佐藤 裕二

PROFILE

ニュースの時間

94度目の夏

まだ15歳だった。
ドキドキもしたしワクワクもした。
ユニホームの背中に大きく名前を書き、グラウンドに集まった。

あいつ、オレより上手いかな。
あいつとは気が合いそうだな。

部室の壁には「めざせ、甲子園!」

球拾いからはじまった。
最初の夏は、スタンドで声を枯らした。

自転車での帰り道は、いつものパン屋さん。
たまの休みにはカラオケで盛り上がった。

プレーをめぐりぶつかったこともある。
ポジションをめぐり、微妙になったこともある。

でも、いつも一緒だった。
いじられ役のあいつ。
物静かなあいつ。
なぜかモテるあいつ。

2年半、ともにすごして
迎えた夏。

やり残したことはないはず。
あれだけ走り、バットを振り、ボールに飛び込んだんだから。

負けるなんて想像したことない。
練習のない夏休みなんて想像したこともない。
甲子園の、あのサイレンを聞きたい。

愛知大会、いよいよ佳境。
一球が勝負を分ける戦い。
間もなく、その幕が上がる。

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