無人航空機で被災状況を早く正確に知る 愛知のベンチャー「テラ・ラボ」南海トラフ地震に備え試験重ねる

2025年3月11日 19:48
東日本大震災から14年が経ちました。愛知県のベンチャー企業が最新の技術を使い、災害時の情報をより早く、より正確に伝えようとしています。
 飛び立つ飛行機。愛知県春日井市に本社を置く「テラ・ラボ」が運航しています。

「航空機に写真とレーザーのシステムが搭載されていて、町や山間部のデータをいかに高速で把握するかが研究テーマになっています」(テラ・ラボ 松浦孝英 社長)

 松浦社長は、いち早く被災地の状況を空から撮影し、捜索・救助につなげるシステムづくりを目指しています。

 去年1月、最大震度7の揺れが襲った能登半島地震。地震発生翌日に輪島市の火災現場を国土地理院が撮影した写真では、 焼け野原のような被害の様子は確認できますが、拡大するとーー。

「ちょっと(画質は)粗いですけど、建物があるかないかの差が分かる感じでしょうか」(メ~テレ 上坂嵩アナウンサー)
 

テラ・ラボが撮影した、石川県輪島市の鮮明な上空写真

無人航空機でより早く情報収集
 これに対して、「テラ・ラボ」が撮影した画像はーー。

「ここまで鮮明だと、液状化や道路のひび割れも確認できますね」(上坂アナ)

「土地の液状化や道路の寸断状態を早期に把握できるのは、救助活動のスピード感に大きく影響するかと」(松浦社長)

 去年12月、県営名古屋空港にオペレーションセンターを開設し、南海トラフ地震の対策を進めています。

 現在、上空からの写真撮影の多くは有人の機体で行っていますが、「テラ・ラボ」が開発に力を入れているのが長距離無人航空機です。

「有人航空機だとどうしても機体の1台あたりの運用コストが高くなるし、パイロットの数にも限界がある。無人化すると自動化もできるので、小型の無人機を数多く飛ばせるようになれば、情報収集のスピードが圧倒的に速くなる」(松浦社長)

 長距離無人航空機は災害時、離陸した場所から何キロも離れた地域を飛び回ることができます。

 日本では無人航空機の認可に100時間以上の飛行実績が必要ですが、さまざまな規制があり、国内で飛行実績を積むのは容易ではありません。
 

タイで行われている無人航空機の試験飛行

タイで実用化に向けた試験飛行
 早期の実用化に向けて試験飛行の拠点に選んだのが、東南アジアのタイです。

「日本国内だと十分に飛行試験場の確保ができない。タイで非常にたくさんのフライト経験をしているチームたちが、我々の飛行試験に参加していただき、機体の検証を行ってもらっている」(松浦社長)

 日本とタイの技術スタッフが、あらかじめ設定したルートの試験飛行を繰り返し、データを集めます。

「1.5時間フライトして、制御面・飛行性能面で特に問題はなかったことを確認できたので、きょうの飛行試験は大成功だった。南海トラフ地震のような巨大地震が来た際、こうした垂直離発着できる無人航空機をあらかじめ各所に配置し、すぐにフライトできるようにしておくことが今の構想」(松浦社長)

 3月中には、規定の100時間に到達する見通しだということです。
 

複合的な災害情報の提供を目指す「テラ・ラボ」の松浦孝英社長

地上と上空のデータを合体、複合的な災害情報を目指す
 松浦社長は、上空からの画像だけでなく、地上のデータも合わせたより複合的な災害情報を提供できないかと考えています。

 2月に訪れたのは、名古屋市南区の星崎コミュニティセンターです。地元の住民に協力してもらい、地震で被災した場所をイメージしながら道路や住宅などをスマホで撮影しました。
 
 住民が撮影した写真と、「テラ・ラボ」が撮影した航空写真を合体させます。

「大規模な災害が発生すると、情報がゼロの場所が出てくる。皆さんから集まった情報を見るだけで『ここは支援を必要としている』と発信できる」(松浦社長)

 住民たちの画像は、被害の状況や、救助に向かうための道が確保できるのかなど、現場にいないと分からない情報が共有できると期待されます。

「電話口で言っても伝わらないことが映像・画像だと一発で理解できる。みんなの安全が確認された次の段階、自衛隊の救助がほしい段階で有効かな」(星崎学区連絡協議会 各務憲一 会長)

「空からの情報だけだと足りない。道路の情報・建物倒壊の情報がほしい、要救助者の情報がほしい、困っている人たちがどうなっているか知りたい、こうした情報が集約できれば、捜索・救助の上ですごく重要になる」(松浦社長)
 

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