「ポケモンスリープ」監修の専門家に聞く"睡眠の新常識" 寝過ぎは時差ボケの可能性も

2023年9月14日 19:12
今回は『睡眠の悩み』に迫ります。取材したのは、ノーベル賞候補との呼び声も高い“眠りの専門家”。“超夜型”という番組スタッフの眠りを最新技術で紐解きながら、良い眠りへつながる『新常識』を教えてもらいました。

筑波大学 柳沢正史教授

 9月初旬。名古屋の街で、ある体験イベントが賑わいを見せていました。会場に所狭しと並ぶのは、様々な種類のベッド。

「こちらは眠りに合わせて動いてくれるというベッドの体験会になっております」(パラマウントベッド小栗さん)

 体験できるのは、最新技術を駆使したベッド。睡眠中の眠りの状態に合わせてマットレスが動き、体勢を自動で調整してくれるんです。

「すごい気持ちよかったです、夢のようなベッドですね」(訪れた人)
「やっぱり今の時代っていうか最先端っていうのか、自動でやって頂けるというものがあるのはいいなと思いました」(訪れた人)
 

日本人の平均睡眠時間は「7時間22分」

眠りの質を技術で改善「スリープテック」
 いま、「眠りの質」を技術で改善しようという「スリープテック」が大きな注目を集めています。

 そんな中、気になるデータも。OECDの調査によると、日本人の平均睡眠時間は「7時間22分」。先進国30カ国の中で、最も短いんです。

 街では、睡眠についてこんな悩みがーー

「不眠。寝れへん。3時間くらいは絶対寝れないです。どんだけ部屋を真っ暗にしてても寝れないです」(40代女性)
「朝までグッと寝れたらいいんですけどなんか目が覚めちゃうんで…」(50代男性)
「眠ってもあんまり体力が回復してる感じがしないっていうか疲れがとれないっていうか」(30代男性)
 

自分の睡眠時間に合わせてやらなければいけないことをやるという考え方が大事

"眠りのプロフェッショナル"を直撃
 私たちの睡眠、ホントに大丈夫なの? そんな疑問を解消するべく、向かった先はーー

「日本人ってこう何かと働いたり勉強したり、やらなきゃいけないことを優先してその残りの時間で眠るっていう考え方ですよね。それがそもそも間違ってますけどね」(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長 柳沢正史 教授)

 筑波大学の柳沢正史教授。睡眠メカニズムの解明で世界をリードし、ノーベル賞候補との呼び声も高い"眠りのプロフェッショナル"です。

「寝る間も惜しんで働くってのはナンセンスで例えば自分が7時間睡眠時間が必要だったら、残りの17時間でやらなきゃいけないことをやるっていう考え方をしないと本来はいけないと思うんですね」(柳沢正史 教授)

Q.睡眠不足の状態を続けるとどうなる?
「イライラするとか怒りやすく、怒りっぽくなる。メタボ、それから最近ではがんのリスクも上がるというふうにされていますね」(柳沢正史 教授)
 

睡眠時の脳波を測定しAIが解析

「睡眠の内容」を"見える化"
 ここで、柳沢教授が取り出したのは「睡眠の内容」を"見える化"してくれるという最新の「スリープテック」。

「睡眠の質というのは、その脳波に表れるんですよ」(柳沢正史 教授)

 教授が開発した、睡眠時の脳波を測定しAIが解析する「インソムノグラフ」。

 番組スタッフが4日間、試してみました。測定方法は簡単。額と耳の後ろに電極シールを貼り付けて眠るだけです。

Q.ズバリ、測定結果はどうですか?
「一目でまずものすごく夜型の方ですね。遅寝遅起き。それから若干睡眠はおそらく足りてないんだと思います」(柳沢正史 教授)
 

「インソムノグラフ」で測定した脳波

1日に必要な睡眠時間は6~8時間まで個人差
 グラフの黒い線は起きている状態。赤、青、水色、緑の順に、睡眠の深さを表しています。

 寝付いたのが午前4時という日もありますが、4日間の平均睡眠時間は7時間。それでも、足りないんでしょうか?

「朝起きるのが辛いことがあるんでしたっけ?」(柳沢教授)
「そうですね、朝なかなか起きれない」(番組スタッフ)
「起きれない」(柳沢教授)

 柳沢教授によると、1日に必要な睡眠時間は6~8時間まで個人差がありますが朝起きづらかったり、昼間に眠気を感じる人は睡眠が足りていない証拠だといいます。
 

浅い・深い眠りが交互に安定して現れる=質の良い睡眠の1つの条件

「質の良い睡眠」の条件とは
 さらに、グラフから見えてくることはーー

「レム睡眠、ノンレム睡眠には深さが3段階あるんですけど、深睡眠(一番深いノンレム睡眠)もまあまあ取れているしレム睡眠も十分に確保できてる。全体的には比較的キレイな睡眠ですね」(柳沢正史 教授)

