津波が来たら“命山” 東日本大震災の教訓、地域の防災施設が名古屋にも 普段は子どもの遊び場

2025年3月11日 13:36
東日本大震災から14年。震災の教訓から作られた、名古屋の新たな津波避難施設を取材しました。

名古屋市港区の船頭場地区にできた“命山”

「名古屋市港区にある公園です。小高い丘のようになっていますが、人工的に作られたもの。津波から命を守るための施設です」(メ~テレ 尾形杏奈アナウンサー)

 14年前に発生した東日本大震災は、全国で防災への意識を高めるきっかけとなりました。

 東海地方で発生の可能性が高い「南海トラフ地震」では、最大震度7、20mを超える津波が想定されています。

 その津波から住民を守るために作られたのが、名古屋市内では初となる“命山”です。命山とは、津波や高潮などの浸水被害から命を守るために作られた人工の丘のこと。

 海抜ゼロメートル地帯が広がる名古屋市港区では、南海トラフ地震が発生したとき、名古屋港から押し寄せる津波のほか、川の堤防や決壊などで広く浸水することが予想されています。

 港区船頭場地区は、周辺に多くの人が避難できる高い建物が少なく、新たな対策が必要とされていました。
 

普段は休憩所、有事の際は避難場所になる「防災パーゴラ」

各地の防災施設をヒントに
「この地域は伊勢湾台風で甚大な被害を受けた。海抜ゼロメートルということで高い建物がないのが現実。名古屋市はもともと単なる公園を作る方向で進めていたが、せっかく拡張するのであれば防災という観点から“命山”がある公園を作ってほしいという要望を地元から上げた」(命山を行政に要望した 加藤豊さん)

 東日本大震災が発生した年から、加藤さんら町内会のメンバーは静岡県の命山や津波避難タワーなど、各地の防災施設を精力的に視察。その中で「公園の中に、普段から子どもたちが遊べるような命山を作ってほしい」と名古屋市に要望しました。

 これを受け、名古屋市は2021年4月から建設に着手。海抜7mの高さまで土を盛り、最大約3400人が浸水から一時避難できる命山が完成。今年3月1日、津波の緊急避難場所に指定されました。

 頂上には、普段は休憩所として使い、テントを設置すれば有事の避難場所になる「防災パーゴラ」。マンホールトイレに、かまどとしても使えるベンチなども設置されています。

「防災公園の要素がありながら、地元の人に楽しんでいただける。遊具があり、それも含めて総合公園として作っていますので皆さんに楽しんで頂ける」(加藤さん)
 

命山で園児の散歩を続ける富士文化幼稚園の岡田春子名誉園長

幼稚園の散歩が防災訓練に
 この命山が作られたのは、船頭場公園の中。すぐそばには約260人の園児が通う富士文化幼稚園があります。

 3月15日の卒園式に向けた練習をする年長組の子どもたち。昼食をとったあと、散歩に出かけました。目的地は目の前の命山です。完成したばかりですが、園児たちの散歩コースの一つになっているんです。

 津波や浸水被害が発生した場合、避難場所となるのがこの命山。普段の散歩が、自然な形での防災訓練にもなっているんです。

「工事中の3年間、毎日この命山を見てきましたし、どれだけ大切な山なのかを説明してきました。『何かあればすぐにここに』という訓練をこれからもっとしていければいいと思います」(富士文化幼稚園 岡田春子 名誉園長)
 

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