- 169回 -

2018年5月28日(月) 午前4:00~4:55

葬られた危機~イラク日報問題の原点~

他国の戦争で「派遣される場所は安全だ」を根拠に派遣され、現地で危険にされたのは自衛隊が最初ではない。実は民間の輸送船だった。湾岸戦争で日本政府がペルシャ湾に派遣した中東貢献船“きいすぷれんだあ”だ。
湾岸戦争でアメリカは日本に支援を求めた。当時、自衛隊を海外に派遣できる環境になく、中東貢献船の派遣は日本政府がアメリカの要請に応えるために考え出した苦肉の策だった。外務省は国会で「日本政府の指揮下で安全に航行する」と説明していたが、実態は全く異なっていた。
米軍の指示で危険な海域に入りミサイル攻撃に晒されていたのだ。船の直上でパトリオットが撃墜し、幸いにも人的な被害はなかった。政権が揺らぎかねない事件だったにもかかわらず、攻撃を受けた事実は当時、まったく報じられなかった。外務省が「機密」として隠ぺいしたからだ。情報開示請求で得た資料の中に船長の報告書がある。「ここは戦場だ」との文字もある。
中東貢献船を派遣している間に与党は法整備を進め、その後、ペルシャ湾に掃海艇を派遣。初の自衛隊海外派遣となった。以後、「派遣される地域は安全」という方便のもと、海外派遣は自衛隊の本来任務となり、集団的自衛権の行使容認へと繋がっていく。当時、派遣に奔走した元官僚は「知らせないで済むことは知らせない」と言ってのける。番組では、ミサイル攻撃が隠された背景を探り、海外派遣を支えてきた「虚偽」と「隠ぺい」の原点を指摘する。