日本を襲った超ノロノロ台風 ジェット気流に乗り損ね高気圧に挟まれる【暮らしの防災】

2024年9月15日 14:01

8月末から9月始めにかけて日本を襲った台風10号は、超ノロノロで、時折、停滞もしました。どうして「動きが遅かった」のでしょうか。台風についての基礎知識を前回に続いて説明します。

台風は上空の風の状況によって進み方が変わる

台風は風で流されているだけ

 「台風は時速○○キロの速度で東北東に進んでいます」などとよく言いますが、実は、台風は自力走行できません。そこに吹いている風に乗って流されているだけです。

 つまり台風は上空の風の状況によって進み方が変わります。台風は自分で動けない、これが4つめのポイントです。

 多くの場合、台風は近くにある太平洋高気圧から噴き出している風に乗り、太平洋高気圧の縁に沿って北上していきます。

 日本列島付近の上空にはジェット気流(偏西風=風速が早い)があり、台風がこの風に乗ると台風は方向を変え加速します。向きを変えるので、ここを「転向点」と呼びます。

 しかし、太平洋高気圧が日本列島に張り出していたり、ジェット気流の位置が日本列島から離れていたりすると、台風はジェット気流に乗れず西に向かったり、ウロウロ迷走したりします。

 

ジェット気流に乗り損ねる

2024年の台風10号はジェット気流に乗り損ねる

 今回の台風10号がこのケースで、ジェット気流が日本列島より北にあったため、台風はジェット気流に乗り損ねました。

 また、台風は両側から高気圧に挟まれて、行く手を阻まれてしまいました。このため日本のあたりに停滞したり迷走したりして、雨を降らせ続けたわけです。

 

進行方向の右側は風が強く吹く

危険半円・可航半円

 台風は進行方向の右側の風が強いという特徴があります。これは「台風自身の風」に「台風を進める風」が加わるためで、右側を「危険半円」と言います。

 反対に左側は台風の風と台風を進める風が衝突し風が弱まります。

 そこで左側を「可航半円」と呼びます。つまり左側より右側の方が被害が大きくなる恐れがあります。

 台風が直撃しない進路だと安心しがちですが、自分がいる場所が台風の右側の場合は要警戒です。これが5つめのポイント。

 

「温帯低気圧」として再発達するケースも

台風でなくなっても危険なことも

 風速が秒速約17mより弱くなると「台風」ではなくなり「熱帯低気圧」になります。しかし「風が弱くなっただけ」で、大雨を降らせる力を持っていることもあります。

 また「温帯低気圧」として再発達するケースがあります。「台風でなくなって」も気が抜けません。気をつけてください。これが最後のポイントです。

 これまでは8月〜9月が台風シーズンでしたが、最近は10月、11月になっても台風が発生します。台風が発生したらこまめに気象情報をチェックして、警戒してください。

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 被災地取材やNPO研究員の立場などから学んだ防災の知識や知恵を、コラム形式でつづります。

■五十嵐 信裕
 東京都出身。1990年メ~テレ入社、東日本大震災では被災地でANN現地デスクを経験。報道局防災担当部長や防災特番『池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ』プロデューサーなどを経て、現ニュースデスク。防災関係のNPOの特別研究員や愛知県防災減災カレッジのメディア講座講師も務め、防災・減災報道のあり方について取材と発信を続ける。日本災害情報学会・会員 防災士。

 

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