不審者に狙われる子どもたち 位置情報知らせる“お守り”配布 注意すべき距離は『20m』

2023年3月4日 06:39
子どもに対しての不審な行動の認知件数が愛知県では6年間で1.5倍以上になっています。子どもの安全を守っていくためにはどうしたらいいのでしょうか。子どもを犯罪から守る『20m』とは?
 名古屋の街頭で子どもの安全で不安になったことを聞いてみました。

「目を離した5秒も10秒もない間にいなくなっちゃって、大声をあげて探し回ったが、何かが気になって行っちゃったみたいで、泣きながら戻ってきて良かったが、広い公園だったので怖かった」(母親 40代)
「登下校で子どもたちだけで歩いていた時に、工事の方がたぶん好意で、飴をあげるって言われて帰ってきたが、それを喜んで帰ってくるんですけど、親が大丈夫かなと悪い方に考えてしまう」(母親 40代)

 これは愛知県内で確認された不審者による子どもへの「声かけ」や「つきまとい」の件数。その数は増加傾向で、6年間で1.5倍以上になっています。

 その一方で、子どもが危険を感じた時に駆け込める「こども110番の家」の登録数は 年々減少し、5年前に比べ、約2000件も減っています。
 

「声掛け」「つきまとい」など愛知県内の不審者情報の推移

小学校で4ヵ月前から配られ始めた“お守り”
 愛知県一宮市の萩原小学校の学区内でも110番の家に登録する人が減っているといいます。

「お父さんお母さんも働きに出て、なかなかそれ(110番の家に登録)しても、実際にできなかったりするので自信を持って(110番の家の札を)かけるというのが難しくなってきているのかもしれない」(萩原小学校 伊藤基生校長)

 子どもの見守り強化のため、4ヵ月前から始めた対策というのが…

「こちらの学校の子どもたちに配られているこのお守りなんですが、ただのお守りではないんです」(鈴木しおりアナウンサー)

 このお守り、希望する児童全員に配られていますが、1・2年生はほとんどの子が、学校全体でも6割の児童が持っているといいます。
 

親のスマホに子ども位置情報が届く

“お守り”から、母のスマホに子どもの位置情報
 小学6年生の夏帆さん。いつものように友達と一緒に下校します。学校から自宅までは10分ちょっとの道のりですが、友達と別れ、1人になる時間もあります。

 親としては心配になる学校の帰り道ですが、お母さんのスマホには…

「今、通知が来ましたね」(鈴木アナ)

「最後の基地局を通りましたという合図ですね」(母 陽子さん)

 家で待っていたお母さんのスマホに、夏帆さんの位置情報がわかる通知が届きました。しばらくして夏帆さんが帰宅しました。

「ただいま~」(夏帆さん) 
「おかえり」(母 陽子さん)
 

希望者全員へ配られ月間495円で使用できる“お守り”

“お守り”の中には発信機 不審者に見つからないように隠して
「お守りはどこに入ってるんですか?」(鈴木アナ)

「人にもよるんですけど、(ランドセルの)中に入ってます」(夏帆さん)

「けっこうランドセルの奥に入れているんですね」(鈴木アナ)

「見つからないように」(夏帆さん)

「見つからないように?誰に?」(鈴木アナ)

「不審者に見つからないように」(夏帆さん)

 夏帆さんも持っている“お守り”の中には小さな端末が。実は、これが発信機なんです。
 

子どもの位置情報がリアルタイムで親に伝わる

母親「帰ってくる時間が分かると安心」
 一方、子どもたちが通る通学路に面した住宅やお店の中にあるのが、受信機です。

 ブルートゥースの発信機をもった子どもが学区の中に複数設置されている受信機の近くを通ると、リアルタイムで親が持つスマホに通知される仕組みになっています。

「使う前と後で気持ちが変わった面はどういうことがありますか?」(鈴木アナ)

「通学路で事件、誘拐があるとよくニュースで聞くから、帰ってくる時間が分かるとか、ちゃんと学校を出たんだなと分かると安心」(母 陽子さん)

 月々495円の料金が必要ですが、端末代は無料で、電池は6年間もつため小学校に通っている間、充電する必要がないといいます。

 この端末の導入は地元の商工会議所の提案から実現しました。

「安心して子育てができる街というのが人口を増やすための一番大事なベースになる1つ。一宮市の学校に子どもを通わせたいなと思ってもらえるようなそんな環境にしたい」(一宮商工会議所 青木俊憲さん)
 

