アーチェリー界の新星、斉藤史弥 恩師は”親友を超えた友達” 二人三脚で歩んだ最後の試合

2023年4月27日 17:25
岐阜から世界への切符を手にした、アーチェリー界の新星。二人三脚で歩んできた恩師と挑む、最後の試合を追いました。

斉藤史弥選手と本間隼人先生

 2022年、史上初となる高校3冠を達成した岐阜県羽島市出身の斉藤史弥選手。

 日本一を決める大会ではオリンピックメダリストを破って準優勝した、いま最も勢いのあるアーチェリー界のエース候補です。

 その成長を支えてきたのが、大垣西高校アーチェリー部の顧問・本間隼人先生。

「指導者なんですけど、友達の方が強い。『これやって』って言われても『嫌』とか言える。色々なことを言い合えるし、親友を超えた友達かもしれないです」(斉藤史弥 選手)
 

大垣西高校アーチェリー部の顧問・本間隼人先生

若い世代の世界大会に出場するまでに成長
 2人が出会ったのは、斉藤選手が小学5年生のとき。中学生の頃から本格的な師弟関係となりました。

 恩師の下で中学日本一に輝くと、高校は本間先生が在籍する大垣西高校に進学。

 若い世代の世界大会に出場するまでに成長しました。

Q本間先生で良かったと思う瞬間は
「なんでもおごってくれる。あとは…ないね」(斉藤選手)

 この春、高校卒業を機に、離れ離れになる2人。師弟として最後に挑むのが、世界選手権の日本代表の座をかけた大事な選考会です。
 

横浜で寮生活を始める

「ドナルド(ぬいぐるみ)はずっと愛用」
 4月1日。日本体育大学に進学した斉藤選手は、実家を離れ、横浜で寮生活を始める準備をしていました。

「マットレスとお風呂セットと、私服とか部屋着とか持ってきました。このドナルド(ぬいぐるみ)はずっと愛用してきたので、大学で使おうかなって」(斉藤選手)

Q.実家を離れる心配は
「ないですかね。遠征が続くって感じなんで」(斉藤選手)

 新生活への不安は全くないという斉藤選手。恩師と挑む最後の大一番が1週間後に迫っていました。

「五分五分の世界なので、本当に行けるかわからなくて、でも僕は頑張って(選考会を)通過したいって気持ちはありますね。とりあえず代表メンバーになって、世界選手権で戦うイメージはついています」(斉藤選手)
 

パリオリンピック出場にもつながる大会

世界選手権への切符をかけた戦い 1日目はお腹が痛くて…
 パリオリンピック出場にもつながる今大会は、3日間のポイント制。世界選手権への切符が与えられるのは、上位3人のみです。

 オリンピック2大会でメダルを獲得した古川高晴選手や、愛知県あま市出身、東京オリンピックの団体銅メダリストの武藤弘樹選手など、日本のトップ16が争います。

 並み居る強敵を抑え、初日は2位。最高のスタートをきった斉藤選手でしたが…

「昨日(1日目)の夜お腹が痛くて。大変でした」(斉藤選手)
「珍しいですよ。昨日夜、一緒にトランプしたんですけど、『お腹痛い』って急に言い始めて。『緊張かな』って言ったから、『え?人間だったんだね』って」(本間先生)

 2日目は今大会の山場の一つ。最終日に進むには、8位以内に入らなければなりません。
 プレッシャーや強風に翻弄される斉藤選手。

 それでも、先生の的確なアドバイスと持ち前の冷静さで、大きく調子を崩すことはありません。代表圏内の3位で乗り切りました。
 

斉藤史弥選手

本間先生「めっちゃツラかったです。この3年間」
 そして、運命の最終日。誰よりも早く会場入りした2人。

Q.本日の意気込みは
「頑張ります」(斎藤選手)
「勝ちますくらい言ったらいいやん」(本間先生)
「ウィナー!」(斎藤選手)
「ダメだ、最後崩した」(本間先生)

 ここからは、上位8人による負けたら終わりのトーナメント。

 1回戦の相手は、愛知県岡崎市出身の戸松大輔選手。勝たなければ、代表入りへの道は絶たれてしまいます。

 後ろでサポートする本間先生も、大きなプレッシャーと戦っていました。

 本間先生がその思いを口にしたのは、1か月前。高校の卒業式。斉藤選手との歩みを振り返る中で、本音をこぼしました。

「めっちゃツラかったです。この3年間、やっぱり成績を出さなきゃいけないとか、絶対この子をつぶしてはいけないっていう気持ちでいっぱいだったので」(本間先生)

 2人の集大成となる場でも、思いがあふれます。

 試合は同点で迎えた、最終セット。3射ずつ射ち、点数が高い方が準決勝進出です。1射目と2射目をテンポよく射ち、この時点で19点。

一方、戸松選手は3射打ち終わり、23点。最後の1射、5点以上で、斉藤選手の勝利となります。刺さったのは8点。

 極限の緊張の中で、接戦を制しました。

「最終射はエグかったです。僕の中では10点決めて最高の形で終わろうと思ったんですけど、緊張で手が震えて。また次も、緊張の中で楽しみながら頑張りたいと思います」(斎藤選手)
 

岐阜県羽島市出身の斉藤史弥選手

準決勝、東京オリンピック団体銅メダリスト
 続く準決勝。ここで勝てば世界選手権の代表入りが確定します。対するは、東京オリンピック団体銅メダリスト。

 強敵を相手に、斉藤選手は抜群の集中力を見せます。第3セットには3射すべてを10点に叩き込む好調ぶり。

 流れを掴んだ斉藤選手。見事、パリオリンピックへとつながる世界選手権の出場権を手にしました。

「本当にレベルの高い試合だったので、経験のしたことのないプレッシャーだったり、苦しい大会だったんですけど、そこでちゃんと代表の座を取れたのでよかったかなと思います」(斎藤選手)
「オリンピックに出てもらって、メダル取ってほしいですし、そこで満足してほしくないですし、ずっと向上心をもって研究していっぱい強くなった姿を見せてほしいと思います。そして、人間性の部分をずっと言ってきたから、素晴らしい選手になって、みんなが憧れるような人になってほしいなと思います」(本間先生)

 大舞台への切符を手に、恩師・本間先生のもとから旅立った斉藤選手。次は、オリンピック出場を目標に、世界で羽ばたきます。

「やっぱりまず世界選手権で日本の枠をとらなければパリ五輪につながらないので、ちゃんと世界選手権で(出場枠を)取っていきたい」(斎藤選手)

(4月27日15:40~放送メ~テレ『アップ!』じもスポ!コーナーより)
 

これまでに入っているニュース

もっと見る

これまでのニュースを配信中