アスリートドキュメント
スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦しつづけるアスリートの素晴らしさ 密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します
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中日ドラゴンズ・井上一樹

2005/04/02放送

~16年目の挑戦~

新球団東北楽天ゴールデンイーグルスが歴史的初勝利を挙げるなど、2005年プロ野球は新時代を迎えた。
そんな中、プロ16年目となるシーズンに新たなる決意で臨むベテラン選手がいる。
中日ドラゴンズ 井上一樹。
今年の春のキャンプ、井上は若手主体の2軍でのスタートとなった。
マイペース調整が許された中で、井上は新たな試みをした。バッティングフォームの改造である。
去年のフォームはステップする右足を高く上げていた。
しかし今年のキャンプ、井上の右足はすり足のように前に動くだけ。
何故、フォームを改造したのか。
「やろうとしたきっかけは最大の悩みを解消することだったので・・・」
落合監督からも指摘されているという、低めのボール球についバットが出てしまうという井上のウイークポイント。
足を上げないフォームにすることで、体が突っ込む悪い癖を抑えボールを長く見ることができるという。
長く見ることができれば、低めだけでなくすべてのボールに対応がしやすくなる。
ところが、オープン戦で思うような結果が出ない。打率は2割にも届かず、試合後打ち込みをする日々が続いた。

「どうしたらいいのか」悩む井上を救ったのが落合監督だった。
井上の考えを理解していた落合監督は
「ここまでやって来た事を何故、いまさら変える必要があるのか」とアドバイス。
落合監督の後押しを受けた井上は不安を解消するためにバットを振り続けた。
そして迎えた開幕当日。ナゴヤドームに向かう井上の車の中にはバットがあった。
「開幕前には持って帰るかな。ベッドの枕元のところに立てかけておいた。
こういう感じでいけば、ベストスイングのパーセンテージは上がるかな。」
井上は確かな手ごたえをつかみ開幕を迎えた。

そして開幕戦。井上は7年連続で開幕スタメンを勝ち取った。
試合は緊迫した投手戦となった。そして迎えた、井上の第2打席。新しいフォームで結果を出すことができるのか。
ベイスターズ先発三浦の変化球を井上のバットが捉えた。低めの変化球を・・・
ライト線へのツーベースヒット。これが2005年チーム初ヒット。
そしてチームはアレックスの満塁アーチでサヨナラ勝ち。
チームにとっても井上にとっても最高のスタートとなった。

試合後帰りの車の中、井上は戦いの余韻を感じながらも早くも次を見据えていた。
「最初の一本が出たし、素直によかったと思う。いいイメージだけ。
ポジティブにアグレッシブにそれだけでいいと思う。」
16年目にして新たなことに挑戦し、まずは結果を出した。
地元ファンをバットで今シーズン最初に沸かした男、井上一樹。
そんな井上が、開幕前今シーズンの目標をこう話した。
「チームが日本一になる。それと同時に一番目立つ存在でいたいので・・・」
井上の目標に向けた戦いはまだ始まったばかりだ。
次回予告
フィギュアスケートの安藤美姫を特集。
世界選手権を終えた今、トリノへの想いを激白する。!!
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