街中に設置されている受信機

課題は受信機の数 20カ所を40カ所へ
 一方で、課題もあります。

「まだ(受信機の設置)場所の数が足りていないと感じで、近隣の町内でも導入してもらえれば、より安心を得られていくような方向になると思います」(萩原小・前PTA会長 加藤寛之さん)

 現在、受信機の設置は20カ所ですが、地域の皆さんの協力を得ながら40カ所の設置を目標としています。

 こうした子どもの見守りができる端末、 名古屋駅前のビックカメラでは、約50種類の子ども向け防犯グッズが販売されていますが、特に人気だというのが…

「こちらのスマート防犯ブザー、売れ行きに関しては非常に好調で伸びています。小学校に持ち込みができる品となっているので非常に人気になっています。GPS機能がついているため、保護者がスマートフォンを使って位置情報を確認することが可能になっています」(ビックカメラ名古屋駅西店 犬塚恒希さん)

 子どもが防犯ブザーを鳴らすと、すぐに親に通知がいく機能も人気の理由です。
 

不審者が追いかけるのを諦めるため最低でも逃げる距離も20m

不審者が子どもに狙いを定める距離は『20m』
 子どもが危険な目に合わないためには、どんな事に注意をしたらいいのでしょうか。

「不審者は一瞬のすきを狙って、子どもに接近してくるんですね」(NPO法人 体験型安全教育支援機構 清永奈穂さん)

 子どもが被害に遭う事件などを研究する体験型安全教育支援機構の清永奈穂さん。これまで愛知県警が開いた防犯教室などで講演や指導をしている防犯のスペシャリストです。

 子どもを犯罪から守るキーワードがあるといいます。それは…

「狙いを定める距離がだいたい20mくらい。もう1つは、最低逃げなきゃいけない距離が20m」(清永さん)

 20mという数字には2つの意味があります。

 1つ目は「狙いを定める距離」です。

「元犯罪者の人たちと一緒に、どのくらいの距離から狙いを定めているかというのを計測した。それをみると大体20m手前から『いい子がいるな』と」(清永さん)

 元犯罪者261人への調査結果を基に、清永さんが実証実験を行ったところ、不審者が特定の子どもに狙いを定める距離の平均が、約20mだったといいます。

「それくらいの距離から狙われているという意識をしながら歩いていけば、もしも何か接近したときに、素早く逃げたり避けたりできます」(清水さん)
 

不審者の声掛けにきっぱり断ることを子どもに教える

声掛けにきっぱり『嫌だ』と言えれば8割の不審者は諦める
「不審者に何か特徴はある?」(鈴木アナ)

「一番子どもたちに注意してほしいのは『怪しいな』という前兆的な行動がある。すごくしつこく話しかけてくるとか、道端でじっと見てくるとか、被害にあったお子さんに聞くと、見つめられて目をそらすことができなかったって言っています。見つめてきて威圧するというか、動けなくするので見つめてくる人には要注意です。(そういう人には)目をすっとそらしてさっと離れる。目をすっとそらすのがポイント」(清水さん)

 もし不審者が近づいてきて、話しかけられたらどうしたらいいのでしょうか?

「いきなり羽交い締めにして連れていくというより『ねえねえ』という感じで声をかけてくる。声かけに『嫌だ』と言うことによって8割の不審者が諦める。ちょっとどこかに行こう、とか、ちょっとだけ触らせてとか、言うような者に対して『嫌です』とか『ダメです』『行きません』と、きっぱり断るという事をぜひ教えてあげてほしいいと思います」(清永さん)

 そして、もう1つの20m、「逃げなきゃいけない距離」というのは?

「不審者が子どもを追いかけるのを諦めるために、最低逃げなきゃいけない距離というのが20m」(清永さん)

 清永さんの実証実験では、不審者が子どもを追いかけても周囲の目を気にするため20mほどで諦めたといいます。

「最低20mは走って逃げる。ランドセルが重くても、落としてでも走って逃げるというのが大事になります」(清水さん)

(3月2日15:40~放送 メ~テレ『アップ!』鈴木しおりの一歩前へ コーナーより)
 

これまでに入っているニュース

もっと見る

これまでのニュースを配信中