スタッフの一言/日々スポーツ取材に励むメ~テレスポーツ部スタッフそんな彼らが取材先で感じたことをつづる

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トップアスリートの力

2007/11/27
今回の担当者

あるアスリートのレースを観に行った。
本来は、スイム(水泳)、バイク(自転車)、ランの3種が組み合わされたトライアスロンを主戦場としている選手が、その日は、ラン、バイク、ランの2種を組み合わせた、本職外のデュアスロンに出場していた。

トライアスロンは、ほぼオフシーズン。本調子ではない時期で、しかも直前の合宿で足を傷めていた彼は、そのレースを調整と位置づけていた。
レース前に調子を聞くと、「いや、足はちょっと…。まあ、調整やから、適当っていうか、そこそこで…」と、関西弁で笑って答えた。スタート前もいたってマイペース。競技説明会が始まっても、ゆるゆると別の場所でレース準備。他の選手が、すでにバイクをトランジッション・エリアにセッティング完了しても、一人だけバイクセッティングを終えておらず、放送で呼び出される始末。レース直前も張り詰める空気はどこ吹く風で、一人軽くアップをこなし、スタート2秒程前に人ごみをかき分け、最前列に辿り着くほど。それくらい、暢気な空気だった。
けれども、レースが始まってしまえば、結局はトップ集団。最終ランでも、トップ争い。周回レースで最終ラップの競り合いこそ譲り2位とはなったものの、ゴール後も息を切らすことなく、悠然とダウンのラン、バイクに行ってしまった。

案の定とも言えなくはない。何せ、普段はワールド・ツアーを転戦している身。本来の力でいけば、その大会を制することは、当然というか、使命であるかもしれない。それでも、オフシーズン、足の怪我。何かがあっても、許された。けれども、‥‥である。調整であっても、譲れない。と、いうよりは、むしろ揺るぎ無い。何があっても、揺るがない。トップアスリートが、トップたる所以。――見せ付けられた気がした。

ディレクター:A

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