「努力と結果がイコールじゃないのが辛い」不妊治療の理想と現実 保険適用拡大でも自己負担増のケースも…

2023年2月13日 17:23
晩婚化などの影響で夫婦の5.5組に1組が経験したことがあるという、不妊治療。去年4月から保険適用が拡大されましたが、治療の内容によっては負担が増えてしまうなど、新たな課題も出ています。
「もともと検査を受けたことがあったので、ある程度の覚悟はしてましたけどだいぶ落ち込んでたね、すごい落ち込んでたね数日間元気なかったですね、けっこうショック」(30代夫婦 夫)

 名古屋市千種区の「まるたARTクリニック」。不妊治療が専門です。

 こちらの夫婦は検査の結果、夫の精子が少なく、自然妊娠が難しいことがわかりました。
 2人が選択したのは、体外受精のひとつ「顕微授精」。

 細いガラス針の先に精子を入れ顕微鏡で確認しながら卵子に、直接注入する方法です。

 去年12月に行った治療は、どのような結果になったのか。年明け早々にクリニックを訪れると――

「妊娠していました」(まるたARTクリニック 丸田英院長)

 結果は、妊娠。

妊活を始めて約4か月、1回目の不妊治療で赤ちゃんを授かることができました。

「実感ないね」(30代夫婦 妻)
「ホッとしたのが強いかな」(30代夫婦 夫)
 

不妊治療が原則3割の保険適用に

不妊治療も「原則3割」
 顕微授精のような「体外受精」や精子を子宮に注入する「人工授精」などについては去年4月から保険適用の対象となりました。

患者の負担は「原則、3割」となり、このクリニックでは人工授精の場合、3万円ほどだった治療がおよそ1万円に、35万円から50万円ほどだった体外受精が10万円ほどになりました。

 保険適用拡大後、新たに訪れる患者は20代から30代前半が増え以前に比べ、年齢層が下がっているといいます。

「ちょうど4月のタイミングで保険診療が始まるということで、いいきっかけだったので私たちも始めたという感じ」(30代夫婦 夫)

「やっぱり費用面って一番大きい不安。保険適用じゃない不妊治療だったら踏み込めてなかったと思います」(20代女性)
 

保険適用には条件も

上限超えると全額自己負担
 しかし、保険の適用には、様々な「条件」があります。

「6回または3回という移植の制限がありますから、そういったことを過ぎてしまった方は出てきてるんですけど、じゃあもうそこからは自己負担100%で治療しなければいけないというような状況になっています」(丸田院長)

 女性の場合、治療を開始した時点で「43歳未満」が適用条件で適用される回数も、年齢によって変わります。子ども1人につき、40歳未満であれば6回まで、40歳以上43歳未満であれば、3回までとなっています。

 およそ2年前から不妊治療をしているという30代の女性。

「 (体外受精を)1回目は保険診療が始まる前の最後の助成金を使って1回やって、それがダメで、そのあと保険診療で6回やってダメでした」(30代後半の女性)

 上限の6回を超えると、その後は全額、自己負担となります。

「保険治療内で妊娠される方もたぶんいっぱいいらっしゃると思いますし、自分もそうだったら経済的負担も少なかったと思うんですけど、ダメだったからやめようとはちょっと思わないので、次がんばろうと思います」(30代後半の女性)
 

NPO法人Fine「保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022」より

保険適用外の治療や薬を組み合わせると全額自己負担
 また、保険適用外となっている治療や薬を組み合わせると、全額自己負担となる場合も。

 以前は、回数制限はあるものの、国から1回あたり最大30万円の助成金が出ていました。

しかし保険適用の拡大に伴い助成金が廃止されたため、選んだ治療法によっては、逆に負担が増えてしまうケースもあります。

 不妊体験者を支援するNPO法人「Fine」によると「支払っている医療費は、保険適用前と比べると「減った」と感じている人が43%。「増えた」と感じている人が31%いました。

「保険診療だと(何度か採卵を続けて)貯卵っていう卵をストックすることができないので結局自費にせざるを得なくなってしまった」(30代夫婦 妻)

 卵巣機能の低下により、取り出した受精卵をいったん凍結保存してから子宮に戻すという治療を選んだ、こちらの夫婦。

結果的に、保険適用前より、高額になってしまったといいます。

「自費にしないといけないという状況で自費で今、治療してるんですけど、そうなるとなんの補助もなくてっていうところで、もう1年早く治療していたら自費になってしまっても助成金があったのに逆に本当にタイミングがまずかったのかなっていうような気さえしてしまっています」(30代夫婦 妻)
 

治療と仕事の両立が課題

問われる「支援のあり方」
 保険適用拡大をきっかけに、「支援のあり方」が再び問われている、不妊治療。

 4年以上に渡り治療を続けているという40代の女性は――

「一番つらいのは努力と結果がイコールじゃないことですね」(40代女性)

 こちらの女性は職場の理解を得て、治療を優先しているといいますが、不妊治療においては仕事との両立も課題となっています。

「仕事もプライベートも全部含めて治療は最優先になるので先のスケジュールが組めない。申し訳ない気持ちはずっとあるんですけど、調整してもらっているのですごい私はありがたい、めぐまれた環境。ただ一般的には両立は難しいんだろうなって感じています」(40代女性)
 

まるたARTクリニック 丸田英院長

「検査受けるきっかけに」
 こうした中、自治体や企業でも、理解を深めるための動きが活発化しています。

 去年、豊田通商や名古屋市などが開いたオンラインセミナー。
女性の体の問題や、キャリアとライフイベントの両立などについて紹介され企業85社が参加しました。

「キャリアデザインとか人生設計において早めに不妊だとか考えてもらうきっかけ。そういう意味では自分を知るというのが20代、30代でもあってもいいんじゃないかなと。検査を受けるきっかけを作ってもらいたいなと思ってこのセミナーを企画しました」(豊田通商ヘルスケア・メディカル事業部 千々和 慶グループリーダー)

 セミナーで不妊治療について紹介した丸田医師は早めに自分の体について知ることと社会のサポートが必要だといいます。

「仕事を休んで治療しなければいけないという方がまだ社会でいるわけですよね。治療しながらどうやって働くのか会社がそれを応援するとか我々もどういう形でそれをサポートできるかっていうことは、今後の課題になってくるんじゃないかと思います」(まるたARTクリニック丸田英院長)

 参加者からは、自分のこととして考えていきたい、という声が。

「自分のこととして捉えて考えたことがなかったので一度調べてみたいなと興味はちょっと出てきました」(セミナーに参加した女性)

「(女性が)相談しづらいところもあると思うので我々男性が理解を示して相談しやすい環境を作っていきたいなと思っています」(セミナーに参加した男性)

(2月13日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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