農作物の被害は年間8700万円、深刻な獣害問題 社会の課題と向き合うレストランが伝えたい思い
2023年6月13日 17:23
愛知県東郷町にある「命と向き合うジビエレストラン」。「害獣」として駆除された動物たちをジビエ料理として提供しています。社会の課題と向き合うレストランが伝えたい思いとは?
ジビエランチのフルコース 3500円
愛知県東郷町に、今年2月にオープンしたジビエレストラン「zoi」。
ジビエ料理とは、狩猟によって捕獲した野生動物の肉料理のこと。
手軽にジビエ料理を楽しめるパスタランチ。
そして、シカのもも肉を使ったローストなど本格的なジビエ料理を味わうことができるフルコースまで様々なランチを楽しむことができます。
レストランで提供されるジビエ料理の数々。
使われているのは、豊田市で「害獣」として駆除されたイノシシやシカなどの動物たちの肉なんです。
「今から実際に罠を仕掛けに行こうとしています。足助は有害駆除の対象地域なので、年中狩猟は解禁になっています」(ジビエレストランzoi 澤田和規さん)
シェフを務める澤田和規さん。
レストランのオープンに伴い、狩猟免許を取りました。
「料理人は食材がないと料理ができないので、食材のありがたみを肌で感じたい。命の大事さや生きているものを僕らは食べているというのを伝えたい」(澤田さん)
ジビエレストランzoi 澤田和規さん
人間の都合で駆除した「命」も無駄にしない
草木が生い茂る中、一部だけ土の色がむき出しになっているところが、イノシシやシカが歩いた獣道だといいます。
そこに、ワイヤの罠を仕掛けていきます。
「これをシカの足とみせてわなをかけてみる。道を獣が歩いてきて踏むと、ワイヤがかかって抜けられなくなっています」(澤田さん)
豊田市によりますと、市の獣類による農作物の被害金額は、1年間で約8700万円。
農作物を狙って人里におりてくる獣たちによる「獣害」は深刻な問題となっています。
「自社で米を育てているが、ほとんどを害獣に食べられて収穫ができなかったというのを聞くと、人間にも獣害被害はあると思うが、人の行為で殺してしまってというのは人間の勝手かなと思うので、せめておいしく食べるというのは必要なのかと思います」(澤田さん)
こうして、「害獣」として駆除されたイノシシやシカは、肉の仕入れ先で解体され、レストランでジビエ料理として出されます。
地元の農作物を獣害から守りつつ、人間の都合で駆除した「命」も無駄にしない。
食べることで「獣害」の問題に向き合う、まさに「SDGsなランチ」です。
「zoi」に通う 飯沼雅さん
「就労継続支援B型」という形態で障害がある人の就労を支援
また、レストランは、障害がある人が働く就労支援の場としても運営されています。
調理や盛り付け、仕込みなどの様々な仕事を障害などがある人が担っています。
「前菜の担当をしています。ちょっと難しいが、お客さんが喜んで食べてもらえたらうれしいなと思って作っています。彩はきれいにやろうかなと思って頑張ってやっています」(「zoi」に通う 飯沼雅さん)
レストランは「就労継続支援B型」という形態で障害がある人の就労支援をしています。
「就労継続支援B型」は、雇用契約を結ばず、働く機会の提供などを目的としています。
厚生労働省(令和3年度)によると、全国の同じB型の就労支援の場で支払われている工賃は平均で、時給233円。
障害がある人が自立して暮らしていける環境は多くないと話します。
こちらのレストランでは、工賃時給1000円を保証しています。
「世間では障害があるから、一般だからという枠で解釈されてしまうが、実際ふたを開けてみると、あまり感じないので、ちゃんとしたことに対して対価を払うべきだと思います」(澤田さん)
「獣害」や「障害者雇用」など様々な社会の課題にとことん向き合うジビエレストラン。
今後も料理を通じて、1人でも多くの人に喜んでもらえるレストランにしていきたいと話します。
「ジビエが好きな人、興味のある人はもちろん、社会問題に興味がある人にもぜひ食べてもらいたいし、すごく共感してもらえると思います」(澤田さん)
(6月13日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)