「ドン横キッズ」の現在 名古屋・栄にたむろする少年少女たちに聞いた 進む行政の居場所づくり

2022年8月16日 16:58
愛知県名古屋市の栄で、高層ビルの建設に伴い、少年少女が集まっていた広場・通称「ドン横」が6月に閉鎖されました。この夏休みに「ドン横キッズ」たちはどう過ごしているのか。そして、新たに始まった行政の対策を取材しました。

中区役所内に開設されたフリースペース「e-NE」(名古屋市)

 5日から名古屋の中区役所で開かれているのは「e-NE」と名づけられたフリースペース。ドリンクやお菓子も用意され、子どもたちが自由に過ごせるほか、警察官や大学生のボランティアたちに相談できるようになっています。

「これまでの少年への聞き取りから『自分の思いを聞いてくれる場所がない』『あるいは相談相手がいない』という思いが根強く持っていることが分かってきましたので、このような機会を通じて、ひとりでも多くの少年が足を運んでくれて、我々にわずかでも心を開いてくれれば、支援活動に繋がるのではないかと思っております」(愛知県警少年課 青山義弘課長)

 警察が特に危機感を募らせているのは、栄広場にたむろしている少年少女たち。広場が「ドン・キホーテ」の目の前にあることから「ドン横キッズ」と呼ばれています。

 集まること自体は何も問題ありませんが、犯罪に巻き込まれる恐れがあります。

 6月に「ドン横の王」を名乗る男が16歳の少女にみだらな行為をしたとして逮捕された事件をはじめ、7月にはホストクラブに似た「コンセプトカフェ」が摘発され、少女たちが多額のお金を支払っていた実態が明らかになりました。
 

親に虐待されていたと話す「ドン横キッズ」の少女

犯罪の温床でも「ドン横以外居場所ねぇしさ」
 様々な犯罪の温床となっているだけでなく、最近では市販薬の過剰摂取、いわゆる「オーバードーズ」も問題になっています。

「ゲームセンターの中でOD(オーバードーズ)しちゃってる子が入って、粗相を起こすことがあって出禁になりかけている。『一緒にやろうぜ』って誘われて『いいよ』って言ってODしました。ゲームに依存しちゃって親ともめて」(ドン横キッズ 19歳男性)

 昼夜を問わず、なぜ集まってくるのでしょうか。中学生の少女に聞くと。

Q.なんで「ドン横」に出入りするようになった?
「え…なんで?…ひまで。ネットで知り合った子に渡すものがあって。話すだけ」(ドン横キッズ 中学2年生の女子)
「1年前までだけど、虐待されていたから。学校に相談したら学校に児相の人が来て連れていかれたけど『親が反省している』『いい人そうだよ』って言われて、結局何も変わらないし」(中学2年生の女子)

 愛知県警が確認した「ドン横キッズ」とみられる別の少女のSNSには、周りの大人に対する不満が書き込まれていました。

「ドン横以外居場所ねぇしさ、家も学校も居心地悪いし、周りの大人も理解してくれない」「安心できる場所を大人が作ってくれよな。いじめは無視。お金もない。閉鎖的な学校空間。偏見の塊」(愛知県警が確認したドン横キッズ少女のツイッターより)
 

高層ビル建設に伴い閉鎖された「栄広場」

広場の閉鎖で「オアシス21」や「池田公園」が居場所に
 2022年6月、こうした少年少女に大きな変化がありました。超高層ビルの建設に伴い、ドン横の栄広場が閉鎖されたのです。

 あれから2カ月、夏休みに入って「ドン横キッズ」はどこへ行ってしまったのでしょうか。

「ゲームセンターとかオアシス21、池田公園とか、点々と集まっている」(ドン横キッズ 19歳男性)
「昼間はゲームセンターとか室内で集まれるところで、夕方から夜になるとオアシス21とか外で集まったりします」(ドン横キッズ 19歳男性)

 ドン横から歩いて3分ほどの場所にある「水の宇宙船」がシンボルの「オアシス21」や、周囲に風俗店などがある「池田公園」が、今のたまり場になっているといいます。

 居場所を求めて転々とする少年少女たち。警察は支援の難しさについてこう話します。

「声掛け活動で難しいのは、警察官として声をかけるんですけれども、声をかけただけでは心を開いてくれない。警察と聞いてシャットダウンする子もいるので、今後はいかに上手に声をかけていくのかが課題」(青山義弘課長)
 

毒を吐ける存在が必要と語るドン横キッズ(19歳 男性)

解決しなくても「毒吐きできる存在」は必要
 15日、中区役所に開かれたフリースペース「e-NE」には、中高生など15人が訪れて、友達や親について相談した子もいました。

「自分は先生とか親に相談できなくて結構苦しかったので、友達とか、解決にならなくてもいいから毒吐きできるような存在の人は必要だと思います」(ドン横キッズ 19歳男性)

 利用できるのは、午後2時から午後8時の間。17日まで開かれています。

「少年たちを食い物にするような犯罪が散発している状況もありますし、悩みを持った少年たちをほっておくわけにはいかない、なんとかしたいと。来てくれれば、同じ境遇の仲間にも会えるかもしれませんので、ぜひ来てもらえればと思っています」(青山義弘課長)

(8月16日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)
 

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