラゴンズ、4年ぶり悲願の日本一。
死力をつくした自身6度目の日本シリーズ。開幕を前にスポケンだけに語っていた真実。
そこには、勝利を追い求める男の哲学が隠されていた。史上まれにみる大激戦の舞台裏―――


11月8日。日本シリーズを4日後に控えたこの日、谷繁は最もマークすべき人物を語った。
「本多君です。本多が1塁に出たらずっと気にしなければならないっていう、バッテリーとしてね。
そうやっているうち3番内川に繋げられて、4番、5番に回っていくっていう風になると、
もうこっちはお手上げ状態になると思うので。」
12球団ダントツの60盗塁を決め、2年連続盗塁王に輝いた本多。
打線では2番に座り、小技もできるいわゆる「何でも屋」である。
そんな本多を最大級にマークして挑んだ日本シリーズ、谷繁の目論みは見事に的中する。
通算で本多を1割9分2厘に抑えた。
中でも特筆すべき数字は、第1戦で対戦した4回のうち、スリーアウト目を奪ったのが何と3回。
本多で攻撃を終了させる。これこそ、まさに上位打線と中軸の繋がりを断つという谷繁の狙いだった。


さらにもう一つ。今回の日本シリーズで注目を集めたのが、180個の盗塁を記録したソフトバンク攻撃陣の足。
一方、今シーズンの谷繁の盗塁阻止率は2割7分。足と肩、勝敗を占う上で重要なポイントとなった。
そんな谷繁だが、このシリーズで至上最高峰のある駆け引きをする。
第2戦、0対0の5回、1アウトから川﨑をフォアボールで歩かせた先発の吉見。
2番本多は初球でサードフライに打ち取り、ツーアウト1塁。迎えるバッターは3番内川。
バッテリーは川﨑の足に警戒を強めていた。
内川に投じる前、けん制を挟むとさらに吉見がプレートを外し、なかなか投球を始めない。
吉見はこの時こんな事を思っていたという。
「もし走られてセーフでワンヒットで1点っていうパターンって絶対そうなっていたので、本当9対1ぐらいランナーの気持ちで投げていました」
初球はアウトコースへの真っ直ぐ。ファウルとなり、カウントは1ストライク。
すると谷繁は・・・吉見に何度もジェスチャーを送り、またしてもけん制を促す。
2球目は高めへのボール球。谷繁は中腰でミットを構え、ランナーの様子を伺う。
続く3球目はインコース。谷繁の構えたミットに吸い込まれ、
これでカウントは1ボール、2ストライク。内川を追い込んだ。

迎えた、4球目―――
ウエストし、まるで川﨑の盗塁を見抜いていたかのような封殺。
「勝負に行くんだったら吉見だったら外の変化球、フォークないしスライダーっていうところが、(川﨑は)やっぱり頭にあるだろうし。その変化球のときに走ってくるタイミングだろうなって」
川﨑のウラをかいた緻密な頭脳プレー。谷繁は盗塁を4度封じ、阻止率は3割6分3厘をマーク、レギュラーシーズン以上の数字を残した。


それでも自身3度目の日本一には届かなかった。
気持ちはすでに来シーズンに向けられている。リーグ3連覇、そして果たせなかった日本一。
さらには残り119本に迫った2000本安打。達成すれば捕手として史上3人目の偉業となる。
「フルに出たら可能な数字ですけど、自分のキャリアの中で一番打ったヒット数が126本しか打っていないのが、じゃあ来年120本打つかって言ったらねえ。そりゃ目指してやりたいとは思いますけど」
こう笑い飛ばした永遠の野球小僧、谷繁元信。
12月21日には41歳になる。果たして来年、彼のプロ24年目はどんな一年となるのか。
大ベテランの活躍に来年も注目したい。