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独自に“レッドデータブック”作成 鳥羽の海の生き物を大調査 日本初?の貴重な発見も 三重

2022年10月2日 07:37
三重県鳥羽市で近年、海の生き物の数が減っているのではという声があがっています。そこで、専門家たちは、今の海にはどんな生き物がいるのか、本格的な調査を開始。しかし調査の過程では、あっと驚く発見も…
 三重県鳥羽市は、自然豊かな海を臨み、漁業と観光業が基幹産業となっています。

 訪れる観光客に目当てのものを聞いてみると…

「エビとか海鮮お魚とか貝とかもたくさんあるみたいな」(和歌山からの観光客)

「私もイセエビとか海鮮とか美味しいの食べたかったので」(東京からの観光客)

 しかし、近年、海の幸に異変が起きているというのです。50年以上、海に潜っている海女の出間リカさん。

「アワビにしてもサザエにしても少なくなってきていると思います」(出間さん)

 こうした声を受けて、鳥羽市は動き始めました。

「私たちって海の水面より上のこと(主に観光)をやってきたなという印象はずっとあったんですね。海の中のことを、話を始めた時にやっぱり海の環境をしっかり知らなきゃいけない」(鳥羽市観光課 高浪 七重課長)

 産業振興の前に、海の中の環境を知る必要性に駆られたといいます。

 鳥羽の海には、今、どんな生き物がいるのかを把握するため独自の絶滅危惧種のリスト「レッドデータブック」を作ることにしました。

 中心メンバーとして白羽の矢が立ったのは10年以上、鳥羽の海に潜り、生き物を見続けてきた佐藤達也さんです。

 海の生き物の知識が豊富で、漁師や水中カメラマンとしても活動し、学芸員の資格も持っています。

 市の単位で、海の生き物にフォーカスしたリストを作る、全国でも異例の挑戦。

「今まで誰も見ていなかった生き物でも『本当はこれ珍しいんだよ』とか『これ貴重なんだよ』とか。多様性って、豊かさがどんどんどんどんその証拠が集まってくる」(佐藤さん)

 貝やカニ、海藻などの専門家と連携しながらあらゆるポイントで調査は進められます。
 

漁師、水中カメラマン、学芸員の資格も持って活動する佐藤達也さん

「いるはずがない」と思っていた海藻が鳥羽市沿岸に
 実は今年6月、この調査を通じてあっと驚く発見がありました。

「“幻の海藻”のイメージがあったんですよ!」(佐藤さん)

 佐藤さんのいう、“幻の海藻”。一目見ようと海藻の専門家2人も駆け付けました。
 
 船でポイントまで案内し、潜ること約30分…

「めっちゃ喜びました。『おるわ!』みたいな。おるわ~おるな~おるな~って」(鳥羽市水産研究所 岩尾 豊紀さん)

 彼らが見た“幻の海藻”。オールのような形の葉っぱが特徴のナガシマモクです。

 「いるはずがない」と思っていた海藻を目の前に、専門家は興味津々。

 全国でも三重県志摩市にしか生えていないとされていましたが、今回の調査で、佐藤さんが鳥羽市沿岸でも生えているのを見つけました。

「今まで全然見つからなかったのが不思議」(三重大学生物資源学研究科 倉島 彰准教授)

 専門家が驚くこの発見も、レッドデータブックに記載される予定です。

 

日本で初めての可能性があるウロコムシの発見

ウロコムシの発見は日本で初めての可能性が
 この日は、名古屋大学菅島臨海実験所の自見直人助教と市内の干潟へ。

 釣りのエサにもよく使われる「ゴカイ」などの、多毛類を中心に探す目的です。そのさなか…

「このやっぱり地下茎も死んでるよな(カメラ下に) これあのアマモ(海草)の地下茎なんですけど」(佐藤さん)

「死んでますよね、枯れてますよね。かろうじてこれ生きているけど。これもう全部だから、これ多分食べられた跡ですね。アイゴとかに。」

 「海草が減る」という環境の変化も、実際に確認しました。

 水につかって調査すること2時間以上。ポイントを変えようとしたその時です。

 同行していた自見助教が、多毛類の「ウロコムシ」が寄生したままのヒトデを、見つけました。

 なんと、このウロコムシの発見は日本で初めての可能性があるというのです。

 7月には、学生たちと共に、離島・菅島の沖合へ。

 オリジナルの底引き網、いわゆる「ドレッジ」を使って水深23メートルの海底の土砂を引きあげました。

 一粒一粒じっくりと精査する佐藤さん。

「出てきた。この貝、これは確実にRDB(レッドデータブック)の対象種。絶滅危惧種」(佐藤さん)

Q.これはなんですか?

「たぶんヒメカタベ(微小な貝)だと思います。」(佐藤さん)
 

枯れる海藻

レッドデータブックは、来年3月の完成を目指す
 佐藤さんは、海の環境や生き物を見る「モニタリング」を通じて、“海のいま”を知ることの重要性を訴えています。

「絶滅危惧種って言われているような生き物たちが『鳥羽にはこんなにいるんだよ』って、まだ生きた姿で、こんなに見ることができるよって、紹介できるような本になったらいいなって思っています」(佐藤さん)

 レッドデータブックは、来年3月の完成を目指して、調査に参加した専門家らが執筆作業に取り組んでいます。

(9月30日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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