アスリートドキュメント

スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。

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日本代表GK 楢﨑正剛

2009/06/06放送

~ゴールを守る秘めた想い~

出番は常にピンチの場面。敵にとっては、障壁。味方にとっては、守り神。
守護神と呼ばれる男――楢﨑正剛。

その楢﨑、今年のチーム始動日には、一人離れて黙々とランニングをこなしていた。去年11月、練習中に左足首を負傷、手術に踏み切った。今年の2月のキャンプ、チーム作りが進む中、未だ楢崎は一人リハビリメニューをこなす日々が続いていた。
チームとともに、実戦に臨めたのは、開幕1週間前のこと。テストマッチ、後半の45分間のみで、開幕戦に挑むことになる。

迎えた開幕戦。ピッチには、守り神がいた。
ピンチの場面を、紙一重のプレーでしのぐ。ゴールを割らせない楢﨑。守りで流れを掴んだグランパス。楢﨑が開幕白星を引き寄せた。グランパスの守護神・楢﨑、もう一つの重要なキャリア、日本代表でも圧倒的な存在を放つ。
1996年代表初選出以来、代表キャリアはすでに10年を越す。W杯に関して言えば、1998年フランスから、来年の南アフリカで実に4度目の挑戦となる。
クラブで、代表で揺るぎ無いGKのポジションを、ゴールを守り続けてきた楢﨑が、しかし、かつて、突如守るべきゴールを失う経験をしていた。

1998年10月29日。
横浜フリューゲルスと横浜マリノスの合併発覚。Jリーグ理事会での承認。それは、事実上のクラブ消滅を意味した。リーグ戦は終了し、残すは天皇杯のみ。「負ければ、その時点でクラブ消滅」。過酷な状況下、チームは勝ち進む。
そして、1999年1月1日元旦 横浜フリューゲルス 天皇杯優勝。
その栄光を最後の戦績に、同年2月 横浜フリューゲルス消滅。

失ったゴールマウス。
秘めた思いがあるからこそ、楢﨑は自らの守るべきゴールがある限り、己の力が及ぶ限り、ゴールの前に立ちはだかってきた。

そして、前人未到の100完封まで、あと一つ。


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