避難先で歌い続けるウクライナ人女性 家族案じながら「私の歌で笑顔になれば…」

2023年5月29日 17:23
先が見えない状態のロシアによるウクライナ侵攻。それでも、母国での夢を避難先の愛知県でも追いかけている女性がいます。日本語を勉強しながら大好きな歌にもひたむきに取り組む姿を追いました。

ウクライナ東部ドネツク出身のハンナさん(22)

 名古屋市の鶴舞公園で3つのエリアがリニューアルしたことを記念して行われたイベントで歌を披露したのは、ウクライナ東部ドネツク出身のハンナさん(22)です。

 歌うことが好きだったハンナさんは、ウクライナ東部ハルキウの芸術大学で歌を学び、学生寮で生活していましたが、ロシアによる侵攻で生活は一変しました。
 

ポーランドに避難したハンナさんの母と妹

家族と離れて避難生活
「最初の2日間は寮で過ごした。食べることやテレビを見ることとか何もしたくなかった。でもニュースから目が離せなくて、最初は夜の攻撃も怖く眠れなかった」(ハンナさん)

 ドネツクに住んでいた母と妹はポーランドへ避難しました。

 一方、ハンナさんは日本の文化に興味があったことから、日本人の支援団体の協力を得て、2022年5月に1人で愛知県に避難してきました。

 ハンナさんは避難した翌月、2022年6月から日本語学校に通っています。

 学校に通い始めて約1年が経ち、日本語での会話に慣れたか聞くと、ハンナさんは「慣れているが、まだ下手」「話し方が難しい、文法とか言葉も時々難しい」と話します。
 

レッスンに取り組むハンナさん

日本で歌手活動「明るい気持ちや音楽を」
 ハンナさんは日本でも”やりたいこと”に力を入れています。

 ウクライナでの勉強の成果を生かそうと日本で歌手活動を始めました。

 2023年3月ごろからプロのジャズピアニストによるレッスンを受け、ウクライナの出身者が集まるイベントでも歌を披露してきました。

「私は、世界に明るい気持ちや音楽をあげたい」(ハンナさん)

 熱心に取り組むハンナさんの姿に講師は――

「常に真面目で真剣に取り組んでくれています。ヨーロッパ言語というか、ヨーロッパの人の声を持っているので、そこが僕にとっても 非常に魅力に聞こえましたね」(ハンナさんに歌のレッスンをする 菅沼直さん)
 

ハンナさん「自分にできることは歌うこと」

気がかりなのは…
 一方で気がかりなのは、ウクライナに残る人たちのことです。

「祖父と祖母は勝利するまでウクライナに残ることにしたらしい。母も毎日2人を説得しようとしているが効果はあまりないようです」(ハンナさん)

 ハンナさんは、ウクライナに残る祖父と祖母と電話で連絡を取っていますが――

「住んでいるところの周りで爆発の音を聞いていると思う。でも全然そのことを話してくれない」(ハンナさん)

 ウクライナのために自分ができることは、”歌うこと”だと話します。

「ウクライナに残る方々は本当に大変だと思う。将来何が起こるか分からず毎日おびえて生きている。だからこそ助けたい。今は3年間勉強した技術を生かすしかない」(ハンナさん)
 

鶴舞公園のステージで歌うハンナさん

「早くみんなが幸せに暮らせる時が来てほしい」
 28日に鶴舞公園で行われたイベントには、多くの人が会場に足を運んでいました。

 大きな舞台は初めてだというハンナさんは「ちょっとドキドキ」と少し緊張気味です。

 ハンナさんは「私の歌を聴いて笑顔になったらうれしく思います」とあいさつし、ウクライナで人気の曲を歌いあげました。

「すごく透き通っていて素敵でした」
「情緒あふれるような感じ」
「心がこもっている、温かい感じがしました」
「言葉は分からないが 、事情を知っていると心にくるものがあります。早くみんなが幸せに暮らせる時が来てほしい」(ハンナさんの歌を聴いた人)
 

ハンナさんの舞台に間に合わなかった人には日本の歌の披露も

日本の歌も披露
 ハンナさんの舞台に間に合わなかった人にも、特別に日本の歌を披露しました。

 今回の舞台を終えてハンナさんは――

「楽しかったです。みんなに聴いてもらえてうれしくなりました。頑張っていきます」(ハンナさん)

 終わりの見えないウクライナ侵攻。ハンナさんは、日本という新たな舞台で歌い続けます。

(5月29日15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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