 浅い眠りと深い眠りが交互に安定して現れることが、「質の良い睡眠」の1つの条件なんだそうです。
 

一番良くないのは、眠れないのにベッドの上にとどまること

眠れないのにベッドの上はNG
 ですが、気になる点もーー

「4晩目が、測定を始めてから1時間以上起きてるんですけどこれは何が起こったんでしょう?」(柳沢正史 教授)
「この日は寝つきが悪くて、旅行の本を買ってちょっと気になってなかなか眠れなかったので読んだっていうところで」(番組スタッフ)
「それが夜型の人の特徴なんですね。一番良くないのは、眠くもないし眠れないのにベッドの上にとどまって、目を閉じて悶々としてる。これが一番よくないんですよ。寝なきゃ寝なきゃと思ってベッドにいると、自分のベッドや自分の寝室が眠れない場所であるというそういうなんか結びつきが起こっちゃうんですよ。一度ベッドを出て、で、何か自分がリラックスできることをリビングに戻って1回する。眠くなったらベッドに行く」(柳沢正史 教授)
 

寝つきが悪い人はリビングの照明を暗くすることから

寝つきが悪い人はどうする?
 寝つきが悪い人に実践してほしいのは、眠る前に過ごす「リビング」の照明を暗くすることだといいます。

「恋人を連れて行きたくなるようなレストランとか欧米のホテルの部屋とかを想像して頂きたいんですけど、日暮れ時以降は強い光を目に入れないように努力する」(柳沢正史 教授)

 インソムノグラフは、東海3県の12の医療機関のほかインターネットからの申し込みも可能。測定結果もウェブで簡単に確認できます。
 

眠れない時どうしたら?

【街のギモン1】眠れない時どうしたら?
 ここからは、柳沢教授に街で聞いた睡眠の悩みや疑問を、ズバリ解消して頂きます。

■20代女性
「眠れないとスマホ見ちゃうからどんどん寝れない。眠れないときは、どうしたらいいですか?」

「SNSやなんかでインタラクティブ(双方向)な操作をし続けていると、それが脳への刺激になっていつまで経っても眠れないわけですよね。だからそういうスマホは絶対やめたほうがいいです。まぁミュージックビデオを見てるとか、映画を見てるとか、一方通行のことをスマホでやるだけだったら、それでその人がリラックスできてやがて眠くなるんだったら全然…私は構わないと思いますね。私はつまらない論文を読むと2,3分で眠くなるので、そういうものを探すのがいいと思います」(柳沢正史 教授)
 

1日何時間まで寝ていい?

【街のギモン2】1日何時間まで寝ていい?
■20代女性
「睡眠時間は長かったり短かったりがグチャグチャ。その日の用事によって、予定によって違うので。それこそ12時間以上寝るときとかもあって。1日何時間まで寝ていいんですか?」

「8時間ぐらいの睡眠が必要なのかもしれないですね。で、ある日12時間寝ているってことはそれまでに4時間以上の睡眠負債を…借金を抱えてきて日曜日か何かにギリギリそこで借金を返している状態ですね。睡眠負債を抱えているんだったら、もう眠れる日は寝てたら?ということになりますね。ただし、ただし…!」(柳沢正史 教授)
 

睡眠中央時刻(眠りについてから起きるまでの間の「真ん中」の時刻)

『睡眠中央時刻』のズレで時差ぼけ?
 柳沢教授が注意してほしいと言うのが『睡眠中央時刻』。眠りについてから起きるまでの間の「真ん中」の時刻を指すのですが。

「例えば普段午前0時から7時まで眠ってたとすると、3.5時が普段の睡眠中央時刻。ところが休日の前に2時まで起きてて、12時まで寝てるとするじゃないですか。そしたら中央時刻7時ですよね。3.5時間ずれちゃったことになるわけですよ。日本からインドぐらいまで飛んで、時差のある場所に行っちゃったことになるわけですね土日に」

Q.時差ぼけ状態になる
「これを社会的時差ボケ、ソーシャルジェットラグっていうんですけど、それは避けたほうがいい」(柳沢正史 教授)
 

筑波大学 柳沢正史教授

睡眠の大切さ「睡眠中も脳は働きつづけている」
 最後に、柳沢教授は睡眠の大切さについてこんな話をしてくれました。

「実は睡眠中も脳は働きつづけているんですよ。モードが違うというか、コンピュータに例えて言うとオフラインメンテですね。体の健康というのも全部脳の指令の元に体は働いているので、睡眠によって脳が十分にメンテナンスされることが健康につながるということですね」(柳沢正史 教授)
 

柳沢教授が監修『PokemonSleep』アプリの画面

柳沢教授が監修『PokemonSleep』の活用も
 いまではスマホで手軽に始められるスリープテックがあるんです。

 それが2023年7月に配信開始されたばかりの睡眠ゲームアプリ『PokemonSleep(ポケモンスリープ)』

 アプリを起動したスマホを枕元に置いて眠ることで睡眠時間や睡眠の深さのデータが計測され、よく眠るほどポケモンの寝顔データが集まっていくという…!

 実は、このアプリの監修は柳沢教授。楽しみながら規則正しい睡眠を習慣化してほしいとの想いで監修されたということです。

 睡眠に悩んでいる人、試してみてはいかがでしょうか。

(9月14日15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)
 

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