アスリートドキュメント

スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦しつづけるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。

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中日ドラゴンズ 朝倉健太

2008/05/10放送

~シュート~

5月6日ナゴヤドームでの広島戦。ドラゴンズは再三チャンスを作りながらもあと一本が出ず、試合は4時間35分にも及ぶ熱戦の末引き分けに終わった。

そんな中、ドラゴンズの先発ピッチャーだった朝倉健太はこの試合で今シーズン不調だった決め球の「シュート」に確かな手応えを感じていた。

「復活したというか、良くなってきたのかなというのは自分の中にはありますね」

朝倉は2年前、右バッターのインコースに食い込むシュートを新たに習得しブレイク。この年、自己最多となる13勝を挙げると、去年は12勝を挙げ2年連続2ケタ勝利。ウイニングショットのシュートを武器に内野ゴロの山を築き、大きな成長を遂げた。特に去年は1年間で許したホームランの数は9本とリーグ最少。つまり最もホームランを打たれないピッチャーとなった。

ところが今年、開幕から登板した3試合連続で打たれるなど早くも4本ものホームランを許している。しかも打たれたのは全て決め球のシュート。

「シュートを曲げたいという気持ちになってフォームに微妙なズレが出てしまった」

フォームの微妙なズレから始まった、決め球の不調。ここで朝倉は遠投、近い距離でのキャッチボールなど練習を工夫し感覚を取り戻すことに重点を置き修正を試みる。

そして向かえた4月19日の横浜戦。

「帰りのバスの中で谷繁さんから良くなってきたなと話をされたので…」

5回でマウンドを降りたものの3勝目を挙げ、シュートに復活の手応えをつかんだ。

「シュートが無かったら、僕は今1軍にはいないですね。本当に大事なボールです」

朝倉は9日現在3勝を挙げ、防御率はリーグ5位となる2.09。ウイニングショットのシュートが不調だった、にもかかわらずである。

シュートに本来の力が戻りつつある今、朝倉が最高のピッチングで勝利を手にする日は近い。実は今年朝倉はシュートとは逆の動きをする新しい変化球に挑戦するつもりだった。

「残念ながら1球も投げていません。無理です。とりあえずシュートが戻ってきてからの話ですね」

つまり朝倉にとっては『何は無くともシュート』。なのである。


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