スタッフの一言

日々スポーツ取材に励むメ~テレスポーツ部スタッフ。そんな彼らが取材先で感じたことをつづります。

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名門の力とは

2008/04/02

今回の担当者

春の高校野球大会、センバツが佳境を迎えようとしている。この地方からは、愛知の中京大中京、成章(21世紀枠)、三重の宇治山田商業の三校が出場したが、いずれも強豪校の前に惜敗した。36校中、大トリに登場した中京大中京は明徳義塾(高知)に2-3×(延長10回)。開幕試合に勝利した成章も今大会最多出場の平安(京都)に2-3。唯一3回戦に進んだ山商は、隣県の智弁和歌山に1-2(延長11回)。

成章と山商は初戦を逆に1点差でモノにしての敗退だったが、全国屈指の名門である中京大中京だけが、この春1勝を挙げる事ができなかった。三校中、唯一の私立。秋の東海大会でも常葉菊川にあと一歩に迫る準優勝。その常葉が明治神宮大会で優勝したこともあり、中京大中京はひそかに優勝を狙っていた。でも、たった1つの白星を勝ち取れなかった。明徳の主将が「自分たちの方が勝ちたい気持ちが強かった」と話したが、それは中京大中京にはあてはまらないと思う。なぜなら、彼らは甲子園出場52回目、うち優勝10回を誇る超名門校であり、「出場=上位進出」という周囲の暗黙の期待を背負って聖地で戦う。明徳のような強豪相手でも、勝利への執念が劣るはずがないのだ。

私は今回、センバツが始まる前に、初めて中京大中京のグラウンドに足を踏み入れた。私立の強豪校はほぼ間違いなく野球部専用グラウンドがある。山商は公立の中では別格の設備だが、成章でさえ学校の近くのグラウンドで練習ができる環境がある。それが、まず甲子園への必須条件であり、近道という頭があっただけに中京大中京のそれには衝撃を受けた。全国優勝10回を誇り、プロ野球選手を何人も輩出してきた古豪のグラウンドは、名古屋市の閑静な住宅街にある学校の校庭。しかも、普段は他の部活と共同で使用しているというから、一般的な公立高校と変わらない条件なのだ。むしろ、閑静な住宅街の中にある分、狭いほどである。しかも、去年の秋から体育館の改修工事があり、防護ネットが外されているためバッティング練習はろくにできなかった(中京大のグラウンドを時々借りてはいたが)。ノックをする時は下級生が体育館の前に一列に並んで、もしもの時に備えていた。こうした条件が重なり、伝統の「守り」をいっそう鍛えて臨んだ今回のセンバツだったが、守りの綻びから味わった敗戦は、何にも勝る経験になったに違いない。名門と呼ばれる学校は、こうした経験(=失敗)を他より多く積んできた過去があり、同じ失敗を繰り返さない様になる事で、また少しずつ大きくなっていく。

ディレクター:N


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