佐藤 裕二

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ニュースの時間

蒔かれた種、咲かす花

曰く「子ども達」に胴上げされる中村豪さん

先日行われた、高校野球秋の愛知県大会。
初優勝を飾った豊田大谷高校。
チームを率いるのは、名将・中村豪監督(65)です。
愛工大名電の監督時代に、工藤公康投手、山崎武士選手、イチロー選手を
育てたことは、皆さんご存知の通り。
中京大中京をやぶった準決勝の試合後、熱田球場3塁側ベンチ裏。
監督に話を聞いていた私は、一瞬耳を疑いました。
「わたしも定年だで、集大成という思いでやっとる。
それを選手達が感じてくれたんでしょう」
あまりにも唐突な勇退宣言。
「選手には内緒だよ」とは言ったものの、そこは名将。
選手達が新聞などで、そのことを知るのは百も承知。
チームに発破をかける狙いもあったのでしょう。

赤いユニホームも似合ってました

春のセンバツ出場を目指した東海大会。
2回戦で三重高校に敗れ、中村監督は静かにユニホームを脱ぎました。
愛工大名電で20年、豊田大谷で6年。
数え切れないほどの選手達を指導し、
春3回、夏2回の甲子園出場。
中村豪さんが愛知に蒔いたたくさんの野球の種に、教え子達が今、水をやっています。

写真右 白いTシャツが柴田君

愛知県大会決勝で豊田大谷に敗れたのは、奇しくも愛工大名電でした。
その一塁側応援席に、あのハニカミスマイル発見。
この夏、甲子園のマウンドに立った柴田章吾君。
この日は後輩の応援です。
少し髪が伸びた柴田君は、関東の強豪大学進学を目指しているとのこと。
さらにその先の夢を初めて聞かせてくれました。
「プロ野球選手になりたいです」

今も、国の難病指定・ベーチェット病と闘っています。
ただ、「自分の体との付き合い方が分かってきました」と
笑顔で話してくれました。

「甲子園で、同じ病気の人たちに夢と勇気を与えたい」
夏、その目標をかなえた柴田君。
今度は自分の夢に向かって突き進みます。